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ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
今回は「社内にいる既存の従業員のデジタルスキル・Webマーケティングスキルをどうやって上げていくか」というテーマでお話しします。特に、
- 研修をしても、しばらくするとほとんど忘れられてしまう
- 外部講師を頻繁に呼べるほど、予算や時間に余裕がない
- とはいえ、このままではデジタルに弱い会社のままではないかと不安
そんな状況で悩んでいる方に向けて、「日常の中で自然にスキルアップしていくための考え方」と「現実的な取り組み方」を、私自身の現場での経験も交えながらお伝えしていきます。
既存社員のデジタルスキルアップ、「機会がない」問題
社内のデジタルスキルを上げたいと思ったとき、多くの会社が最初に考えるのは次の二つです。
- 外部セミナーや講座に社員を参加させる
- 自社に講師を呼んで、社内研修を行う
もちろん、これ自体は悪いことではありません。ただ、よく聞く悩みがあります。
- せっかく研修をしても、1か月後には内容をほとんど覚えていない
- 予算的に、毎月のように研修を組めるわけではない
- 教材を常に用意しておく余裕もない
つまり「スキルアップの機会を用意しているつもりなのに、それが身についていないように感じる」という状況です。
ここで一度整理しておきたいのは、単発の研修やセミナーだけで、人が大きく変わることはあまり多くないという前提です。これは講師の腕の問題というより、仕組みの問題に近いと考えています。
単発の研修や外部セミナーに過度な期待をしない
外部セミナーの会場を思い浮かべてみてください。きれいな会場に集まって、同じテーマに関心がある人が周りにたくさんいて、成功事例の話も聞ける。非日常の空間として、刺激のある場になりやすいですよね。
その場では「なるほど、自社でもやってみたい」と思うのですが、会社に戻る途中でふと冷静になります。
- うちの会社の状況で、これは本当にできるのだろうか
- まず何から手をつければいいのか
この段階で、多くの方の行動は次の二つに分かれます。
- セミナー主催企業や登壇者の会社にそのまま相談し、支援を依頼する
- 社内向けのレポートだけ書いて、「いつかタイミングがきたらやろう」と後回しにする
結果として、セミナーをきっかけに「継続的な行動」が生まれないまま時間が過ぎていくことが多いのです。これは社内研修でも同じで、外部の人が来ることでその場の空気は変わりますが、それだけで日常の行動が変わるかというと、難しい面があります。
私が研修で必ず「フォローアップ期間」をつける理由
私も企業研修を行いますが、必ずセットにしているのが研修後のフォローアップ期間です。たとえば、4日間の研修を行ったら、その後1か月は
- Microsoft Teams(チームズ)
- Slack(スラック)
- Chatwork(チャットワーク)
など、その会社で使っているグループウェアやチャットツール上で質問を受け付けるようにしています。
実際にやってみると、フォローアップ期間に飛んでくる質問は、研修のスライドに直接は出てこないようなものも多いです。むしろ、そうした具体的な質問へのやりとりのほうが、最終的には役に立ったと言われることが多いくらいです。
この経験からも、「1回の研修で人を変える」という期待をいったん手放すことが重要だと考えています。では、代わりにどこに期待すべきか。それが次のテーマです。
中小企業でも続けられる「日常ベース」の学び方
「毎週のように研修をする」「高額な講師を定期的に呼ぶ」というのは、正直なところ、多くの中小企業では現実的ではありません。そこで視点を変えて、
日常の中にある「当たり前の行動」そのものを、学びの場として活用する
という考え方で設計してみてはどうでしょうか。
たとえば、皆さんは普段、自分が何かを買うときやサービスを選ぶとき、どれくらいの頻度でウェブ上の情報を見ているでしょうか。まったく見ないという人は、かなり少ないのではないかと思います。
