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今回のテーマ
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
今回は、よくいただくご相談の一つである「Webマーケティングの予算がなかなか取れない」というテーマについて、現場での経験を交えながらお話しします。
「どれくらいが適正予算なのか」「広告費はどのくらい回すべきか」といった質問も多いのですが、それ以前の段階として、そもそも社内でWebに使える予算を確保できないという悩みがとても多いと感じています。
この記事では、予算が確保しづらい理由を整理しつつ、「現実的にどう動けばいいのか」をできるだけ具体的にお伝えします。
まとめ
- 予算を無理やり取っても、続かなければ意味がない
- 「予算がない」は、本当に捻出できない場合と、Webに回す雰囲気がない場合の二つがある
- どちらの場合も、最初の目的は「社内にWebの価値を見せること」
- 最初は自分中心で動く覚悟を持ち、「見える結果」を意識して積み上げる
- 短期の劇的な成果より、半年〜1年かけて変化を積み重ねる方が現実的
- 最初から大きな予算を取りすぎると、期待値が上がり過ぎて一度の失敗で終わりやすい
- ミニマムスタートを支えてくれる「伴走型」のパートナーを選ぶと進めやすい
- 補助金は頼り切るものではなく、条件が合えば活用する「追加の助け」として考える
- 「お得情報」や営業電話には慎重に向き合い、自分から探して依頼する流れを基本にする
いま予算の確保が難しい状況にあっても、「すぐに大きなことをやらなければいけない」というわけではありません。むしろ、「どうやって社内の目をWebに向けていくか」「どうやって少しずつ続けやすくするか」という視点で考えた方が、結果として予算も取りやすくなります。
予算を無理に取れば良いわけではない
最初にお伝えしたいのは、「予算を無理に取ってくることが、いつも正解とは限らない」という点です。
Webの施策は、短期決戦ではなく、続けることに意味があります。途中で息切れして止まってしまうと、それまでの投資がほとんど生きませんし、社内の空気も「やっぱりWebは合わない」となりやすいです。
一度大きく失敗してしまうと、次のチャンスがほとんど回ってこない、というケースもよく見てきました。特に、今からWebに力を入れようとする会社は、どうしても「後発」になります。その会社がここまでWebを本格的にやってこなかったのには、必ず理由があります。
- Webに対してネガティブな印象が強かった
- そもそも新しい取り組みを好まない社風がある
- 理解できないものにはお金を出したくない雰囲気がある
こういった背景がある中で、勢いだけで大きな予算を取って大きく外してしまうと、「やっぱりやめよう」という結論になりやすく、二回目のチャンスがなかなか来ません。だからこそ、最初の一歩は慎重に踏み出した方が良いと考えています。
「まだそのタイミングではない」という判断も大事
少し別の例ですが、以前『日経トップリーダー』で読んだモスバーガーのフランチャイズの記事が印象的でした。家族で「フランチャイズをやりたい」と申し込みに来る方は多いそうですが、話を聞いてみると、実際には相当な忙しさになることや、家族との時間がほとんど取れない可能性など、現実的な条件を理解しきれていないことがあるそうです。
そうした場合には、「まだ今はそのタイミングではありません」とお伝えすることもあるという内容でした。これはWebにもかなり近いと感じています。
Webの本格的な取り組みは、単発のイベントではなく、生活が変わるくらいの「習慣」と「体制」の話になります。そこが整っていない状態で、いきなりアクセルだけ踏んでしまうと、後からの反動が大きくなります。
私自身もご相談を受ける中で、「今はまだタイミングではないと思います」とお伝えすることが少なくありません。耳に優しい話ではないかもしれませんが、長い目で見たときのリスクを考えると、そこはきちんとお伝えした方が良いと考えています。
「予算がない」は大きく二つのパターンがある
予算が取れないと言っても、その中身は大きく二つに分けられます。
1. 本当に予算を捻出するのが難しいケース
一つ目は、そもそもビジネス規模的に予算を付けるのが難しいケースです。創業間もない会社や個人事業のように、バランスシート自体が小さく、Webに年間で100〜120万円程度の予算を組むことすら厳しい、という状況です。
