第534回:Web担当者が見つからないとき、外部パートナーと社内に判断力を育てるには

中小企業を強くするWebマーケティングPodcast — ラウンドナップWebコンサルティング 中山陽平

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

今回は、「デジタルマーケティング、Webマーケティングの専門知識を持つ人材が、どうしても不足している」というご相談についてお話しします。

私が社内研修や外部の研修でいただいたご質問には、その場ですべてお答えしきれず、蓄積してきたものがあります。改めて分類してもらうと、人材やスキル、予算やリソース、戦略や計画など、大きく10項目ほどに分かれました。その中から、まずは人材に関するご質問を取り上げます。

「デジタルの進化が早くて、専門家を育てる前に技術が変わってしまう」「需要が多いのに詳しい人が少なく、争奪戦になっている」「採用しようとしても高いし、そもそも思ったような人が来ない」。こうしたお悩みは、確かによく伺います。

ただ、人が取れないから駄目なのではなく、取れない前提で回る仕組みを作っていく。まずは、ここへ考え方を変えていただきたいと思っています。

求めているWeb人材は、営業に置き換えても採用できる人か

Webマーケティングといっても、リアルのマーケティングやセールスと基本的には同じです。皆さんは、どんな人材像をイメージしていますでしょうか。

結構多いと感じるのは、デジタルやWeb、IT全般に知見があり、SEO、広告、SNS、コンテンツの活用も一通り分かっている人です。しかも実際にやったことがあり、自分でも動ける。解析を設計してPDCAを回し、どう改善すればいいか判断できて、最新情報も追いかけている。これくらいが平均で、みんなそういうものだと思っていないでしょうか。

これを、普段の営業やマーケティングに置き換えてみてください。アウトバウンドもインバウンドも分かり、業界ごとの攻め方を知っている。DMやチラシなどの営業施策を押さえ、最新のトレンドも分かり、チームを率いて改善を回せる。そんな人を雇うのは、ものすごく大変だと思いませんか。

そもそもそういう人は少ないですし、いたとしても企業が簡単に手放すわけはありません。それなりの待遇も受けているでしょう。私の感覚では、普通に採用活動をしていて出会える人ではないんですね。

もちろん、人づてに「いい人が、会社でいろいろあって辞めたんだよね」と聞いて、「じゃあ、うちの話を聞きに来てよ」とつながる可能性はあります。ただ、そういう人ほど、一般の転職市場へ出てくる前に次の話が決まってしまいます。

市場で探すのであれば、特定の分野に強い人や、全体のマネジメント、プロジェクトを回してきた経験がある人など、一本、二本の強みを持った方を考えることになります。社内でずっと仕事をしていて外とのつながりがあまりなく、自分から転職市場へ出て次を探す、というケースもあります。

「専門知識を持つ人材がいない」とおっしゃるとき、無意識にスーパーマンのような人を求めていないか。ここは一度、見直した方がいいと思います。

Webは専門性の高い、狭い世界だから、そこで仕事をしている人は全般を網羅しているだろう。そんな思い込みもあるのではないでしょうか。今来てほしいと思っている人を、普通の営業やマーケティングの人に置き換えたとき、現実的に採用できる人なのか。まずはそこを考えてみてください。

何でもできる人がいなくても、事業が回る仕組みを作る

時代とともに変化が早いのは、デジタルだけではありません。お客様がみんなネットだけで物事を判断しているかというと、そんなこともないですよね。

むしろネットは情報が多すぎて、真剣に集中して見てもらいにくくなっていると感じます。リアルで接点を持った方が効率のいい場合もあります。ネットが特別に効率的だったり、穴場が残っていたりするという話ではなく、ネットを通じて触れられるお客様と、それ以外で接点を持てるお客様がいるということです。

Webを、良くも悪くも特別視しないで考えてほしいんです。

一般的な企業に、スーパープレイヤーばかりの営業部やマーケティング部があるわけではありません。これは悪く言っているのではなく、みんながそれぞれ持っているスキルをうまく組み合わせ、活用しながら結果につなげているわけですよね。

Webも同じです。いろいろな得意分野を持つ人、今は知識がなくても吸収が早い人。そういう人たちを組み合わせて回していけるところが強いと考えてください。

いい人材がいないと勝てない会社は、すごく弱いです。その人が優秀であればあるほど、どこかへ行ってしまう可能性があるからです。言い方は悪いのですが、ほどほどの人材でもうまく回せる仕組みを作れる会社の方が強いんですね。

市場価値の高い人を採れないから駄目なんだ、とそこで思考停止してしまうのは、少し問いがずれていると私は思います。採れない前提で、どう回していくかを考えた方がいいです。

詳しい人が「ここで働きたい」と思える環境にする

回る仕組みができて、会社としてWebを活用できるようになると、スキルのある人にとっても魅力的な現場になってきます。

「あそこは、もともと詳しい人ばかりだったわけではないのに、うまく回しているらしい」と人づてに聞けば、「自分が入ったら、もっとこんなことができるのでは」と興味を持ってもらえることもあります。

