第489回:世界観を通じて好きになってもらうのは、とても難易度の高い方向性です

内容について

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は「世界観を通じて好きになってもらうのは、とても難易度の高い方向性」という話をします。

このPodcast/書き起こしで得られること(要点)

世界観づくりは、言葉としてはよく聞く一方で、成果につなげる難易度が高い取り組みです。特にネット上で「架空の世界」「架空のキャラクター」に没入してもらい、購買につなげるのは、短期では成立しにくいと私は見ています。

ただし、世界観まで持っていかなくても、会社や人の物語性(現在・過去・未来)を丁寧に伝えるやり方は、ネットでも十分に機能します。この線引きをはっきりさせたうえで、判断をしやすくするのが今回の狙いです。

  • 世界観を「買ってもらう」難しさの正体
  • ベイクの没入型EC事例を、観察対象としてどう見るか
  • 世界観ではなく物語性で成果を出す、現実的な進め方

世界観から好きになってもらうのは、入口が高い戦いです

消費者向け(B2C)の領域では「自分たちの商品の世界観を感じてほしい」「世界観からブランドを好きになってほしい」という話をよく聞きます。アパレルや装飾品のように、店舗の雰囲気や見せ方で伝えやすい商材では、世界観が武器になりやすいのも事実です。

一方で、世界観はふんわりしている分、受け取る側の負担が大きい概念です。世界観を感じるためには、そのブランドに踏み込むだけの関心と時間が必要になります。だからこそ「世界観で買った」「世界観で好きになった」という体験が、誰にでも多発するものではない、と私は捉えています。

観察対象として面白い事例:ベイクの没入型EC

今回の話は「今どうか」よりも「これからどうなるか」をチェックしておいたほうがいい、という文脈でお伝えします。日経クロストレンドに、ベイクがお菓子のブランドで没入型ECに挑戦している、という趣旨の記事が10月26日に出ていました。

ここで私が注目しているのは、良い悪いの断定ではなく「世界観に入るハードルが下がるかどうか」です。もしこの試みが継続され、一定の効果を出し続けるなら、世界観を提供してコア層に入ってもらう戦いが、やりやすくなっていきます。逆に、半年から1年ほどで立ち消えするなら、世界観に投資すること自体の難しさが、あらためて裏づけられます。

没入型ECは、何をしているのか

ベイクの取り組みは、ネット上で商品を一覧で並べるのではなく、架空の建物のような舞台を用意し、そこに住人や部屋ごとの設定を持たせて、ストーリーを入口に商品へつなげる形です。私が見た範囲では、建物(マンション)と部屋番号、キャラクター設定が連動していて、その価値観や物語に共感した人が購入する、という流れを狙っているように見えます。

この構造自体は分かりやすいです。ただ、ここから先の「没入」を起こせるかどうかが、難易度の高い勝負になります。

架空キャラクターで世界観に入ってもらうのが難しい理由

私がこの方向性を難しいと見ているのは、架空のキャラクターを媒介にした没入が、作り込みなしでは成立しないからです。対面で初めて会った人の話を聞くと、その人の過去や現在、熱量の輪郭が短時間でも伝わってきます。視覚や聴覚を通じて、言葉以外の情報も入り、話の信頼感や温度も感じ取れます。

ところが架空の人物は、その「本当らしさ」を、設計と表現だけで積み上げなければいけません。キャラクターの奥行きは、短い接触では深くなりません。短期のEC施策として成立させるなら、相当な密度で物語を更新し続ける必要が出てきます。

世界観づくりは「10年単位の仕事」になります

世界観を自前で構築して、人に“そこで生きたい”と思ってもらい、その延長で商品を買ってもらう。これは、短期の打ち手として扱うと危険です。私の感覚では、10年、20年といった単位で取り組む仕事になります。

途中でぶれると積み上げが崩れます。やるなら会社として決めて、露出も含めて押し切る覚悟が要ります。だから私は、短期の売上目標を背負っているECで、この型を採用するのはリスクが高い、と判断しています。

世界観をやるなら「すでに世界を持っているもの」を借ります

世界観の入口を下げる現実的な方法があります。それは、すでに多くの人に共有されているキャラクターや作品、有名人など、物語性や世界が立ち上がっている存在と組むことです。コラボレーションが効率的に見えるのは、ゼロから世界を説明しなくても、前提が伝わるからです。

世界観を自前で作るのは否定しません。ただ、その場合は「長期で積み上げる」前提を、最初に置いたほうが投資判断がぶれません。

私が勧めるのは「世界観」ではなく「物語性」です

世界観という大上段の話にしなくても、ネットで強く効く表現があります。私は、会社や人の物語性を丁寧に出すことを勧めています。創業者の現在・過去・未来、会社がどんな経緯で今の形になったのか、これからどこへ向かうのか。時間軸で語るだけで、目の前の取り組みの輪郭がはっきりします。

このやり方は、私自身も勧めてきて成果が出ています。「私たちをもっと知ってください」という形で情報を渡せば、読んだ人は、無理なくその会社の考え方に入っていけます。世界観の没入を狙うより、まずここを固めたほうが、事業としては前に進みやすいと私は考えています。

まとめ

世界観を通じて好きになってもらい、購買につなげる。これは簡単な方向性ではありません。架空キャラクターで没入を起こすなら、短期の施策ではなく長期戦略として扱うべきです。

一方で、物語性はネットでも十分に伝わります。世界観に挑む前に、まずは「私たちがどうやってここに来たのか」「これからどこへ向かうのか」を、時間軸で丁寧に表現するところから始めてください。

FAQ

世界観づくりをやりたいのですが、まず何から考えるべきですか?

世界観を「短期の集客施策」に置くのか、「長期のブランド戦略」に置くのかを先に決めてください。短期で結果を背負うEC施策に置くほど、投資判断が難しくなります。

ネット上で世界観に没入してもらうのが難しいのはなぜですか?

世界観は、受け手が踏み込むだけの関心と時間が必要になります。特に架空キャラクターを媒介にする場合は「本当らしさ」を表現だけで積み上げる必要があり、短い接触では奥行きが生まれにくいからです。

世界観に挑むなら、成功確率を上げる選択はありますか?

すでに多くの人に共有されているキャラクターや作品、有名人など、前提として世界が立っている存在と組む方法があります。ゼロから説明する負担を減らせるため、入口を下げられます。

世界観ではなく「物語性」を勧める理由は何ですか?

会社や人の現在・過去・未来を丁寧に語るだけで、取り組みの輪郭と「なぜそれをやっているのか」が伝わります。ネット上でも理解されやすく、購買や問い合わせの前段の信頼につながりやすいからです。

ベイクの没入型ECは、どんな観点で見ればいいですか?

良い悪いの感想よりも「継続して運用されるか」を見てください。半年から1年ほどで継続し、一定の効果が積み上がっていくなら、世界観に入るハードルが下がっている判断材料になります。

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