今回は、Webコンテンツ活用に専門知識を持った人材を入れることが難しい中小企業・小規模事業者の方向けに、動画コンテンツの実践的活用法について、お伝えできればと思います。
動画コンテンツの基礎・基本という内容となると、動画とは?そもそも…という内容になりがちですが、実際はそれでは手応えを得られるまで時間がかかり、現場では回りません。KPIなども空回りします。
また、発注の仕方や相場などについても聞かれます。しかし私はコンサルの中で「まずは自分たちでやってみてから、外に出すべきところは外に出す」ことをお勧めしています。なので今回も、まずはやってみる、やれるんですよ、という内容です。
今回のテーマ
今回のテーマは以下です。Webマーケティング…今風に言えばコンテンツ・マーケティング的な観点です。
- 動画コンテンツは動画作成会社などに頼まなくても、十分活用できる
- むしろ「キレイなものが響かない」世界に入っている…と気づいていますか?
- ゼロから始める場合のオススメの第一歩の踏み出し方
- 動画活用で得られる副次的なメリット
- 関連リソース
動画コンテンツは動画作成会社に頼まなくても、結果に繋げられる
結論から言えば、少なくとも中小企業・小規模事業者においては、マーケティングや販売で使うような動画は、動画作成会社など専門会社に依頼せずとも、効果が出るものを作ることができます。
動画をおすすめすると、お客様からも少なからず
「動画を自分たちで編集して、それを使ってもいいのか?」
という質問を受けます。
TVの延長イメージで、きれいなものを作らなくてはならないのでは…というイメージが強いのだと思います。実際、営業をかけてくる動画会社も多いですが、その制作事例を見ると、しっかりとしたいわゆる「プロ」といった事例が並んでいますので、そう言いう印象を受けても仕方ありません。
※中小企業の事業会社への、動画会社からの営業は多いです。
しかし、そもそもなのですがホームページ上でコンテンツをどう活用するかという観点で、最初に持つべき観点はそこではありません。
「買い手がどんなものを求めているのか」です。それを考察した結果
- 「品質が必要だ」ということであれば専門会社に依頼すべきです
- 「品質の優先度は高くない、むしろ別の要素が必要」であり、そのためには自分たちでやるべきだ、ということであれば自分たちでやるべきです
動画コンテンツに限らずまずこの「買い手が求めているもの」をスタート地点に考えることをおすすめします。
買い手が求めているものは「ダマシのきかない情報」
結論から言えば、買い手は「真実」が伝わる情報を求めています。なぜなら、さまざまなものが簡単に加工できるようになり、信じられるものが何なのかわからなくなっているからです。ダマシのきかない情報がほしいのです。
私は今の時代を「加工が民主化された時代」と呼んでいます。(Podcastでもよく出てくるフレーズですね)その原因として最も大きいのはSNSとスマホアプリでしょう。
SNOWなどの顔をいじるアプリは当たり前ですし、Web会議でも美肌フィルターのようなものが標準で入っています。私が普段使っているzoomでも、
- ビデオフィルタ(強くするとボヤッとなり輪郭以外がなめらかというか、ぼやっとなる)
- 低照度補正(強くすると、強い照明を当てたような状態、露出を上げていったような状態になる)
という機能があります。
また、Photoshopのような昔は一般の方には高価で手に入らなかったソフトウェアが、月額5,000-6,000円レベルでサブスクで使えるようになったことも大きいでしょう。昔はPhotoshopだけでも7-8万円しました。(Adobe Creative Cloud 公式サイト)
日常に加工が当然のように入っている時代
日常に加工が当然のように入っている時代なのです。写真集などもよく「どうせ加工だろう」と言われますよね。「もはや絵」ですとか。
そういう時代なので、
「視覚的コンテンツは加工されているだろうという疑いから入る」
のが、今のスタンダードな買い手の頭の中になっています。
あなたはどうですか?そういう目で自然と見ていませんか?
