第586回:対話型AIから思ったようなアウトプットが出ないときに中小企業がおさえるべき「力」

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

このPodcastで得られること(要点)

対話型AIを使っていて、どうにも思い通りの結果が返ってこない。そんなもどかしさを感じていませんか。プロンプトの書き方やAIの仕組みを学ぶことも大切ですが、それ以上に大きな差を生むのは、実は「国語力」とも呼べる2つの言語的な能力です。

1つは、自分の頭の中にあるイメージを具体的な言葉に落とし込む力。もう1つは、相手に合わせて伝え方を柔軟に変えられる力です。この2つを日常のちょっとした練習で鍛えていくと、AIのアウトプットは見違えるように変わります。この記事では、600社以上のWebコンサルティングの現場から見えてきた、その具体的なトレーニング方法をお伝えしていきます。

第586回:AIアウトプットの伸ばし方_MASTER(大)

AIのアウトプットに満足できない原因はどこにあるのか

AIの進化は目覚ましいものがありますが、いざ使ってみると「凡庸な結果しか返ってこない」「もっと調整したいのに、何を変えればいいかわからない」という声をよくいただきます。私自身、日々そうした課題と向き合っているので、その気持ちはよくわかります。

実際にうまくいっていない方のプロンプトを見せていただくと、どうしてもぼんやりした指示になっていることが多いのです。

たとえば、文章の作成であれば「わかりやすいテキスト記事にしてください」としか書いていなかったり、デザインであれば「みんなにわかりやすいA4版のものにしてください」くらいの粒度だったり。その程度の情報しか渡していなければ、AI側もぼんやりした結果を返さざるを得ません。

では、もっと具体的に書こうとしたとき、何をどう書けばいいのかがわからない。あるいは書いてみたけれど、どうもAIに意図が伝わっていないようだ。こうした壁に当たっている方が、本当に多い印象です。

AIを使いこなすために必要な2つの力

AIのアウトプットを改善するアプローチにはいろいろな切り口がありますが、今回はプロンプトのテクニックやプログラミングの知識といった話からは少し離れて、もっと根っこの部分に目を向けてみたいと思います。それが冒頭でもお話しした、2つの言語的な能力です。

G検定のようなAI関連の資格試験で学ぶ体系的な知識は、もちろんあるに越したことはありません。

ただ、それを学んだからといってAIの使い方が劇的に変わるかというと、現場の実感としてはそこまで大きな変化にはつながりにくいのです。それよりも、AIに対してうまく指示を出し、返ってきた結果を的確に解釈して、自分の求めるものに近づけるよう対話を繰り返せるかどうかのほうが、ずっと大きな差になります。

頭の中のイメージを具体的に言語化する力

何かを作りたいと思ったとき、最終的にどんなものを作りたいかというイメージは、皆さんの頭の奥底にもやもやとあるはずです。メールの文面を考えるにしても「この相手にはこんな感じの文章がいいな」というイメージはお持ちでしょうし、Webサイトに載せる図を作りたいときも「こんな雰囲気のものが来たらいいな」という感覚はあるはずです。ただ、そのイメージをAIにうまく伝えられていないのです。

AIは、あうんの呼吸や空気を読むといった、文脈の裏に隠れた情報を汲み取ることが得意ではありません。もちろん上手に使えばとても強力な武器になりますが、基本的には仕様書を作るような感覚で、自分の頭の中のもやもやを一つひとつ言葉にしていく必要があります。この「言語化」ができるかどうかが、アウトプットの質を大きく左右します。

相手に合わせて伝え方を変える力

同じ内容を伝えるにしても、相手によって話し方や言葉の選び方、説明の順序は変わりますよね。同世代の友人に話すときと、その分野にとても詳しい人に話すときと、まったく知らない人に話すとき。それぞれで前提条件や言葉遣いを変えなければ、正しく伝わりません。

この調整がうまい人は、現場でAIから良いアウトプットを引き出せる傾向にあります。面白いのは、それがシステム部門の方とは限らないという点です。カスタマーサポートやフロントの営業の方のほうが、きちんとお伝えして使ってもらうと、むしろ上手に使いこなすことが珍しくありません。プログラミングやシステムの知識とは、あまり関係がないのです。