広告費にしても、ある程度まとめて予算をかけないと検証しづらい部分がありますが、その最低ラインすら現実的でない、ということもあります。この場合、「やるかやらないか」というより「そもそも資金的に無理がある」という意味での「予算がない」です。
2. 会社として予算はあるが、Webには回ってこないケース
もう一つは、会社全体としてはセールスやマーケティングに予算を回す余地があるものの、「Webに使う」ことに対して前向きではないケースです。
例えば、すでにフィールドセールスが強く、既存の紹介ルートや営業網で十分に売上を立てられている場合、「今さらWebにまとまったお金をかけなくてもいいのでは」と考えられがちです。
実際には、毎月の販促予備費として100万円、200万円を確保している会社でも、その中からWebに10万円を振り向けることには抵抗がある、という話をよく聞きます。「よく分からないもの」に使うのは気が進まない、という気持ちも理解できます。
この二つのケースは事情が違うように見えますが、最初にやるべきことは意外と共通しています。その共通部分を、ここから掘り下げていきます。
予算が少ないなら「自分中心でやる覚悟」が必要になる
結論から言うと、予算規模が小さい場合は、「自分中心でやるしかない」という前提に立った方が現実的です。多くの場合、Web担当者は専任ではなく、他の業務と兼務していますし、小規模な事業であれば経営者自身が担当になります。
私のところにご相談に来る方を見ていても、うまくWebを活用できている会社は、最初のスタート時点で「自分中心」で動いていたケースが非常に多いです。誰かに丸投げするのではなく、自分で手を動かして小さく始めているのです。
ただし、闇雲に自分で頑張れば良いという話ではありません。重要なのは、「寄り道せず、結果にたどり着くための動き方」を意識することです。
最初のゴールは「大きな成果」ではなく「見える結果」
ここで、最初に注意したいのが「第一目的の置き方」です。どうしても「すぐ売上を上げる」「コンバージョンを増やす」といった分かりやすい成果をゴールに置きたくなりますが、予算が少ない立ち上がりの段階で、そこだけを第一目的にしてしまうと、途中で止まってしまうリスクが高くなります。
特に、他の業務との兼務でWebを担当している場合、周りからこう見られがちです。
- 「忙しいのに、よく分からないWebの仕事までやらなくてはならないのか」
- 「目に見える変化がないなら、別の業務を優先してほしい」
そこで私がよくお伝えしているのは、「最初の目的は、とにかく見える結果を出すことに置きましょう」という考え方です。
ここでいう見える結果とは、例えば次のようなものです。
- 新しいホームページを立ち上げた
- 月にどれくらいの人がサイトに来てくれるようになったかを共有する
- 問い合わせが何件かでも発生したことを社内に伝える
- 狙っていたキーワードで検索順位が上がったことを分かりやすく示す
アクセス解析の画面を見せても伝わりにくい場合には、「ビフォー・アフター」を資料にまとめて見せるなど、プレゼンテーションのつもりで「成果の見える化」をすると良いです。
この段階での本当の目的は、「会社にWebの可能性に目を向けてもらうこと」です。担当者一人の力ではできることが限られているので、最初のゴールは「社内の空気を少し変えること」と考えた方が、長い目で見るとうまくいきやすくなります。
担当者に向いているのは「プレゼンができる人」
この意味では、最初のWeb担当者には「プレゼン力」「企画力」「周りを巻き込む力」がある人が向いています。デジタルスキルは、多少詳しければ十分で、後からいくらでも追いつけます。
それよりも、次のような要素の方が重要だと感じています。
- 社内での信頼が厚く、話を聞いてもらいやすい
- 新しいことを着実に続ける真面目さがある
- 人の役に立つことに喜びを感じられる
こういう人が担当になると、「まず社内の目をWebに向ける」「少しずつ協力者を増やしていく」という最初の山を越えやすくなります。
今は「すぐ成果を出す」のが昔よりも難しい
ここまで読むと、「とはいえ、何とかして早く成果を出したい」という気持ちもあると思います。ただ、今のWebの環境は、昔と比べて短期的な成果を出しづらくなっています。
2000年代の初期は、ホームページを作るだけで競合が少なく、反響が取りやすい時代でした。広告もまだノウハウが出揃っておらず、テレビで取り上げられそうな話題を先回りして広告を出す、といったシンプルな方法で成果が出ていたこともあります。
ところが今は、そういった「分かりやすい裏技」の多くがやり尽くされています。思いつきやすい施策には必ず先行者がいて、飛び道具のようなやり方はほとんど残っていません。
その結果、次のような変化が起きています。
