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ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、11月22日配信のメルマガで触れた「今の時代の売買関係における新たな情報格差」という話のうち、特になぜWebサイトがここまでビジネスに欠かせない存在になったのかを、情報の非対称性(売り手と買い手の情報格差)という観点で掘り下げます。全部を語ると長いセミナーになってしまうので、要点に絞って整理していきます。
このPodcast/書き起こしで得られること(要点)
結論から言うと、Webサイトが「必須」になった大きな理由は、かつて当たり前にあった情報の非対称性を、良くも悪くも壊してしまったからです。売り手だけが情報を握る時代から、買い手が自分で比較検討できる時代へ移ったことで、売り方・選ばれ方が根本から変わりました。
そのうえで本文では、次の3点を持ち帰れるようにまとめます。
- 昔の商売で「情報格差」が強かったとき、何が起きていたのか
- Webサイトの普及が、その格差をどう変えたのか
- 情報が出そろった今、別の形で生まれている「第二の情報格差」と向き合う視点
情報の非対称性とは何か
情報の非対称性というのは、とてもシンプルに言えば「売り手と買い手が持っている情報がまったく同じではない」という状態です。一般には、売り手のほうが商品・サービスの実態や業界の事情をよく知っていて、買い手は十分に情報を持てず、売り手の説明に依存しやすくなります。
この状態は、取引が売り手有利に傾きやすいので、基本的には望ましいものではありません。ときどき、情報格差を利用して売ろうという話を見かけますが、そういう発想は、長い目で見れば信頼を崩しやすいものです。ここでは「なぜWebサイトが必要になったのか」を理解するために、まず当時の状況を振り返ります。
昔は「調べる」こと自体が難しかった
いまはWebサイトがあるのが当たり前なので、昔の空気感が想像しにくいかもしれません。ただ、少し前までは、買い手が情報を集める手段が限られていました。テレビや雑誌などの媒体はあっても、欲しい情報が自分の都合で手に入るわけではありませんし、企業向けの取引(BtoB)の話になると、なおさらです。
買い手は、売り手が言う「良い点」を検証したくても、裏を取る方法が乏しい。資料を見たければ問い合わせる必要があり、パンフレットもその会社に接点を持たないと手に入らない。そういう状況だと、「話だけでも聞いておくか」という判断が起きやすくなります。
飛び込み営業が成立していた本当の理由
この情報格差が強い時代に成立していたのが、飛び込み営業やアウトバウンド型の営業です。よく「オフィスのセキュリティが上がったから通用しなくなった」といった話もありますが、本質はそこではないと私は見ています。仮に昔と同じように入れたとしても、今の時代に飛び込み営業が同じように機能するかというと、かなり難しいはずです。
なぜなら、今は買い手がその場で競合情報を調べられますし、後から冷静に比較検討することも簡単だからです。つまり、飛び込み営業が成立していた背景には「買い手が情報を集めにくい」という構造があった、ということです。
Webサイトは「情報の先出し」を可能にした
そこで登場してきたのが、Webサイトによる情報公開です。Webサイトの価値は「無料で公開できる」という点だけではありません。紙のチラシは寿命が短く、パンフレットは取りに行く必要があり、そもそも出会える人数が限られます。
それに対してWebサイトは、検索さえできれば全国どこからでも、何回でも、情報にアクセスできます。売り手にとっても買い手にとっても、これは非常に都合が良かった。こうして、一部の企業が「情報の非対称性を解消する方向」に舵を切り、価格やプラン、見積りの考え方まで含めて、先に出し始めたわけです。
ここが面白いところで、情報を出すことは、昔の商売の前提からすると掟破りに近い動きでした。本来は公開したくない情報もあるのに、先に出す。すると買い手は比較検討がしやすくなり、「ここなら安心して進められる」と感じやすくなります。結果として、そのやり方が受けることが分かり、流れが変わっていきました。
情報公開が進むほど、インバウンドが強くなる
情報の先出しが進むと、買い手は「必要になったら調べて、比較して、こちらから問い合わせる」という行動に移りやすくなります。これが積み重なると、飛び込み営業やアウトバウンド営業は反応が取りにくくなりますし、逆にWebサイト上の情報やコンテンツを通じて問い合わせを得る流れが強くなります。
いわゆるコンテンツマーケティングという言葉が広がっていったのも、この流れとつながっています。言葉として定着した時期や呼び方の変遷はありますが、根っこの構造は「情報が公開されるほど、買い手の主導権が強くなる」という一点に集約できます。
情報が出そろった今、別の「情報格差」が目立ってきた
では、情報の非対称性が解消されたなら、それで終わりなのかというと、そうでもありません。多くの企業が情報を出すようになり、外から見れば「何をやっている会社か」「価格帯はどれくらいか」「会社概要はどうか」までは、以前よりずっと分かるようになりました。
ただ、その次に目立ってきたのが、外から見える姿と、中に入ってからの実態のズレです。書いてあることを信じて申し込んだのに、印象が違った。期待したプランがもう無かった。極端な例では、書いてあるサービス自体が実はもう動いていなかった。逆に、外からは分からなかったけれど中に入ったら想像以上に良かった、というケースもあります。
口コミ・ランキングが「万能ではない」ことにも気づき始めた
このズレを埋めるために、口コミやランキング、第三者による評価のようなものが重視されてきました。ところが、それが重視されると分かれば、悪用される余地も生まれます。実態と違う口コミが混ざったり、評価の見せ方が恣意的になったり、判断材料が揺らぐ問題が増えていきました。
