第555回: 顧客理解から始めるウェブ戦略、AI Overview時代の検索との付き合い方

GoogleがAI OverviewやAIモードを出してきて、検索結果の中だけで答えが完結するケースも増えています。こうしたAI検索の時代に、中小企業として「SEO」や検索経由の集客をこれからどう考えればよいのでしょうか?

この回を聞くと分かること

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

この記事では、AI OverviewやAIモードのような新しい検索体験が広がる中で、これからウェブからどうやってお客さんと出会い、反響につなげていくのかというテーマをお話しします。 「SEOが死ぬかどうか」という議論よりも、顧客理解を起点にウェブ戦略を組み立てることが大事だ、というのが全体のメッセージです。

この記事を読むと、次のようなことが整理できます。

  • AI OverviewやAIモードが広がる中で、検索との付き合い方をどう考えればよいか
  • 「SEOが死ぬ・生きる(SEO is DEAD)」という話題に振り回されないための考え方
  • テクニック先行のSEOから、顧客理解起点のウェブ戦略へシフトするポイント
  • 検索エンジン・広告・SNS・オフラインなど、チャネルをまたいで考える視点
  • Why → What → How の順番で施策を組み立てるときの基準

顧客理解から始めるウェブ戦略、AI Overview時代の検索との付き合い方

AIモード・AI Overviewで変わる「検索の風景」

ここ最近、ChatGPTをはじめとしたさまざまなAIツールが一気に身近になりました。 Googleも、Geminiを使った検索のAIモードや、従来型の検索結果にAIが要約を表示するAI Overviewなどを公式に提供しています。

そうなると、当然の疑問として、

  • 検索結果の画面の中でほとんど答えが出てしまって、自社サイトに来てもらえないのではないか
  • これからどうやって検索経由でお客さんを連れてきて、問い合わせや資料請求につなげればよいのか

といった不安が出てきます。

実際、AIモードによるさまざまな出力によって、いわゆるゼロクリックサーチが増えるということです。 ユーザーは検索結果ページ上のAIによる回答や、そこに表示される情報だけで疑問が解決し、ウェブサイトをクリックしないまま完結してしまうケースが増えていきます。

問題は、そのときにどこにどう露出すべきか、そしてどんな条件で自社サイトに誘導されるのかが、まだはっきり見えていないことです。 検索の仕様だけでなく、AIの新しいモデルの登場なども含めて、全体の「風景」は数週間から1〜2カ月くらいのスパンでどんどん変わっていきます。

このスピード感を考えると、「AIモードでは将来こういう画面になるはずだ」「だから今からこう準備しておけば10年安心」といった、細かい仕様に寄せた中長期の計画を立てるのはかなり難しい状況です。 ですから、どのような形になっても価値のあることをやるという前提で考えておく方が現実的です。

「SEOが死ぬかどうか」は本質ではない

では、これからSEOをどう捉えればよいのでしょうか。 最初にはっきりさせておきたいのは、よくある 「SEOが死ぬのか、まだ通用するのか」という議論は、本質ではないということです。

なぜかというと、「SEO」という言葉自体が、人によって意味するところがバラバラだからです。 その曖昧なラベルを前提に「SEO対策として何をしようか」と考え始めてしまうと、スタート地点からズレてしまいます。

昔のSEOは「検索エンジンハック寄り」だった

20年、25年前くらいのSEOは、今と比べるとかなりテクニカル寄りでした。 当時は、いわば検索エンジンハックのような話題が中心でした。

たとえば、

  • ページ内の単語の出現頻度をどれくらいにするか
  • 「共起語」をどれだけ含めるか
  • H1タグをどう使うか

といった、検索エンジンの仕様を前提にしたノウハウがよく語られていました。 「検索エンジン最適化」という字面のとおり、検索エンジンのためにサイトを調整するテクニックとしてSEOが扱われていた時期があった、というイメージです。

GoogleはテクニックだけのSEOから「ユーザー志向」へ

当然ですが、Googleとしては、テクニックだけで検索結果をコントロールされるのは好ましくありません。 そのため、

  • 「検索エンジンだけを見た『いわゆるSEO』はやめましょう」
  • 「検索エンジンではなく、ユーザーの方を向いてください」

というメッセージを発信しながら、アルゴリズムも少しずつ変えてきました。 内部的には、テクニカルな要因だけでなく、ユーザー行動や満足度をより重視する方向に進んできたと考えられます。