これが「ダマシのきかない情報」が求められる背景です。
だからむしろ「素人が程々の編集をしたもの」が求められる
なので、むしろ作り込み過ぎはマイナスになるのです。疑われてしまうからです。
※誤解を生みそうなので補足しておくと、動画編集会社が不要というわけではありません。
前述したとおり、品質が必要という条件なら、動画編集会社に依頼する一択です。CMですとか、上場企業のイメージPVですとか。番組作りですとか。また、両方必要な場面もあるでしょう。採用ですとか。
例えば「地元の会社が、一生懸命何かを伝えようと作っている動画」がよいのです。
機材は新し目のスマホと三脚などで十分
機材は、極論スマホの動画撮影機能で十分です。私のお客様もiPhoneを何かで固定したりジンバルにつけたりしている方がほとんどです。せいぜい仕事でGoPro使ってるからそれで、くらいですね。
今のスマホは明るい場面なら十分使えます。マイクはギリギリ及第点かもしれませんが、むしろそれが生々しさにつながることも少なくありません。
暗い中で点検している動画、何かの商品を、一生懸命説明している動画、ウキウキしながら完成したお宅を取らせてもらっている動画…。そういうものが響くのです。
こんなもの見たいの?と思うような内容の動画も、お客さんに見せると興味深く見てくれることはよくあります。
ぜひ
- お客さんに、見られるとしたらどんなものを見たいか聞いてみる
- いろいろ撮影してみて、実際に見て反応を見る、感想を聞く
- YouTubeで再生回数が多い動画をヒントにする
などを行って、いろんなものを撮ってみることをおすすめします。
Youtubeでの閲覧数や再生回数は気にしすぎなくていい
いま動画をアップする(ホストする)なら、プラットフォームとしてはYouTube一択かなと思います(きちんと閲覧管理をしたい、販売したいならVimeoですが)
そうするとどうしても閲覧回数などが気になると思いますが、端的には気にしなくて良いです。なぜなら、
- 中小企業がお客様向けに作っている動画で、YouTube上でも人気が出て再生回数が伸びるものは極めて少ないから(特にB2B)
- YouTube上で再生回数が多くても、全国商売・キャラ付けが濃い企業以外の殆どの企業では反応にもブランディングにも結びつかないから
です。お客様の中には「そこに動画がある」だけで安心してくれる人もいます。再生しないで。地域商圏で、特定の方々にサービスを提供しているような方は特にそうです。
※Googleなど検索エンジンの検索結果への露出アップは狙ったほうが良いですが、今回は割愛します。
「安心感アップ」「信頼構築」コンテンツとして考える
動画の目的としては、販促と考えると売り込みっぽくなるのでやめたほうが良いです。それより
- この商品やサービスをこの会社の人は愛している、心がこもっている
- 真剣に商品やサービス提供、サポートをしてくれそうだ
といった信頼感や安心感の文脈で使うことをおすすめします。
コンテンツの型ごとについての特性も一緒に押さえておくと便利です。こちらの記事もぜひご覧ください。
- コンテンツには「16種類の形」がある
https://roundup-inc.co.jp/content-101/startup/variation16/ - 【第1回】適切な表現方法を選ぶことがキラーコンテンツ作成の第一歩。押さえるべき24パターンとは?
https://roundup-strategy.jp/content-24-pattern/
これにはもう一つ理由があります。それは「なんだかんだそんなに集中して動画をみてくれない」という理由です。大体が、他のことをしながらや、飛ばし飛ばし閲覧します。
なので、細かいことを動画で伝えようとしても失敗します。それより全体の雰囲気や印象で攻めるというイメージをおすすめします。
嫌われやすいのが動画と音声、「マナー」は絶対に守る
「映像や音声」は生理的嫌悪感を引き起こしやすい
しかし、だからといって適当にとってもOKということではありません。最低限の足切りはあります。
「映像や音声」は生理的嫌悪感を引き起こしやすいので注意が必要です。
生理的嫌悪感を感じられたら、一生お客さんにはならないと考えることをおすすめします。ブラックリスト入りです。「不快にしてはいけない」のです。
具体的には
- 音声にクチャクチャ音が入る、舌打ち、咳払いなどの不快な音が入る
- 口癖の「えー」や「うーん」などが多い
- 不潔感や粗雑さを感じさせる振る舞いをしてしまう
などが多いですね。
不潔感や粗雑さは、例えばこんな物も入ります
「固い廊下を歩く時の靴音がカンカンうるさい、ドアを締める時の音がうるさい」
接客を生業にしている方は、自然と抑えられているかもしれませんが、現場の方が動画を取る機会も多いはずですし、今は生産者が直に情報発信する方が真実味が合って響きやすいです。そういう方で起きがちな問題です。
ちなみに、TVってうまくコントロールして作られているんですよ。不快にならないようにしつつ、その番組に合ったレベル感を出しています。そこはさすがの歴史だと思います。
なので、ここは練習が必要です。
では、どうやって練習したらいいのでしょうか?