ある程度経験を積んだ人が避けたいのは、会社がWebやITの活用に及び腰で、自分が動けるようになるまでに、文化を作るところからものすごく努力しなければいけない職場です。

理解がなければ社内の目も冷たく、ストレスがたまります。高いお給料も望みにくいし、もらったらもらったで周りの目が気になる。そういうところには、やはり行きたくないですよね。

私が関わった会社でも、取引していた代理店や制作会社の方が退職した際、「御社で働かせてもらえませんか」と事業会社側へ移るケースがあります。これは会社として魅力があるからこそです。外部の立場で関わっていた人にも、働きやすそうだと思ってもらえる状態になっているわけです。

人を採れるようになるところまで、会社の環境を作っていく。これは担当者だけでなく、経営層を含めた課題です。人が採れないことだけを問題にするのではなく、問題の焦点を考え直していただきたいんですね。

最初の到達点は、自社で「発注と検収」ができること

では、どうすればいいのか。一足飛びの成功を期待せず、失敗もしながら前向きにやっていくしかありません。手前味噌にはなりますが、自分たちだけでは効率が悪いところは、外部の力を借りた方がいいと思っています。

新人を育てるときも、受け入れた後にOJTなどで教育するプロセスが必要ですよね。でも、教えられる人が社内にいないのであれば、まずは外部に求めた方が効率はいいはずです。

ただし、自分たちで試行錯誤するのが好きな文化の会社もあります。そういうところに無理に外部を使えと言うつもりはありません。企業文化に反すると、うまくいくはずのことが全然うまくいかなくなる。これは私もずいぶん経験しています。合わないのであれば、自分たちがやりやすい方向で頑張るのも、全然いいと思います。

そのうえで、私は一つの目安として、自社で発注と検収ができるところを、最初のステージのゴールにしましょうとお伝えしています。

発注とは、何を目的にするのかを考え、要件を定義し、複数社へ相談したうえで、どこへ依頼するか判断できることです。

検収は、企業研修の「研修」ではありません。出来上がったものがOKかどうかを判断する、検査の「検」に収めると書く「検収」です。

例えばホームページが出来上がり、「これでいいですか」と言われたとき、本当にそれでいいのか、問題がないかをチェックできることです。最後の確認だけではありません。途中で「ここはどうしましょう」と聞かれたときに判断したり、制作会社や代理店、コンサルタントが気づいていない問題を指摘したりできることも含みます。

専門的なことは分からなくても、「物を売るという立場から考えると、ここはどうなのでしょう」と発言できればいいんです。

専門用語より、自社とお客様の立場で話せるようになる

発注と検収のために、HTMLが書けなければいけないとか、システムに詳しくなければいけないとか、そういうことではありません。知識はあった方がいいですが、必須ではないことに注意してください。

違う専門家同士でやり取りをするのですから、専門的な部分は相手に翻訳してもらうことが前提です。皆さんは、皆さんの観点で言いたいことを伝えればいいんです。

例えば、「こういうお客様が検索してきたときに、ちゃんとここが出る仕組みになっているのでしょうか」と聞く。システム的にどうだから、SEOではこうだから、と話す必要はありません。自社の立場、もっと言えばお客様の立場から話せれば、それでOKです。

多くの場合、「何をしていいか分からない」「何を頼めばいいか分からない」「もらったものが良いか悪いか分からない」というところから始まりますよね。それをクリアした状態が、発注と検収のできる状態です。

専門知識を全部学ぶ必要はありません。物事を伝える力と、WebやITは大体こういう流れで動いている、という全体の理解があればいい。ここまで来たら、一度自立してみてもいいのではないかと、私もコンサルティングの中でお伝えすることがあります。

自社に判断力がつくことを歓迎するパートナーと組む

その人材を一人育てるところまでは、社内に判断力がつくことを好ましいと思ってくれる相手と、一緒にやった方がいいです。

制作会社などの中には、発注側に詳しい人がいると面倒だと感じる会社もあります。「これでOKですから検収してください」と言ったら、そのまま「はい」と言ってくれる方がありがたい、という会社ですね。

もちろん、「本当にこれでいいのか、意見を聞きたいのに出てこない」と感じている、きちんとした会社もあります。ここは強調しておきます。皆さんが判断できるようになることを、良いことだと思ってくれる会社と組んでほしいんです。

例えば制作会社へ依頼するときに、「こう言われたのですが、どう思いますか」と一緒に考えてもらう。そんなパートナーと二人三脚で、OJTのような形で関わっていく。一緒に実務を進めながら、自分たちで発注と検収ができるところまで行くことを目指します。

期間で言えば、1年もあれば随分変わるのではないかと思います。そこまで来たら、そのまま二人三脚で続けてもいいですし、一度自分たちで頑張ってみてもいい。まず、そこへ行きましょう。