その「自分がお客様になっている時間」は、自社の顧客の気持ちを理解するうえで、とても大きなヒントの宝庫です。売り手としての時間より、お客様として情報を見ている時間のほうがずっと長い、という方も多いはずです。
であれば、そこから積極的に学んでしまおうという発想です。
自分の購買行動を観察する
おすすめしているのは、何かをウェブで探したり比較したりするときに、次のようなことを意識してメモしてみることです。
- 自分はなぜその商品・サービスが気になったのか
- 最終的に選ばなかったサイト・会社は、なぜ避けたのか
特に後者の「選ばなかった理由」が重要です。選んだ理由は、意外と感覚的だったり、うまく言葉にできなかったりすることが多いのですが、
「やめた理由」「避けた理由」は、比較的論理的に説明できることが多いのです。
- 価格の書き方が分かりにくくて不安を感じた
- 会社情報がほとんど載っておらず、信頼しきれなかった
- 問い合わせフォームが面倒そうだったのでやめた
こういった「マイナスの理由」は、人間の性質として見つけやすい面があります。そこをあえて意識して言葉にしていくと、お客様がどこで離脱するのか、どこに不安を感じるのかが、自分の体験を通じて見えてきます。
「選ばなかった理由」を言語化してためていく
最初は少し手間に感じられるかもしれませんが、
- 「どのサイトを見て」
- 「どこが気になって」
- 「最終的に、どんな理由でやめたのか・選んだのか」
といった情報を、簡単なメモや社内の共有ノートにためていくだけでも、かなり視点が変わってきます。
これを続けることで、
- 「こういう情報が書いてあると読む気が失せる」
- 「こういう情報があると、次のページも読みたくなる」
といった「読んでいる側の感覚」が、自分の中で整理されていきます。すると、いざ自社のウェブサイトや広告を考えるときに、お客様目線でチェックする力が自然と身についてきます。
アウトプットして初めて身につく
とはいえ、頭の中で思うだけだと、どうしてもあいまいなままになりがちです。そこで大切になってくるのが、
- 簡単なレポートにまとめてもらう
- 月に一度の勉強会のような場で共有してもらう
といったアウトプットの場です。
知識や気づきを
- 言葉にする(言語化する)
- 筋道を立てて説明する(論理化する)
というプロセスを通さないと、頭の中でうまく整理されません。結果として、
- 研修で聞いたこと
- 本やセミナーで学んだこと
が「なんとなく分かった気がする」状態のまま、ゆっくり記憶から薄れていきます。
よく「研修をしても、すぐ忘れてしまう」と言われますが、正確には
そもそも自分の中で整理できるところまで吸収しきれていない
ことが多いのです。特に、成功事例だけを紹介するような研修は要注意です。
成功事例紹介の「語られない部分」に注意する
成功事例の話は、限られた時間の中で要点だけが紹介されることが多く、どうしても省略されている部分がたくさんあります。
たとえば、1時間の成功事例セミナーがあるとします。その裏側には、
- 前提となっている社内の体制や文化
- 実はうまくいかなかった試行錯誤の過程
- 関係部署との調整や、社内政治に近いような動き
など、話せば3〜4時間はかかるような「隙間」があります。ただ「そこまで話すと長くなりすぎる」「そこはあまり面白く聞こえない」という理由で、省略されていることが多いのです。
本当に力がつくのは、
- その事例が自社でも実現できるのか
- 自分たちがやるとしたら、どこでつまずきそうか
を、自社の状況にあてはめて考え直していくプロセスです。その過程で生まれた疑問を言語化し、誰かとやりとりすることで、知識が自分のものになっていきます。
日常の中で専門職レベルの「目線」を育てる
少し違う業界の例ですが、あるアナウンサーの方の話がとても印象に残っています。その方が「どうやって実況がうまくなったのか」と聞かれたとき、こう答えていました。
日常のあらゆる場面で、頭の中で自然と実況するようにしていた。
電車に乗っていても、車窓から見える景色を見ながら、心の中ではずっと実況している。
それを続けていたら、あるとき自分の中で何かが変わった。 (あるアナウンサーの方のエピソードを要約)