2つの力が揃うと何が変わるか

この2つの能力が上がっていくと、自然にAIへのインプットの質が高くなります。さらに、AIが返してきた想定外の結果に対しても、きちんと解釈して「ではここを調整しよう」と改善のサイクルを回せるようになります。つまり、一度で完璧な答えを引き出す必要はなくて、やり取りを重ねながら精度を上げていける力が身につくということです。

2つの力を鍛える方法

言語化力のトレーニング

まず「頭の中のもやもやを形にする力」を鍛える方法ですが、日記や日誌を書くことがとても有効です。手書きでなくてかまいません。むしろキーボードやスマートフォンのほうが続けやすいでしょう。何があって、どうなったのかを文章にまとめていく、その積み重ねが力になります。

ただ、日記となると個人的な感情や解釈が入りがちで、人に見せたくなくなることもありますよね。こうしたトレーニングは誰かに添削してもらうと伸びがまったく違いますので、代わりにおすすめしたいのが、ニュースを題材にする方法です。

あるニュースの背景にあることや、その出来事がどういう意味を持つのかを、なるべく具体的な粒度でまとめていく。学生時代にノートを作るような感覚で取り組んでいただくと、言語化の力がぐんと伸びます。

もっと気軽にできるトレーニングもあります。街を歩いているとき、何かを見て「いいな」「面白いな」「気になるな」と感じたら、なぜ自分はそう思ったのだろうと掘り下げてみてください。

誰かにちゃんと伝えられるくらいまで具体化して、できればメモに残す。こうした小さな積み重ねを日常的に行っていくと、とっさに自分の感情や周囲の変化を言語化できるようになっていきます。ちなみにこれ、言葉にする習慣がつくと気持ちの整理にもなるので、精神的な余裕にもつながるおまけがあります。

伝え方のトレーニング

「相手に合わせて伝え方を変える力」を鍛えるには、何かを教える場を持つのが一番です。私もWebに関する研修をお手伝いする際は、定期的に社内発表会を開催して持ち前で発表する機会を作ることをおすすめしています。実際に生身の人間を相手にして、理解度を確認しながら伝える練習は、やはり得るものが大きいです。

ただ、小学生や高齢の方に対して教える機会を、日常の中で簡単に作れるわけではありません。そこで活用していただきたいのが、AIのロールプレイ機能です。「こういう立場で、こういう属性の人に対して伝わるかどうかをチェックしたい」と設定して、AIにその人物を演じてもらう。

たとえば小学校低学年の子に対してAIの分野をわかりやすく伝えられるかどうか、シミュレーションしてもらうだけでも全然違います。

それを自分の会社のお客さまの属性に合わせていろいろ設定し、対話を繰り返していくと、「こういう言い回しは伝わらないんだな」「意外とこの切り口が響くんだな」という発見があります。もちろんシミュレーションですので、どこまで実態を反映しているかはモデルの精度によりますが、やらないのとでは雲泥の差です。

AIを「練習相手」として活用する

トレーニングの相手としてもAIは優秀です。自分が頭の中で抽象的に考えていることを、AIと一緒に解きほぐしていくというワークもおすすめです。わざと漠然としたことを書いてみて、そこから具体的に落とし込んでいくやり取りをAIと行う。その際のポイントとしては、「良し悪しの判断や意見は述べず、あくまで内容を解きほぐすことだけを目的にしてください」とAIに伝えておくことです。

こうしたAIとのやり取りを、1日10分でもいいので日課にしてみてください。おそらく3か月も続ければ、伝え方がかなり変わってくるはずです。実際に、続けた方に以前のご自身のプロンプトや参考情報を振り返ってもらうと、皆さん驚かれるんですよね。「これでは伝わらないわけだ」「こんな基本的なところを見落としていたのか」とおっしゃる方がとても多い。これはもう、自覚の問題なのです。自分で気づけるようになれば、あとは自然と良い方向に進んでいきます。

土台としての語彙力と国語の基礎

もう少し根っこの部分の話もしておきます。言葉のボキャブラリーや、言葉を正しく理解しているかどうかも、AIを使いこなす上では大切な要素です。とくに「ふわっとした」「自然な」「○○風」のような、裏にたくさんの情報を含んだ言葉をうまく使えると、AIに渡せる情報量がまるで変わってきます。

