第487回:Webマーケティングで重要な「マキシマイザーとサティスファイサー」思考とは?

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今日は、Webマーケティングで見落としやすい「選び方」の癖を、マキシマイザーとサティスファイサーという言葉で整理します。

このPodcast/書き起こしで得られること(要点)

選択肢が増えた今、買い手は「全部比べる」よりも「これなら十分」と判断して前へ進みます。その前提に合わせて、サイトの見せ方をどう整えるかが今回の話です。

  • 買い手がサティスファイサーになりやすい理由と、選ぶことが負荷になりやすい背景
  • 売り手が「相手は徹底比較するはず」と思い込みやすい場面と、そのズレ
  • トップページや入口になるページで、最初に置くべきメッセージの決め方

マキシマイザーとサティスファイサーは「選び方」の分類

少し前に行ったセミナーで触れたのが、バリー・シュワルツ氏の書籍『なぜ選ぶたびに後悔するのか――「選択の自由」の落とし穴』で紹介された考え方です(参照:なぜ選ぶたびに後悔するのか : オプション過剰時代の賢い選択術 – 版元ドットコム)。

マーケティングの本というより、選択肢が多い時代にどう生きるか、という心理学の文脈で語られています。

マキシマイザーは、比較できるものは徹底的に比較して、その中から「最も良いもの」を見つけようとします。たとえばショッピングセンターに行ったら、関係する売り場を一通り回ってから決める、という選び方です。

一方のサティスファイサーは、自分の中に「ここを満たしていればOK」という合格ラインを持ち、そこに達したら前へ進みます。完璧を探し続けるのではなく、納得できる範囲で決める人、と捉えると分かりやすいです。

ちなみにセミナー後に調べたら、この本が新品では手に入りにくい状態になっていて、紹介してしまったのに申し訳ない気持ちが残りました。私も以前は持っていたのですが、打ち合わせで来社されたお客さんに差し上げた記憶があり、読み返す前に手放してしまったのが悔しいところです。

Kindleでの復活を、今でも強く期待しています。ランダムハウスジャパンさん、もし届くならぜひ……という気持ちです。

セミナーでは、Googleが提示している「バタフライ・サーキット」という情報探索の整理とも絡めて話しました(参照:バタフライ・サーキットとは。バタフライ・サーキットと 8 つの動機 – Think with Google)。ここではその部分は深掘りせず、選択肢が増えすぎたときに人の判断がどう変わるかに絞ります。

比較できる時代は、マキシマイザーが力を発揮できた

インターネットの情報が今ほど多くなかった頃は、比較できる対象が限られていました。何かを選ぶときに、せいぜい数社、せいぜい数サイトを見比べるくらいで、比較の全体像がつかめたんですね。

だからこそ、表を作って「自分にとって最良はこれだ」と決めるような、マキシマイザー的な選び方が現実的にできました。そこから比較サイトが生まれ、やがてランキング型のコンテンツやアフィリエイトの領域に広がっていった、という流れも自然だったと思います。

いまは「全部比べる」が難しい。だから買い手はサティスファイサーになる

ところが今の時代、これを同じようにやろうとすると、ほぼ不可能に近いと感じます。リアルの世界でもショッピングセンターは巨大になりましたし、「もしかしたらメルカリにあるかもしれない」「ヤフオクにあるかもしれない」「近所の誰かが持っているかもしれない」と考え始めたら、選択肢は際限なく広がります。

この状況でマキシマイザーのまま走ろうとすると、時間がいくらあっても足りません。だから買い手は自然とサティスファイサーになりますし、私自身も買う側になると、結局はそうやって決めています。

スマートフォンは「比較」をさらに難しくする

パソコンなら、タブを左右に並べて見比べたり、別画面でメモを取りながら検討することもできます。けれどスマートフォンだと、タブを切り替えた途端に再読み込みが走って先頭に戻ってしまったりして、比較そのものが面倒になりがちです。

そうなると、頭の中の短期記憶(ワーキングメモリ)だけで比べることになります。つまり、ひとつのサイトが「相手の頭に残せる情報」はさらに小さくなり、買い手の負荷は上がります。

売る側になると、相手をマキシマイザーとして想像してしまう

面白いのはここからで、買う側の自分はサティスファイサーなのに、売ろうとした瞬間に「相手はマキシマイザーである」と想定してしまうことがよく起きます。

サイトに強みや違いを書くとき、いろんな競合を調べて、「ここはこう書いている、あっちはこう書いている。なら、うちはこう書けば選ばれるはずだ」と組み立てた経験がある方も多いと思います。