- 成果報酬型で請け負ってくれる会社が減っている
- 専門会社であっても人材が足りず、案件を絞らざるを得ない
- 簡単なツールだけで何とかしようとすると、かえって逆効果になりやすい
例えば、問い合わせフォームへの一斉営業や、自動音声による電話営業に頼ると、一時的にアクションは増えても、信頼を損なったり、クレームが増えたりして、長い目で見てプラスにならないことが多いです。
そう考えると、「短期で劇的な成果」を求めるより、「限られたコストの中で、半年から1年かけて分かりやすい結果を積み重ねる」という考え方に切り替える方が、現実的でリスクも小さくなります。
1年後の姿から逆算して、小さく続ける
では、限られた予算で、何を指標にして進めていけばよいのでしょうか。ここでおすすめしたいのが、「1年後の理想の状態をまず描いてから逆算する」というやり方です。
たとえば、次のようなイメージです。
- 1年後、この会社はWebでどんな情報発信ができていると良いか
- その中で、自分はどんな役割を担えていると嬉しいか
- Web経由の問い合わせや売上は、どのくらいを目標にしたいか
- Webの施策に対して、社内はどんな反応をしてくれていると理想的か
このイメージが描けたら、「そのために最初の3か月で何をするか」「半年でどんな状態になっていたいか」と、手前のステップに分解していきます。
途中で状況が変わることもありますが、一度「1年後の姿」を言語化しておくと、日々の施策の優先順位が決めやすくなりますし、社内への説明もしやすくなります。
また、予算を使うときには、「投資対効果(ROI:Return On Investment)」の目線も必要になりますが、最初のうちは「分かりやすい変化を積み重ねること」に意味があります。人件費として自分の時間はかかっていますが、そこはあえて「見えないコスト」として、自分の学びと社内の変化を優先しても良いタイミングです。
「予算をあまり使えないから諦める」のはもったいない
ここまで読んで、「今の予算感ではとても本格的なことはできない」と感じるかもしれません。ただ、だからといって「何もやらない」という選択を取り続けると、状況はむしろ悪くなっていきます。
インターネットがこの先なくなるということは、ほぼ考えにくいです。また、どこかのタイミングで突然、「手元の資料を読み込むだけで、いきなり高性能なWebサイトが自動的に完成し、集客まで全て自動で回る」といった都合の良いテクノロジーが出てくるとも考えにくいです。
つまり、「いつか状況が変わるのを待っていれば何とかなる」というものではなく、「今やれていないなら、その前提のままで動き出すしかない」という話になります。
少ない予算の中でも、「まず社内の理解を得る」「少しずつ経験を積む」という地固めは十分にできますし、その積み重ねが後から大きく効いてきます。
「今は依頼すべきタイミングではない」という場合もある
ここで、私自身のサービスの話も少ししておきます。
正直なところ、「予算はこれしかないが、時間もないので全部お任せしたい」というご相談には、「今はタイミングではないかもしれません」とお返事することが多いです。
私のところでは、ミニマムなコンサルティングでも月5万円ほど、標準的なプランでは月12〜13万円ほどからという料金になっています。これは、他の会社と比べると控えめな方だと思いますが、それでも「丸投げで何とかしてほしい」という期待に応えられる金額ではありません。
というのも、たとえ「質問は無制限です」というプランだったとしても、最終的に手を動かすのは皆さん自身です。そもそも何を質問したらよいかが分からない状態だと、「毎月のコストだけがかかっていく」という感覚になりがちです。
一方で、「予算が取りやすくなるような結果を一緒に作っていきましょう」という形で、二人三脚で進めていくのはとてもやりやすいです。実際にそうした関係で長くお付き合いしているお客さまも多く、その方が結果としても良い形になりやすいと感じています。
予算はあるが、Webに回してもらえない場合の考え方
次に、「会社としては予算があるが、Webには回ってこない」というケースについてです。この場合の大きな壁は、「費用対効果がイメージしづらい」という点にあります。
特に、自然検索を中心とした集客や、コンテンツを育てていくタイプの施策は、半年後や1年後の売上を厳密に予測するのが難しい分野です。数字のシミュレーションを出すことはできますが、現実には上振れも下振れも起こります。
そのため、「この投資で必ずこの売上が出ます」といった約束はしにくく、「やれるところまでやってみる」という姿勢が求められます。
大きな予算を最初から取りに行くリスク