おすすめの方法があります。
初心者が質の良い動画を作るための第一ステップ
結論から言うと、まず内部向けの動画を作ったほうがいいです。
会社内でもいろいろなものがありますよね。
下に伝えるためのマニュアル動画、会議の重要な部分を抜き出して編集した動画、自分が持つ知識を社内に発信する内部研修動画など、まずは内向けの動画を作ることから始めると良いです。
無意識に最初から外に出すことを前提に考えていませんか?
YouTubeにアップして自分のサイトに貼り付ける、あるいはYouTube上で発見してもらってお客さんに来てもらう。既存の見込み客に見てもらってより見込み度を上げるなど、外向けのものとして動画を作らなくてはいけないと思い込んでいませんか?
外向けに作るとなると、不快にさせないなど一定のクオリティーをクリアする必要があります。なので、みなさん二の足を踏んでしまうわけですが、その考え方を一度切り替えてもらいたいのです。
なぜ最初から外向けのものを作らなくてはいけないのか?内向きからでいいじゃないですか。最初から営業に活用することを前提にする必要性はないですよね。
内向けであれば、多少聞き取りづらい、分かりづらい、構成が・・・などということがあっても問題にはなりません。情報漏洩の心配もありませんし、内向けだからフィードバックも、もらいやすいでしょう。
- 「ここがよく分からなかった」「ここをこうしたらいいと思う」というフィードバックをもらう
- 内部での再生数でどういう動画がたくさん視聴されるかチェックできる
- アングルはどうするか、照明がなくてはダメだとかいろいろなことを考えていくきっかけができる
たくさん実験してトライアンドエラーをくり返すことができます。
大事だと言われる「シナリオ設計」や「目的の明確化」「ターゲット設定」も自然とできるようになる
よく、動画を作る際には、シナリオをちゃんと設計して…なんのためか考えて…ターゲットは…などと事前に組み立てる必要があると言われます。
それはそのとおりです。動画コンテンツに限りませんね。ただ、それを座学のようなイメージで学ぶ必要があるかというと、それは違うと思います。
すでに客商売をやっているなら、潜在的にすでに持っていることが多いからです。
それを引き出してあげる。あるいは、生産側であまりお客さんとの接点がない人たちには社内で、社内の製品やお客さんを前提にスキルトランスファーを行う。そちらのほうが良いです。
何も、Webにしても、動画にしても特別に考える必要はありません。ことさらにそこを強調する会社があれば、それは言い過ぎではないかと現場からは思います。
特に「自分の声に慣れて、自分の良さを引き出せるようになること」が大事
動画コンテンツを作る際の撮影の時に皆さんが一番嫌がるのは、自分の声を聞くことです。
私は元々高校で演劇をやっていたのですが、自分の声を自分で聞くのが本当に嫌でした。自分たちの演技を撮って見直すことが何度もあるのですが、「自分の声はこんなふうなんだ、気持ち悪い・・・」なんて思いました。
骨を通って聞こえる自分の声と、実際に空気中に発せられる自分の声は全然違うんです。だから気持ち悪いのです。これを抜けないと、コンテンツを生み出す速度がなかなか上がりません。
これは、経験上「練習あるのみ」です。特に「喉声からの脱出」です。のど声で話すと声帯がうまく震えないので、聞き取りやすい響く声になりません。
ひたすらやって練習するのみ
しかし、内向けに撮って自分で編集して、何度も自分の声を聞いていると、だんだんどうでもよくなってきます。
そうなってきたら徐々に自信と度胸がつきますので、社内向けの動画か、あるいはお客さん向けくらいでもいいと思いますが、だんだん外側に移していけばいいと思います。そうすることによって、自然といろいろなスキルが上がっていきます。
しゃべり方、しゃべる順番、しゃべる内容、自分の癖、どうやったら分かりやすくなるか、どこにどういうタイミングで資料やテロップを出したらいいのか、撮影する時にどこからどうライトを当てたらいいのか、どこを見てしゃべればいいのか・・・これらは全て数稽古です。