その過程で、社内の状況も変わってきます。そして、やっている人一人に属人化させず、複数の人でチームとして共有していく。そうすれば会社の雰囲気や文化、Webに対する扱いも変わります。売上が発生すれば、かけられる費用も変わってきます。

私が見てきた中小企業で、ホームページやSNSなどを使って継続的に成果を出しているところは、こういうことをひたすら続けています。外へ丸投げしているわけではなく、こうしたステップを踏んで、普通にWebやデジタルを活用できる会社になっていくんですね。

時間がかかるからこそ、始めて続ける判断が差になる

外に丸投げして毎回頼む形ではコストもかかりますし、相手から受け入れにくい条件を出されたら、それで立ち行かなくなることもあります。いい人を連れてきて、その人に頼りきっていた会社も、その人が急にいなくなると困ってしまう。優秀な人ほど、その可能性はあります。

会社としてプロセスを踏み、半年単位、年単位でじわじわ進めていく。現実としては、そういうことをお伝えしたいんです。

こう言うと、すごく後ろ向きな話に聞こえるかもしれません。でも、こういう話をすると、やらない会社が多いんですよ。「すぐには無理なのか。じゃあ、いいところが見つかるまではいいや」となってしまいます。

だから、「時間はかかるかもしれないけれど、やっていこう」と実行に移した時点で、続ける方を選んだこと自体が、他社との差になっていくと思っています。

セミナーを聞いた後に実行する人は少なく、それを1年間続ける人はさらに少ない、という話を聞くことがあります。具体的な割合が適切かどうかは私には分かりませんが、聞いて終わるか、その後も動くかで違いが出るのは、私もお客様と関わる中で感じるところです。

「なんだ、時間がかかるのか」と思うより、「これをやったら差がつくんだ」と考えていただきたいですね。

外部の人に任せるだけで、自社に何も残らない状態を避ける

この話は、少しやりづらい面もあります。人材を紹介したり、外部の人を派遣したりして、その間のマージンで商売をする会社もあります。そういうところへ頼めば、自分たちで育てずに済むと考える方もいるでしょう。

ただ、私は自社に何も残らない形はお勧めしません。仲介の費用もかかるので、十分なコストをかけなければ、期待する相手に当たりにくいと感じます。

うちも過去にそうした会社を使ったことがあります。名前は出しませんが、結果は完全に失敗でした。お客様にずいぶん迷惑をかけてしまったので、私はもう使わないと決めています。全部が全部そうではないと信じたいですが、自分の経験としてはそうなんです。

自分の商売の、売上や利益を生むところを、外へぽんと丸投げしてしまうのはおかしいと思っています。会社を動かす源になるところですから、自分たちの中で育てていくべきではないでしょうか。

普通の営業やマーケティングも、1か月、2か月で高い水準に仕上げるのは難しいですよね。Webも同じように、年単位の計画で育てていく。その先に、専門知識を持つ人が自然と来てくれる会社を目指す。これが、私の真面目な回答です。

外部の専門家から吸収し、人材が来てくれる会社を目指す

私が多くの中小企業を見てきた中では、本当に自分たちで頑張れるところが強いです。ただ、最初のスタートダッシュは、専門会社と一緒にやった方がいい。そこで吸い尽くすくらいのつもりで、一緒にがむしゃらにやっていってほしいと思っています。

うちのお客様でも、関わり方には濃淡があります。毎日いろいろなことを聞いてくる方と、こちらから水を向けないと聞かない方。どちらが伸びるかと言えば、やはり、いろいろと聞いてくる方です。

当時のうちのオンラインコンサルティングでは、基本的に質問を受ければ回数を限らずお答えしていました。そういう機会にどんどん食いついて、自社が成長するために使っていただくのがいいと思います。

結局、うちのようなところを選んでくださいという話に聞こえるかもしれません。ただ、私はそれがいいと思って、このサービスを続けてきました。十何年も前に始めた頃は、チャットなどで行うオンラインコンサルティングは一般的ではありませんでしたが、今は同じような形の会社もあります。うちでなくても、合うところが見つかる可能性は十分にあると思っています。

「専門知識を持つ人材が不足している」というお悩みに対しては、そもそも、そんな人は簡単には採れないと考えた方がいいです。その人たちが来たくなる会社になるために、専門家の伴走を受けながら、自分たちで会社の文化や仕事の進め方を変えていく。

人材の争奪戦をするより、人材が来てくれる会社を目指しましょう。会社全体を変えるには、3年、5年という計画になることもあると思います。

その途中で、どうしても急がなければいけないことが出てきたら、二人三脚でやっている会社は皆さんのことを分かっています。そこで相談し、調整しながらプロジェクトを立てていけばいいんです。

すぱっとした回答でも、魔法の回答でもありません。ただ、現実として、そういう会社が成果を出していることは、ぜひ押さえていただければと思います。

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