ここで注意したいのが、「プレゼン力のある人ほど、大きな予算を取りに行ってしまいがち」という点です。例えば、月100万円の予算を取ってスタートできれば、できることの幅が広がるのは事実です。
しかし、その一方で、次のようなリスクも大きくなります。
- 会社側の期待値が非常に高くなる
- 社内の協力が十分に得られず、計画どおりに進まない
- 1年後に想定の半分しか実行できず、「期待外れ」と評価される
例えば、年間で1,000万円以上の投資をして、1年後に「ホームページは作ったが、案件は思ったほど増えなかった」という結果になってしまうと、多くの場合それで終わりになります。次の年に同じ規模の予算が付くことは、ほとんどありません。
その意味で、最初は「ほどほどの費用感」で始める方が安全です。例えば、月10万〜20万円程度から始めて、「1年目はこのくらい問い合わせが増えたら良い」という、現実的なラインを社内で共有しておく。そこから、成果と手応えを見ながら、徐々に予算を増やしていく方が、持続性のあるやり方です。
期待値をコントロールしながら進める
ここでキーになるのが、「期待値のコントロール」です。最初から大きな成果を約束してしまうと、その約束に縛られて動きづらくなりますし、少しでも届かなかったときのダメージが大きくなります。
逆に、「最初の1年でここまでできたら十分」というラインを現実的に設定しておけば、多少のブレは許容されますし、改善の余地も残せます。
もし、社内の文化的に「大きなことを言って通す」というやり方が許されないのであれば、先ほどの「予算が本当に少ないケース」と同じように、まずは見える結果を積み上げていく流れで考えた方が良いです。
ミニマムスタートを支えてくれるパートナー選び
ここまで、「自分中心で小さく始める」「期待値をコントロールする」という話をしてきましたが、それを支えてくれるパートナー選びも重要です。
分かりやすい分け方をすると、「パッシブなパートナー」と「アクティブなパートナー」があります。
パッシブなパートナーだけだと、ミニマムスタートは難しい
典型的なのは、「ホームページ制作だけを提供している会社」です。もちろん、そうした会社が悪いわけではありませんが、サービスの性質として、次のような特徴があります。
- こちらから依頼したことはきちんと納品してくれる
- ただし、こちらから動かないと提案やフォローはほとんどない
ミニマムスタートでWebを育てていく場合、「どう頼めばいいか分からない」状態から始まることが多いので、「こちらから全部指示を出さないと動いてくれない」タイプのパートナーだと、なかなか前に進みません。
「伴走してくれる」パートナーを選ぶ
一方で、次のようなスタイルのパートナーは、ミニマムスタートと相性が良いと感じています。
- 定期的に「最近どうですか」と連絡をくれる
- こちらからの相談に対して「ではこういう選択肢があります」と整理してくれる
- 予算感を伝えると、その中で現実的な打ち手を一緒に考えてくれる
- 「とりあえずやってみましょうか」と、小さな実験を一緒に回してくれる
いわゆる「伴走支援」に近いイメージです。友達のように気軽に、とは言いませんが、「ちょっと相談してみよう」と思ったときに声をかけやすい相手です。
こうした人材は、今の市場では非常に少ないです。大企業であれば社内に育成することもできますが、多くの場合は外部のサービスをうまく使った方が現実的だと思います。私自身も、人材を増やすというより、「どうやったらこのスタイルで多くの方に関われるか」を長く試行錯誤してきました。
Webまわりのコストがじわじわ上がっている現実
ここからは、少し「逆風」の話になります。Webの制作や運用にかかるコストは、ここ数年でじわじわと上がり続けています。その主な理由は、とても単純で「人件費」が上がっているからです。
制作会社であれ、広告代理店であれ、ツール販売会社を除けば、見積もりの中身の大部分は人件費で決まります。最低賃金の上昇や採用コストの増加の影響もあり、どの会社も人にかかるコストが高くなっています。
当然、外部パートナーに発注する単価も上がります。私自身も、外注の方にお願いする費用は、時代に合わせて引き上げざるを得ません。そのため、5年前や10年前と同じ内容を今発注しようとすると、どうしても単価は高くなります。
逆に、「昔と同じ価格でやってほしい」となると、品質の差が大きくなりやすい、という現実もあります。
さらに、プレイヤーの数も増えています。ホームページを持っている会社が当たり前になり、広告の出稿も増えています。広告費はオークションで決まりますから、参入する会社が増えれば増えるほど、クリック単価などの費用は上がっていきます。