この話は、ウェブマーケティングのスキルアップにもそのまま応用できます。
- 自分がお客様としてサイトを見ているときも
- 広告を眺めているときも
頭の中で
- 「ここで離脱する人が多そうだ」
- 「この一言があるから、次を読みたくなる」
- 「この導線だと、問い合わせまでたどり着けない人がいそうだ」
といった実況を自然にしてしまう状態を目指します。
こうした目線が身についてくると、
- 自分に足りていない知識や視点が分かる
- 他社の良い事例を見たときに「何が良いのか」を具体的に説明できる
ようになっていきます。「専門家になる」というと大がかりに聞こえますが、日常の中で当たり前にやることを、少し意識して言語化する習慣があるだけで、スキルアップのスピードはかなり変わります。
社内だけで完結させないための「セカンドオピニオン」
ここまで、「日常の中で学ぶ」「自分たちの購買行動から学ぶ」という話をしてきました。ただ、もう一つ大事なポイントがあります。
それは、社内だけで考えていると、ときどき変な方向にまとまってしまうことがあるという点です。
全員が真面目に考えていても、視点がどうしても似通ってしまい、「なんとなく皆がそう言っているから」という空気で決まってしまうことがあります。そんなときに役に立つのが、外部のセカンドオピニオンです。
外部の専門家を「壁打ち相手」として使う
私のところにも、定期的に
- 「こう考えているのですが、この方向性で合っていますか」
- 「社内では賛成意見が多いのですが、外から見てどう思いますか」
といった相談が届きます。
こちらからは、
- 「一般的にはこういう考え方が多いです」
- 「この前提が抜けているように感じます」
- 「この条件なら、まずはここから試してみるのが現実的です」
といった形でコメントを返しますが、それをそのまま鵜呑みにしてほしいとは思っていません。むしろ、
- 社内の意見
- 外部の専門家の意見
を材料にしながら、自社なりの折衷案をつくっていく会社ほど、結果として強くなると感じています。
方向性を決めて、次の一歩を一緒に具体化する
外部の専門家とやりとりをしていると、次のような流れになることが多いです。
- 現状と課題、やりたいことを共有する
- 実現可能性や優先順位を一緒に整理する
- 「まずはこれをやってみよう」という一歩目を決める
- どの数字が変われば成功といえるかをすり合わせる
例えば、
- どのページのどの数値(アクセス数、問い合わせ率など)が変わるはずか
- その数値を正しく取得できる環境が整っているか
といった点は、専門的なサポートがあったほうがスムーズです。一方で、
- 社内でどんな動き方をするのか
- 誰がどこまで担当するのか
といった部分は、どうしても社内でしか決められません。その役割分担をはっきりさせながら進めていくと、実行フェーズも動かしやすくなります。
高額な定期研修だけが選択肢ではない
こうした「日常的な壁打ち」の場を持つために、必ずしも高額な定期研修を契約する必要はありません。私のところでも、いちばん負担の少ないライトなプランであれば、10万円未満の費用感で相談いただけるようにしています。
その範囲でも、
- 日々の気づきを共有してもらう
- 方向性が合っているかどうかを確認する
- 数値の見方や、次の一手の決め方を相談する
といったことは十分に可能です。そして、そのやりとりを社内の簡単な勉強会や研修に発展させていくと、お金を大きくかけずに、日常の延長線上でスキルアップの仕組みが作れます。
「常に学べる状態」をつくるための実践ステップ
ここまでの話を、実際のステップとして整理してみます。
ステップ1:自分の購買行動を記録する
- 社員一人ひとりが、日常の中でウェブで何かを選んだとき
に、簡単でかまわないので次のような項目をメモします。
- どんなものを探していたのか
- どのサイトを見て、それぞれどう感じたか
- 最終的に選ばなかったサイトと、その理由
ステップ2:月に1回、気づきを共有する
- 月に1回程度のペースで、15〜30分でも良いので共有の場を作る
- それぞれの「選ばなかった理由」を出し合い、自社サイトに置き換えて考えてみる
ここで大事なのは、正解を出そうとするのではなく、視点を増やすことです。
