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今回の内容について
今回は需要が多いかつ、興味関心が高いコンテンツである「成功事例」の読み方についてです。
成功事例は強力なマグネットコンテンツであるため、読み方については注意が必要です。
そうしないと、本当に必要な情報や気づきが手に入らないかもしれません。
ではどういったことに気をつけなくてはならないのでしょうか。
詳しくはPodcastをお聞き下さい。
書き下ろし・ShowNote
目次
概要
今回のテーマは、成功事例の読み方です。
成功事例あるいは普通の事例にしても、皆さん、気になるものだと思いますし、参考になる情報が載っているものでもあります。
であるがゆえに、これに関しては、特に「自分のビジネスにそれを応用する」という観点で読む場合には気をつけなければならない部分があります。
今回は、特に中小企業の方々の観点から、どういうところに気をつけて、何を考えながら、どのように成功事例を読んでいけばいいのかについてお伝えします。
記事のタイトルに囚われすぎないで読む
まず第一に、成功事例を読む場合、記事のタイトル部分に結果が入ってしまっていることが多いです。結果の部分をフックにしてその内容を読ませようっていうのが、記事の意図としてありますので、それは仕方ないんですけどね。
だいたい、タイトルの部分に「こういうふうに成功しました」とか、「何パーセントアップしました」とか「こういうことをしたことによって、こうなりました」みたいなのが載っています。
タイトルを見ないというのは無理なんで仕方ないんですけれども、一旦それを見た後に、あんまりそれを気にせず、可能な限り忘れてみましょう。
その前提で、どういうふうに読んでもらいたいかっていうと、「いきなりばーっと、何も考えずに読む」というのを、まずやめたほうがいいです。
そうではなくて、1行目を読むときに、まず頭の中を真っ白にして、この企業さんの中にいる気持ちになってみるんですね。
つまり自分がこの場面「あるいは歴史というものに、リアルタイムで立ち会っていたらどう思うかな、どういう判断をするかな、何が気になるかな、どういうところが問題になりそうかな、と考えてみる。
そういうことを考えながら、ゆっくりと読み進めていくことをお勧めします。
急いでストーリーを追うと結果だけが頭に残ってしまう
大概の成功事例は、ストーリー仕立てになっていて、時系列順でまとまっています。
こういう問題や課題があって、それに対してこういうことを行って、最初はうまくいかないけど、こういうことを行った結果、こういう現象が起きて、それがこういう風になって最終的にこういう結果を呼び起こしたよと。
いわゆる課題を発見して、それに対して施策を立案して、実行して、そして結果を見るという PDCA的な流れになっているわけですね。
それを早く結論が知りたい、何が起こったのか知りたいと、物語として読んでいるケースも多いと思いますから、そうすると最後までばーっと読んでしまう。そして、「やっぱりうまくいくんだな」とか、「こういう手法とかなら上手くいくんだな」と。
例えば分かりやすいところでいえば、「SNSを使ってこういうことをしたらうまくいくんだなぁ」とか、そういうざっくりとした捉え方をしてしまうケースが多いです。
普通に読んだらそうなってしまうと思いますし、まあそういう意図がある記事も少なくないです。
ただ大事なのは、どちらかというと、やはりプロセスのところなんですね。
なぜそれが大事かというと、そもそもそれが自分たちにとって実行可能なものなのかとか、記事になっているからすらすらと進んでいるけれども、途中でかなり難しい経営判断やリスクあることをやりながら、必死でやってきたものなんじゃないか、そういうことをちゃんと知っておかないと、成功事例を正しく自分たちのこれからにつなげていくことができないからです。
ざーっと読んでいると、だいたい自分のにとって気持ちいいところばっかり、頭の中に残っちゃうんですね。
それはうまくいくとか、やっぱり自分が気になっていたこの手法は効果があるんだとか、そういうところばっかり残ってしまう。
一方、じっくり読んでいくと、自分にとってあまり知りたくないこと、やっぱりこういうことって大変なんだなとか、こういう大前提が必要なんだなとか、そういうところが見えてきます。
その企業の関係者の気持ちや立場を追体験しながら読む
さらに言えば、それをただゆっくり読んでいくわけではなくて、自分がその場にいてその担当者あるいはチームメートだったらどうするだろうか、経営者だったらどうするだろうか、と考えながら読んでいくのがおすすめです。
参考:カルピスが危機を乗り越えたことについての記事
例えば今日読んでいて一つ面白かったのが、ITメディアビジネスさんのカルピスについての記事ですね。カルピスが最初はうまくいっていたんですけれども途中で2回ぐらい危機があって、それに関してどう乗り越えたのかという記事がありました。
非常に面白いので是非見てみてください。ITメディアビジネスオンラインの『低迷していたカルピスが右肩上がりの再成長を遂げた理由』という記事ですね。
カルピスが最初はうまくいっていたけれど途中で2回ほどあった危機をどのように乗り越えていたのか、という内容です。
元々カルピスは水で割って飲むものでした。
対して、自販機等の普及によって外で気軽に飲むというシチュエーションが広がってきて、水で割って飲むカルピスは家で飲まなくてはいけないので、じわじわと売上が落ちていきました。それにどう対処したかという内容は、ぜひ記事でご覧ください。
二つ目の危機は、全体としてなかなか売上が上がらなくなってきて、そもそもなぜ売れないのかというアンケートを採ってみると驚きの結果が返ってきました。それに対してどう切り抜けたか、という内容です。ユーザーにカルピスはどのようなものかを聞いてみると、「甘くて白い飲み物だ」という回答になりショックを受け、それに対してどうしていったかが書かれています。今のカルピスの売り方も含めて読むと面白いです。