この流れの中で、「SEO」という言葉の意味は人によってバラバラになり、 「テクニックの名前」としてのSEOと、「ユーザー向けの情報設計」を含む広い意味でのSEOが混在するようになりました。

だからこそ、「SEO対策として何をやるか」から考える発想自体をいったん手放すことをおすすめしています。

「SEOとして」ではなく「検索する人のために」から考える

キーワードよりも「検索している人」の状況を見る

では代わりに、どう考えればよいでしょうか。 ポイントはシンプルで、「SEO」という言葉をいったん忘れることです。

そのうえで、

  • 検索をしている、あるいは何かを調べている人は、どんな状況にいるのか
  • その人たちに対して、自分たちができる一番良いことは何か
  • 自分たちが果たさなければならない役割は何か

といった問いからスタートします。 この順番で考えていくと、自然と施策の方向性が見えてきます。

チャネルは検索だけではない

こうした視点で見ていくと、「検索エンジン」というチャネルだけにこだわる必要はなくなります。 むしろ、

  • 検索広告
  • SNSや動画などのソーシャルメディア
  • セミナーやイベント
  • メールマガジン
  • その他のローカルな経路

といった、さまざまなチャネルが候補に上がってきます。

共通しているのは、「お客さんが何かを探す」という行動です。 そのときに、

  • どこで
  • どんな形で
  • どんな情報を用意して

待ち構えていれば、自分たちを選んでもらえるのか。 この観点で考えた結果、たまたま従来型のSEO施策になることもあれば、まったく別の施策になることもあります。

「SEOとして新規参入する」発想をやめる

実際の現場でも、このギャップをよく感じます。 無料相談や社内外のセミナーなどで、

「SEOとして今から新規参入したいのですが、何をしたらいいですか」

というご質問をいただくことがあります。 そのときにまずお伝えするのは、 「SEOとして」考えるのをやめてみましょうということです。

代わりに、

  • お客さんはどこから来ているのか
  • 何かを調べるとき、どんな気持ちで、どれくらいの情報量を求めているのか
  • 最初に知りたいことは何で、その後にどんな疑問が湧いてくるのか

といった流れを整理していきます。 そうすると自然に、

「それなら、こういう場所で、こういう形で露出できていればよいよね」

という答えが見えてきます。

昔は「この順位にいるだけで意味があった」

昔であれば、

  • 「この検索キーワードで、このあたりの順位にいれば、第一候補として覚えてもらえなくても、とりあえず名前だけは記憶に残る」
  • 「その積み重ねが、後々良い結果につながる」

といった感覚で、検索順位そのものに価値がありました。

今であれば、もう少し違う考え方になります。 たとえば、

「ユーザーがディープリサーチを始めたとき、そのテーマに関する情報源のひとつとして、自社のコンテンツがきちんと出てきた方がよい」

といったイメージです。 そこから逆算して、「では何をしておくべきか」を決めていきます。

ビジネスの原点に立ち返る

本来のビジネスは「顧客理解」から始まる

そもそもビジネスというのは、本来こうした流れで動いているはずです。 決まりきった定石があるわけではなく、

  • 現場で何が起きているのか
  • お客さんの頭の中でどんなことが起きているのか

を地道にリサーチして把握し、それに合わせてさまざまな施策を打っていく。 これがビジネスの基本です。

そう考えると、ここ20年ほどの「テクニカルな部分をいじると、比較的簡単に反響が取りやすい時代」は、ビジネスの長い歴史の中ではかなり特殊な時期だったとも言えます。

今は、その特殊な時期が終わりつつあり、原点に戻って、お客さんのことをきちんと見ながら施策を考える段階に来ているととらえた方がしっくりきます。

テクニックだけで集客してきた会社が苦しくなる理由

ここでいったん、「手段に頼ってお客さんを取ってきた会社」の話もしておきます。 かなりベタな話なのですが、SEO的なテクニックの巧みさだけでうまく露出できていた会社は、すでにかなり厳しくなっているケースが多いと感じます。

Googleの検索順位が下がってしまい、他にうまい手が打てず、 別の「儲かりそうなサービス」に手を伸ばしていく、といった動きも見受けられます。

テクニックだけに頼って集客している会社は、この先かなり苦しくなる可能性が高いというのは、リアルの世界でも変わらない感覚です。

顧客理解を後回しにしてきたなら、いまが見直しどき

もし、

「顧客理解などをきちんとやらないまま、ここまで走ってきてしまったな」

という感覚が少しでもあるなら、いまはしっかり見直しておいた方が良いタイミングです。 AIモードやAI Overviewのような大きな変化が起きている今こそ、顧客理解を棚卸しするチャンスだととらえた方が、後々のリスクを減らせます。