さらに、周囲が良いと言っているものが、自分にとっても良いとは限らない、という感覚も広がってきました。価値観が多様になり、自分の基準で選びたい気持ちが自然になった一方で、「自分にとって実際どうなのか」を外から判断するのは、むしろ難しくなってきています。
第二の情報の非対称性は「売り手も気づいていない」
ここで私が「第二の情報の非対称性」と呼んでいるものが出てきます。以前の情報格差は、売り手が意識的に情報を握っていた側面がありました。けれど今の格差は、売り手側も、買い手が本当に知りたいことに気づいていない割合が高い、と感じています。
たとえば「FAQを書きましょう」と言われて作ってみても、出来上がる内容が、買い手の不安の核心を外してしまうことがあります。これは、出し惜しみではなく、単純に気づけていない。買い手が欲しい情報が、まだ言語化されきっていないことも多いので、なおさらです。
何を出すべきかは、仕組みで見つけにいく
2000年代前半の情報格差を崩す話は「出せばいい」で済みました。けれど今は「何を出せばいいのか」から考えないといけません。ここは、手順だけを並べた方法論で片づく話ではないと思っています。
大切なのは、買い手の言葉や迷いを、日々の業務の中で拾える仕組みがあるかどうかです。セールスの場面とアフターフローの場面が分断されていると、せっかく出てきた情報が積み上がりません。どの段階で、どんな質問を投げかけると、買い手自身も気づいていない不安や判断軸が表に出てくるのか。そこを設計し、記録し、活用できる流れを作る必要があります。
結局のところ、聞く力や向き合い方といった要素に帰着しやすい部分もありますし、企業文化や風土として根づいている会社ほど強い印象があります。だからこそ、ここは「これをやれば必ず大丈夫」という話にはなりにくいのですが、逆に言えば、商売の底力が出る部分でもあります。
全部をWebサイトに出す必要はない
もう一つ、あえて言っておきたいのは、第二の情報格差を突破する鍵が見えたときに、それを何でも公開情報にしてしまう必要はない、ということです。むしろ、真似されると損が大きいものは、ヒアリングや提案の場で丁寧に出したほうが、資産になりやすいと感じます。
そして、伝え方も一つではありません。文章なのか、画像なのか、動画なのか、音声なのか。何を、誰に、どの形で届けるのが良いのかは、別の重要な検討軸として残ります。
まとめ
Webサイトがビジネスに必須になった理由を、情報の非対称性の観点で振り返ると、流れが見えやすくなります。昔は買い手が調べにくかったから、売り手が主導しやすかった。そこにWebサイトが入って、情報の先出しが進み、買い手主導の比較検討が当たり前になった。その結果として、インバウンドの流れが強くなっていきました。
そして今は、情報が出そろったことで生まれるズレや、「本当に知りたいことが分からない」という第二の情報格差が課題になっています。私自身、まだWebサイトの表向きの表現としては十分にできているかと言われると心もとなく、道半ばです。ただ、問い合わせをいただいてからの中身としては整えている部分もありますので、今後もこのテーマは継続して深めていきたいと思います。
メルマガのバックナンバーも、また別の切り口で書いているので、当時は正月明けくらいに公開できればと考えていました。もし11月22日の回を受け取っていて見ていない方がいれば、あわせて目を通していただけると嬉しいです。
関連リンク
- 第9回 情報の非対称性とマイクロファイナンス(1) | 大和証券
- 有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 | Google 検索セントラル
- What Is Content Marketing? | Content Marketing Institute
- インバウンドマーケティング認定コース | HubSpotアカデミー
よくある質問(FAQ)
- なぜWebサイトが「あると便利」ではなく「必須」になったのでしょうか?
-
売り手と買い手の情報格差が大きかった時代に、Webサイトが情報公開を一気に進めたからです。買い手が自分で調べて比較できるようになり、選ばれ方や売り方の前提が変わりました。
- 飛び込み営業が通用しにくくなった理由は、セキュリティの強化だけですか?
-
本質は、買い手が情報を集めやすくなった点にあります。比較検討が容易になったことで、売り手の説明だけに依存する状況が減り、アウトバウンド型の反応が取りにくくなりました。
- 情報を公開すればするほど、問い合わせは増えるのでしょうか?
-
かつては「先に出す」こと自体が大きな差になりました。ただ今は多くの企業が情報公開を進めているため、単に量を増やすだけでは決め手になりにくく、外と中のズレを減らす工夫が重要になります。
- 「第二の情報の非対称性」とは、どういう状態を指していますか?
-
買い手が本当に知りたいことが、外からは見えにくいのに、売り手側もその「知りたいこと」に気づけていない状態です。FAQを作っても核心を外してしまう、といった形で表れやすいと感じています。
- 第二の情報格差に向き合うには、何から始めるのがよいですか?
-
買い手の言葉や迷いが、日々の業務の中で拾えるようにすることが出発点になります。セールスとアフターフローの連携、質問の設計、記録と活用の流れを整えていくことで、何を出すべきかが見えやすくなります。
配信スタンド
- Apple iTunes 公式ストア Podcast(おすすめ)
https://itunes.apple.com/jp/podcast/zhong-shan-yang-pingno-non/id750899892 - GooglePodcast
http://bit.ly/google-podcast-jp - Spotify
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