ただ、立場を買い手に戻してみると、全部は見ていないはずです。私も正直、全部検討していたらそれ自体がストレスになってしまうので、価格帯に応じて「検討に使う時間」を自分の中で決めて、その範囲で収めるようにしています。

悩むこと自体を娯楽として楽しむなら話は別ですが、何かを得るために決めるなら、延々と迷い続けるのは生産的ではありません。だからこそ、売る側も「相手はサティスファイサーだ」と置いて考えたほうが、サイトの作り方が変わります。

選ぶこと自体がストレスになる

以前、店頭に並べるジャムの種類が多い場合と少ない場合で、結果が変わったという実験の話を紹介したことがあります。直感では「選択肢が多いほうが売れそう」と思いがちですが、そうならないケースがある、という示唆が大きいんですね

(参照:When choice is demotivating: can one desire too much of a good thing? – PubMed)。

選ぶという行為は、一見すると楽しいのですが、本気でやろうとすると負荷がかかります。選択肢が多すぎると途中で疲れてしまい、購買プロセスから離脱することも起きます。

私のブログにも、この話をベースに「陳列するジャムは6コがいい?24コがいい?」という記事を置いています。かなり前に書いたものですが、今も通用する感覚があるので、もしよければ見てみてください

(参照:陳列するジャムは6コがいい?24コがいい?買い手の心理を押さえてコンバージョン率を改善するには)。

コンテンツ制作で、私が押さえておきたいこと

ここまでの話を、サイト制作やコンテンツ制作にそのまま持ち込みます。大切なのは「相手は時間も体力も無限ではない」という前提を、最初から置くことです。

  • 「端から端まで読まれる」前提を外す
    作る側は、どこに何が書いてあるかを知っています。だから「興味がある人は、このページも見てくれるはずだ」と期待しがちですが、現実はそうはなりません。見てよく分からなかったら問い合わせてくれる人もいますし、面倒になって離れてしまう人もいます。
  • 最初の一言で、頭に残す
    理想は、キャッチコピーをひとつ見せた瞬間に「ああ、なるほど」と理解されて、記憶に残ることです。細かな説明は後から読めるとしても、入口の段階では「ここはどういう価値を出すのか」が一瞬で伝わるかどうかで、次の行動が変わります。
  • 「いま市場で比べられている論点」を見抜く
    どの市場もある程度は飽和しています。その中で、買い手は全部を比較するのではなく、「ここが違う」と感じる部分だけを見にいきます。時間が経てば論点も変わるので、以前は通用した言葉が通用しなくなることもありますが、その変化に気づけること自体が、積み上がる資産(強みの土台)になります。

買い手は、最小限の労力で、できるだけ良い選択をしたいと思っています。だからこそ、トップページや入口になるページで何を打ち出すか、どこに情報を集約するかが、以前にも増して大事になっています。

自分が買う側になったとき、どこで「もうこれでいい」と決めているか。その感覚を一度丁寧に掘り起こしてから、サイトの構成やキャッチコピーを見直してみると、無理なく改善の方向が見えてきます。

関連リンク

よくある質問

マキシマイザーとサティスファイサーの違いは何ですか?
マキシマイザーは、比較できるものを徹底的に比較して「最も良いもの」を取りにいきます。サティスファイサーは「合格ラインに達したらOK」と判断して、前へ進みます。
いまの買い手は、なぜサティスファイサーになりやすいのですか?
選択肢が増えすぎて、全部を比較する時間と負荷が大きくなったからです。比較を続けるほどストレスも増えるので、どこかで納得して決めるほうが前に進めます。
売り手がやってしまいがちな思い込みは何ですか?
お客さんが競合も含めて全部を見比べ、自社サイトも端から端まで読んでくれるはずだ、と想定してしまうことです。買い手の自分に戻ると、そこまで見ていないケースが多いはずです。
トップページや入口のページで、まず何を伝えるべきですか?
細部より先に「ここは何者で、何が違うのか」が一言で分かるメッセージを置くことです。最初の引きが弱いと、比較する以前に離れてしまいます。
キャッチコピーや訴求は、ずっと同じで大丈夫ですか?
市場が成熟すると、買い手が見比べる論点が変わります。どこが比較対象になっているかを観察し、必要なら言葉や見せ方を更新したほうが自然です。

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