ステップ3:自社サイト・施策へのフィードバックに変える
- 共有した気づきの中から、自社サイトで改善できそうな点を1つだけ選ぶ
- その改善で「どの数字が変わりそうか」を決めておく
- 小さく試し、結果をまた皆で振り返る
このサイクルを回していくことで、「研修を受けるとき」だけでなく、普段の仕事そのものが学びの場になっていきます。
ステップ4:外部のセカンドオピニオンを組み合わせる
- 社内で出たアイデアや方針に対して、定期的に外部の専門家の意見を聞く
- 完全に丸投げするのではなく、「材料の一つ」として取り入れる
こうすることで、
- 社内だけで暴走してしまうリスクを減らす
- 「この方向で進めて良いのか」という不安を軽くする
といった効果が期待できます。
おわりに:機会がないのではなく、機会の捉え方を変える
「デジタルスキルやWebマーケティングのスキルを上げる機会がなかなか作れない」と感じているとき、
- 高額な研修やセミナーに参加すること
- 立派な教材をそろえること
ばかりが「機会」だと思いがちです。
しかし実際には、
- 自分がウェブで何かを探し、選び、時にはやめる、その一つひとつの場面
- 社内メンバーと「なぜそれを選んだのか」「なぜ選ばなかったのか」を話す場面
- 外部の専門家に「この方向で合っていますか」と聞いてみる場面
もすべて、スキルアップの機会になります。
単発の研修は、そのきっかけを作る上では意味があります。ただ、大事なのはその後、どれだけ日常の中で考え続けられる場を作れるかです。
もし、今回の話の中で「うちの場合はこういう状況だけど、どう考えれば良いのか知りたい」といった具体的な疑問があれば、ぜひ遠慮なく相談してください。現場での経験も踏まえながら、一緒に次の一歩を考えていければと思います。
関連リンク
FAQ
- Q1. Webやデジタルマーケティングのスキルアップの機会がなかなか作れません。何から始めれば良いですか?
- A. まずは「特別な機会」を増やそうとするのではなく、日常の購買行動を学びの素材にすることをおすすめします。自分が商品やサービスを選ぶときに、どのサイトを見て、どこで不安を感じて、最終的に何を選んだか・何を選ばなかったかをメモしていくだけでも、顧客目線の感覚が養われていきます。
- Q2. 社内研修や外部セミナーを受けても、すぐ内容を忘れてしまいます。どうすれば定着しますか?
- A. 重要なのは「受けた後に、どれだけ反芻とアウトプットをするか」です。聞いた内容を自社の状況に当てはめて考え直し、疑問点を整理し、社内や外部の専門家とやりとりすることで、初めて知識が自分のものになります。レポート作成やミニ勉強会など、言語化する場をセットで用意すると定着しやすくなります。
- Q3. 予算に余裕がなくても、従業員のデジタルスキルを上げる方法はありますか?
- A. 高額な定期研修だけが選択肢ではありません。日常の購買行動の記録や社内での共有会など、ほとんどコストをかけずにできる取り組みは多くあります。必要に応じて、10万円未満の範囲で利用できるようなライトな相談プランを外部に持ち、方向性の確認だけをお願いする方法も現実的です。
- Q4. 自分たちだけで考えていると、方向性が不安です。外部のセカンドオピニオンは必要でしょうか?
- A. 社内だけで議論していると、真面目に取り組んでいても視点が似通い、気づかないうちに偏った方向に進んでしまうことがあります。外部の専門家を「壁打ち相手」として使うことで、「大きく外していないか」「他に見落としている視点はないか」を確認でき、社内の議論の質も上がりやすくなります。
- Q5. 日常業務の中で、ウェブマーケティングの「目線」を鍛えるコツはありますか?
- A. ひとつのコツは「頭の中で実況する」習慣を持つことです。自分がサイトを見ているときに、「ここで離脱する人が多そうだ」「この一文があるから次を読みたくなる」といった実況を心の中で行ってみてください。その視点をメモし、社内で共有していくことで、自然とプロのマーケターに近い目線が育っていきます。
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