良い例があります。画像生成AIで「ゴッホ風」と指示すると、それだけでゴッホ独特のタッチや時代背景を反映した画像が出てきます。わずか数文字の言葉の中に、膨大な情報が圧縮されているわけです。動画の生成でも、日本のアニメーション特有のコマの使い方を指示語として入れたところ、出力がまるで違うものになったという事例もありました。指示語の裏にある、AIが学習してきたさまざまな知識や表現が引き出されるからです。

文章でも同じことが言えます。「○○風」「これを目的として」といった抽象的な指示を適切に使い分けるだけで、返ってくる結果はまるで変わります。だからこそ、基礎的な国語力、つまり誤解のない文章の作り方や、表現の引き出しの多さが、じわじわと大きな差になるのです。

ここで少し私自身の話をさせてください。20年ほど前、私はデザイナーとして働いていました。正直なところ、当時は国語力がほとんどなくて、文章添削塾に提出すると10点中2点をもらうような有り様でした。そんな状態からブログの記事を書いたり、さまざまな場で発表したり資料を作ったりということを続けていくうちに、今ではおそらく平均的な方よりはできるようになっています。国語力は、いくつになっても伸ばせます。遅いということは決してありません。

中小企業こそ、一人ひとりのAI活用力を高める意味がある

中小企業はどうしても人手が限られます。だからこそ、一人ひとりの生産性を高めていくことが欠かせませんし、そのための道具として今もっとも可能性があるのがAIです。全員がAIをうまく使えるような会社になることを目指していただけると、さまざまな課題が間接的に解決へ向かっていくのではないかと考えています。

もう一つ、こうした力を身につけておくと、新しいAIツールやサービスが次々と登場しても振り回されにくくなります。使っているツールが古いから自分は損をしているのではないか、そんな不安を感じることもあるかもしれません。けれど実のところ、どのツールを使うかよりも、自分がどう使うかのほうがはるかに大切です。そのことへの確信が自分の中に生まれると、AIに関するさまざまなニュースに追い立てられるような感覚も薄れていきます。

今回ご紹介した練習は、1日5分や10分からで構いません。3か月、半年、1年と積み重ねれば、きっと振り返ったときに驚くほどの変化を感じていただけるはずです。私自身もAIを長く使ってきて、できることは本当に増えました。その分、働く時間も増えましたが、楽しいのでまったく苦にはなりません。もしAIの活用について、自社ではどのように進めればよいか相談したい、プロンプトを含めたアドバイスがほしい、Webのことだけでなく広くAI関連のことも聞きたいということがあれば、顧問サービスをはじめ各種サービスをご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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よくある質問

AIのアウトプット品質を上げるには、プログラミングやシステムの知識が必要ですか?
必ずしも必要ではありません。それよりも、自分の頭の中のイメージを具体的に言葉にする力と、相手に合わせて伝え方を変える力の2つが、アウトプットの質に直結します。営業職やカスタマーサポートの方が、きちんとコツをお伝えするとAIを上手に使いこなすケースは珍しくありません。
言語化力を鍛えるには、具体的に何をすればよいですか?
ニュースを題材にして、その背景や意味を具体的にまとめるトレーニングがおすすめです。また、街で何かを見て「いいな」と感じたとき、なぜそう思ったかを掘り下げてメモする習慣も効果があります。誰かに添削してもらえると、さらに伸びが早くなります。
AIをトレーニングの相手として使うことはできますか?
はい、AIのロールプレイ機能を使えば、さまざまな属性の相手を想定した伝え方の練習が可能です。また、自分の抽象的な思考をAIと一緒に言葉に落としていくワークも有効です。1日10分の継続で、3か月後には明らかな変化を実感できるでしょう。
国語力は大人になってからでも伸ばせるのですか?
はい、いくつからでも伸ばすことができます。この記事の筆者も、20年前はデザイナーとして文章添削で10点中2点を取る状態でしたが、ブログの執筆や発表、資料作成を継続することで大きく向上しました。年齢や職種に関係なく、練習すれば国語力は伸びます。
中小企業がAI活用力を高めると、どのような変化が期待できますか?
人手が限られる中小企業では、一人ひとりの生産性を高めることが不可欠です。全社員がAIをうまく使えるようになれば、業務効率が向上するだけでなく、新しいツールやサービスが登場しても振り回されない安定感が生まれます。5分や10分の日常的な練習から始めても、数か月後には大きな変化が出てきます。

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