それを1人で練習しろと言われても、やる意義もないのでなかなかできませんよね。だから社内向けのタスクとして作ってしまうのです。
面白いのは、これによって営業の方であってもなくても、コミュニケーションスキルが上がって、関係ないところで案件を取れたりするようになることがあるのです。そういうマーケティング・営業的な副次効果も期待できます。余談ですが。
ホームページの更新だって同じ、まずは社内向けに
HPも同じです。例えば当社は自分で更新することを大事にしているので、できるだけ自分たちで更新してHPを作っています。でも皆さんだいたい自信がないのです。壊しちゃったらどうしよう、どうページを作ったらいいか分からない(操作方法・レイアウトなど)とか・・・。
それなら、同じデザインでもいいし素のワードプレスでもいいので、社内告知などの社内イントラ向けで作ってみるといいです。
システム的に外部から見られないようにパスワードをかけるなどして、そこでいろいろなことを内向けで練習するのです。
プログラムもそうですね。私も初めは内部向けの小さな業務効率化ツールを作って、そこで練習して学びました。社内には迷惑をかけたかもしれませんが、そこで勉強になった部分はたくさんありました。
これから動画を作りたいけれど自信がない方は、ぜひまずは社内向けのもので練習してみてください。メールマガジンなんかもそうです。
それをどこかのタイミングで外に見せた時に「結構うまいね」なんて言われれば、それは外に出してしまっても全く問題ありません。
これからの時代、カメラの前でしゃべることに慣れることは大きなスキル
これからの時代、中小企業・小規模事業者の方は、カメラの前でしゃべる機会を働く全員が持ったほうが良いです。
例えばしゃべるのが上手な営業さんなんかでも、いざ自分が動画に撮られて見てみると、「こんなふうにしゃべっていたんだ」「もっとこうしたほうがいいな」と気づくことがたくさんあります。
しゃべり慣れていない人にとっては、もちろん単純に練習になります。
リモートワークでは非同期コミュニケーションも増えますから、誰かの反応を見ながら話すというスキルよりも、反応が分からない画面の向こうにきちんとメッセージを届けるスキルのほうが重要です。
※「対面じゃないと伝わらない!」などと文句を言う方は時代に合わせてスキルを組み替えていないということです。
求められるのは、反応が見えない中でどう情報を伝えるかということなので、その練習にもなりますし、自分を見直すきっかけにもなります。
私はpodcastやWEBセミナーをやっていますが、基本的には全部一発撮りでカットしていません。はい、申し訳ありませんが、私の練習も兼ねています。後から聞いてみて「ありゃ・・・」と思うこともあります(笑)
まとめ
ということで、今回は
- 動画コンテンツは動画作成会社などに頼まなくても、十分活用できる
- むしろ「キレイなものが響かない」世界に入っている…と気づいていますか?
- ゼロから始める場合のオススメの第一歩の踏み出し方
- 動画活用で得られる副次的なメリット
を中心にまとめました。
今回の内容は過去のWebセミナーのアップグレード版です。また違った内容を音声ではお届けしていますので、興味を持った方はぜひご覧ください。こちらはこちらで別の伝わるものがあると思います。
すぐに聞きたい方はこちら
m4a形式でアップしています、すぐに聞けるはずです。
Webプレイヤーで聞く方はこちら。できれば以下配信スタンドでお聞き下さい。
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では、最後までお読み頂きありがとうございました。なにかお悩みのことがあればお気軽にお問い合わせ下さい。
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