こうした状況を踏まえると、「何もせずに時間だけが過ぎていく」というのは、感覚的には「一回休み」を何度も繰り返しているようなものです。経験やノウハウの蓄積という面でも、少しずつ差が開いていきます。
補助金には「できること」と「できないこと」がある
ここで、「補助金を使えば解決できるのでは」という考えが浮かぶかもしれません。確かに、以前はホームページ制作に使いやすい補助金がありましたが、最近は条件が厳しくなっているものが多いです。
例えば、小規模事業者向けの補助金では、ホームページなどのウェブサイト関連費が補助対象に含まれているものの、「補助金全体のうち、どこまでWebに使えるか」という上限が決められているケースが多いです。公募回によって細かな条件が変わるため、「リニューアル費用の大部分を補助金で賄えるかどうか」は、必ず最新の公募要領を確認してから判断した方が安全です。
また、ITツールの導入を支援する補助金もありますが、原則として「事務局に登録されたITツール」を導入するための制度なので、「ホームページ制作だけの費用」は対象にならない枠が多いです。ホームページに関連する機能がツールの一部として含まれている場合など、条件次第で使える場面もありますが、制度の概要とツールの要件を事前に確認しておく必要があります。
もちろん、事業再構築や設備投資といった、より大きな取り組み向けの補助金もあります。ただ、その分申請や計画づくりの手間も大きく、採択された場合でも自己負担分はそれなりの額になります。
補助金を全く使うな、という話ではありません。うまく条件が合えば、非常に心強い制度です。ただ、「補助金があるから安心」と考えてしまうと、かえって動き出すタイミングが遅れてしまうこともあります。あくまで「使えたらありがたいもの」として考えておくのが、現実的ではないかと思います。
「お得情報」や営業電話には慎重に向き合う
Webの世界では、「ここだけの最新ノウハウ」「今だけの特別な集客方法」といった表現がよく使われます。ただ、あらゆる会社が日々研究し、情報がすぐに共有される今の環境では、「誰でも短期間で大きな成果が出る特別な裏技」だけに頼るのは、あまり現実的とは言えません。
もし本当にそうした方法があれば、すぐに商品化され、多くの会社が使うことで競争が起き、短期間で一般的なものになっていきます。フリーマーケットでも、今はオンラインで相場がすぐに分かるので、昔のような「極端に安い掘り出し物」が出にくくなっているのと少し似た状況です。
一方で、自社の状況に合わせて、基本的な施策を地道に改善し続けることで、十分に大きな差を生むことは可能です。目立つ「裏技探し」よりも、「自社にとっての基本を丁寧に積み重ねること」に時間を使った方が、結果として意味のある「お得」になりやすいと感じています。
また、営業の手段として、電話やメールでの売り込みも依然として多いです。以前は、「電話営業をする会社が全て良くない」とは言い切れないと考えていました。きちんとした会社が、マーケティングの判断として電話を使う場合もあったからです。
しかし、ここ数年、自社やお客さまのところにかかってくる電話やメールを見る限り、内容があまりに雑なものや、詐欺に近いものが増えていると感じています。中には、自動音声による一斉発信で、「興味があればボタンを押してください」といった電話まであります。
こうした状況を踏まえると、今は「営業電話や一方的なメールからの提案」は、原則として慎重に扱った方が良いと考えています。候補として検討する場合でも、社名や実績、契約条件などを自分で確認したうえで判断することをおすすめします。そのうえで、「自分で情報を集めて、納得した上で問い合わせる」流れを基本にしておくと、後々のトラブルはかなり減らせます。
私自身がコストを下げる工夫を続けてきた理由
最後に、少し自分の話になりますが、私はもともと「どうやったらWeb活用のコストを抑えながら、無駄なく結果に近づけるか」というテーマをずっと考えてきました。
その一環として、かなり早い時期から「遠隔でのコンサルティング」を取り入れてきました。今では当たり前になったオンライン会議やチャットでの相談も、10年以上前からいろいろなツールを試しながら続けてきました。
当時はZoomもなく、Skypeや、チャットツールに付いていたビデオ通話機能などを組み合わせながら試行錯誤していました。ツールは時代とともに変わりましたが、「移動のコストを減らして、その分中身に時間を使う」という考え方は一貫して変わっていません。
それは、「できるだけ多くの方に、現実的な費用感で長く関わりたい」という気持ちが背景にあります。この記事も、その一つの形です。