これをざっと読んでいくと、「こういう点に気をつけてこういう押し出し方をすればうまくいくんだな」で終わってしまうような内容です。
自分が経営者や営業部長のつもりになって読んでいく
しかし頭からゆっくりと、自分が経営者や営業部長のつもりになって読んでいくと、相当胃が痛くなると思います。
最初にカルピスがバンと売れて、そこから自動販売機が普及してきて、社会全体の飲み物に対する潮流が変わっていく中で、どうやら自社の製品はその潮流に乗っていけないという時にどうするかと考えます。その先どうなるかを知らない前提でブレインストーミングをしてみると、様々な選択肢が浮かびます。
例えば家で割って飲むことで団らんが生まれるという心理的な部分をブランディングしていくという考えもあります。実際にその場にいたら相当いろいろなことを考えるでしょう。今の自分の状況で、会社全体で話し合って結論が出るのかどうか。
例えば
- 自社が同じような自体になった時にアイデアが浮かぶのか
- そもそもその潮流に気づくことができるのか、今そういうアンテナを張れているのか
- 自社の製品を買ってくれるお客様の中で何か判断基準は変わっているか
- 違うものが代替品としてニーズを捉えているのではないか
- それらに対して今まで気にしたことがあるか
- 経営者だけではなく全従業員がそういう意識を持って仕事に取り組んでいるか
です。
これらを考えると、うーんとなってしまうケースがあるでしょう。成功事例を読む際には、それらに気づくことが大事なことだと思います。ぜひそういう意味を持ってゆっくりと読んでいただきたいです。
カルピスの2回目の危機で、「ただ甘くて薄いものだ」と言われた時に、自分たちならどうするかを考えましょう。
皆さんのお店はなぜお客様に来てもらえているかを聞いた時に、「近いし威勢が良いから」と言われたとして、これからそれだけで生きていけるのだろうかと考えます。
自社の立場に置き換えて考えてみる
カルピスのように新たな一手が打てるのか、そもそもそういうことを考えたことがあるか、こういうことについて成功事例を読みながら考えていただきたいです。成功事例を読んでこういうことをすればよかったんだ、うちもマネしていこうと思った時にも、まずそもそも自社でできるのかと考えてみます。
こういう人材、時間的余裕、情報共有タイムを用意しておかないとすぐにできるものではないなとか、こういう外部パートナーや普段からの付き合いをしておかないと、こういう時に正しい方向へかじを切れないということもまた見えてきます。
もう一つの大事なポイントは、そもそもこれは今の自社で実行可能なのかということも、そういう読み方をすると見えてくるということです。実行可能なのかをきちんと判断しないまま同じことをまねしようとすると、だいたい中途半端であまり意味が無いということになります。
外見的なツールや箱物を作ることだけに目を配っていると…
これの代表的な例はHPです。HPを作ればうまくいくらしいからうちも作ってみました、しかし全然反響がありませんということになります。ものの本質を捉えないまま外見的なツールや箱物を作ることだけに目を配っているせいです。
実際はHPを作る時にも、様々な情報を入れる仕組み、お客様の声を取る仕組み、運用中にも定期的にフィードバックを入れる仕組みがきちんとある前提で動かしていかないと回らなかったりします。
そこを飛ばしてHPを作れば売上が上がるという記事やセミナーにだまされて作ってしまうと、意味がなくて放置してしまうということになりかねません。そしてその放置されたHPを見た人は、「このお店はもうつぶれているのでは」「やる気がないのでは」というマイナスの印象を持たせてしまうことすらあります。
今できないことを諦めない「いつまでにできるようになる」と考える
現状できないと分かった時に、二つの方向性があります。一つは、そもそもこれは自分たちの身の丈に合っていない、あるいは将来的にやるべきことではないからこの事例は忘れるという選択肢もあります。世の中情報にあふれています。自分たちに合う情報は、探せばちゃんとあります。目の前の情報だけに縛られる必要はありません。
もう一つは、それをできるようになりたいのであれば、いつまでにできるようになるのかを考えることです。1年後なのか2年後なのかは、皆さんの計画次第です。あまりストレッチ目標を作ってもなかなかうまくいきませんし、かといってだらだらとやっていても進みません。
程よい目標を作って、それまでにこれをできるような要素を準備しておき、そしてその時になったら実行すると考えます。どちらかです。事例を自分事として追体験しながら読むことで、そんなことも初めて見えてきます。成功事例は大抵何らかの意図を持って発表されています。そうでもないと、わざわざ成功要因やうまくいったことを外に公開するメリットなんてないからです。
ブランディングのためかもしれないし、それを手伝った会社の営業のためかもしれないし、また別の要因があるかもしれません。個人ブログだと世の中のためになるからということで発表することもあるかとは思います。
成功事例の読み方まとめ
まずはゴールだけを気にして、自分にとって都合の良い情報だけをブラウジングするのはやめましょう。なぜなら都合の良い情報しか入ってこないので、何の振り返りも考えも引き起こさないからです。
それに加えて、そこにあたかも自分がいるかのように追体験したり考えたりしながら事例を読むことで、自社に今足りないものや、そもそも参考にできる情報なのかということが見えてきます。他人のストーリーを追体験するのです。
ぜひそういう題材として捉えて読んでいただければと思います。この読み方に慣れると、気づいたら自社にとって有益な情報がパッと分かるようになって、要らない情報をすぐに排除できるようになるので効率も上がるようになります。