まとめ:予算の壁は、「見せ方」と「始め方」で越えやすくなる
ここまで、かなり長くお話ししてきました。最後に、大事なポイントを整理します。
- 予算を無理やり取っても、続かなければ意味がない
- 「予算がない」は、本当に捻出できない場合と、Webに回す雰囲気がない場合の二つがある
- どちらの場合も、最初の目的は「社内にWebの価値を見せること」
- 最初は自分中心で動く覚悟を持ち、「見える結果」を意識して積み上げる
- 短期の劇的な成果より、半年〜1年かけて変化を積み重ねる方が現実的
- 最初から大きな予算を取りすぎると、期待値が上がり過ぎて一度の失敗で終わりやすい
- ミニマムスタートを支えてくれる「伴走型」のパートナーを選ぶと進めやすい
- 補助金は頼り切るものではなく、条件が合えば活用する「追加の助け」として考える
- 「お得情報」や営業電話には慎重に向き合い、自分から探して依頼する流れを基本にする
いま予算の確保が難しい状況にあっても、「すぐに大きなことをやらなければいけない」というわけではありません。むしろ、「どうやって社内の目をWebに向けていくか」「どうやって少しずつ続けやすくするか」という視点で考えた方が、結果として予算も取りやすくなります。
この記事が、自社の状況を整理するきっかけになれば嬉しく思います。そして、もっと詳しい話を知りたい場合は、他のコンテンツやPodcastも、必要なときにゆっくりと触れてもらえれば十分です。
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よくある質問
- Webマーケティングに回せるお金がほとんどありません。何から始めれば良いでしょうか。
-
予算が少ない場合は、まず「自分中心で小さく始める」意識を持つことが重要です。いきなり売上を大きく伸ばすことを狙うのではなく、ホームページを立ち上げる、アクセスや問い合わせ数の変化を見える形で社内に共有するなど、「分かりやすい結果」を出すことから始めてください。それが、次の予算につながる一歩になります。
- 社内にWebに否定的な雰囲気があり、予算の話を出しづらいです。どう変えていけば良いですか。
-
最初から予算の話をするのではなく、「小さな成果を見せる」ことから始めるのがおすすめです。たとえば、既存の情報を整理して分かりやすいページを作る、ニュースやブログを数本公開して反応を共有するなど、少額またはほぼゼロコストでできることでも構いません。「少し手をかけると、これだけ変わる」という事例を積み上げることで、徐々に社内の雰囲気が変わりやすくなります。
- 最初から大きな予算をまとめて取った方が効率が良い気もします。少額から始める方が良いのでしょうか。
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大きな予算を取ればできることは増えますが、その分、会社側の期待値も大きくなります。体制が整う前に大きな予算だけを動かすと、計画どおりに進まず、1年後に「期待したほど成果が出なかった」という評価になりやすく、その後の予算が止まることも多いです。最初は、社内で現実的に受け止められる金額から始めて、成果と手応えを見ながら少しずつ増やしていく方が、続けやすいと考えています。
- Webのパートナー会社を選ぶとき、どこを見れば良いですか。
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制作物のクオリティだけでなく、「どれくらい伴走してくれるか」を重視すると良いです。こちらから依頼したことだけを淡々とこなすパッシブな会社より、「最近の状況はどうですか」「この予算ならこういう選択肢があります」といった形で、定期的にコミュニケーションを取りながら進めてくれる会社の方が、ミニマムスタートとは相性が良いです。気軽に相談できるかどうかも、重要な判断材料になります。
- 補助金や「ここだけのお得情報」に頼ってWeb施策を進めても大丈夫でしょうか。
-
補助金は条件が合えばとても助かる制度ですが、「補助金があるから動き出す」という考え方だけに頼ると、タイミングを逃しやすくなります。また、Webの世界には「今だけの特別なノウハウ」といった情報も多いですが、長く安定した成果を出している会社ほど、こうしたものに依存していません。あくまで、地道な改善と長期的な視点をベースにしつつ、補助金やツールは「使えればありがたいプラス要素」として捉えるのが現実的です。
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