「What」と「How」を分けて考える

まず「何をやるか(What)」までを決める

実際に手を動かす前に、まずやるべきなのは、「何をやるか(What)」までをきちんと考えることです。

たとえば、

  • お客さんの悩みを整理して、情報提供コンテンツを増やすのか
  • 比較検討の段階で不安になりやすいポイントを補うのか
  • 既存のお客さんとの関係を深める仕組みを整えるのか

といったレベルの話です。 この段階では、まだ「SEOかどうか」「広告かどうか」といった手段には踏み込みません。

次に「どうやるか(How)」で手段を決める

そのうえで、「どうやるか(How)」を考えます。 ここで初めて、

  • これは検索エンジン対策としてやるのか
  • コンテンツマーケティングとして記事や動画を作るのか
  • 広告やSNSを絡めるのか

といった手段の話になってきます。

この「What」と「How」を分けて考えるだけでも、テクニック先行で迷子になるリスクはかなり下げられます

「何をやるか」という部分は、専門家の意見が役立つ場面も多いので、 ここは外部のコンサルタントなどに相談してみるのもひとつの選択肢です。

Why → What → How で考えるということ

なぜそれをやるのか(Why):方向性と戦略

最後にもう一段、整理しておきたいのが、Why → What → How という順番です。 大きな流れとしては、次のように考えます。

  • Why(なぜやるのか):どんな目的・状況のための施策なのかを決める(方向性=戦略)
  • What(何をやるのか):その目的のために、どのような作戦を取るのかを決める
  • How(どうやるのか):具体的にどんな戦術・武器(SEO、広告、SNSなど)を使うかを選ぶ

この順番が逆になってしまい、最初から

「SEOのテクニックで何かできないか」

と考え始めると、どうしても手段ありきの発想になってしまいます。

テクニックを否定しているわけではない

ここまで聞くと、「テクニックを否定しているのかな」と感じるかもしれませんが、そういうことではありません。

たとえば、

  • お客さんのニーズをどう把握するか
  • お客さん自身が言語化できていないモヤモヤを、どう言葉にしてあげるか
  • そのためにどんなコンテンツをどの順番で出していくか

といったところには、当然ながら多くのテクニックがあります。 私自身、コンサルティングの現場ではそうしたノウハウを使いながら、落としどころを一緒に探しています。

ただ、従来のSEO業界はテクニック先行で考えてしまいがちでした。 これからは、

  • まず Why で戦略を考え
  • 次に What で作戦を決め
  • 最後に How で戦術や武器を選ぶ

という順番で考えていかないと、AIモードやAI Overviewのような大きな変化の波に、なかなかついていけなくなります。

ここまで、少し駆け足でお話ししてきましたが、 「SEOが死ぬかどうか」というラベルの議論から一歩離れて、顧客理解を起点にウェブ戦略を組み立て直すきっかけになればうれしいです。

関連リンク

この記事の内容と関連が深い、公式ドキュメントやヘルプページをまとめました。

※すべて Google 公式の情報源です。

FAQ

AIモードやAI Overviewが広がると、SEOはもう意味がないのでしょうか。
いいえ、「意味がない」と考える必要はありません。 大事なのは、SEOというラベルそのものではなく、検索やリサーチをしている人に対して何を提供できるかという視点です。 画面の仕様が変わっても、ユーザーが「何かを探す」という行動自体は続きます。そのときに、どこでどんな情報を用意して待ち構えるかを考えることが、本質的なSEOといえます。
これから新しくSEOに取り組む場合、まず何から始めればよいですか。
「SEOとして何をするか」から考えるのではなく、お客さんがどこから来て、どんな気持ちで、どんな情報を求めているのかを整理するところから始めるのがおすすめです。 そのうえで、「こういう場面で、こういう形で自社が見えていると良い」というゴールを決めると、必要な施策(検索結果での露出なのか、コンテンツ作成なのかなど)が見えやすくなります。
顧客理解はどのように進めればよいでしょうか。
特別なことをするというよりも、現場の動きやお客さんの頭の中で起きていることをできるだけ具体的に把握することが大切です。 実際の問い合わせ内容や、よくある質問、商談の中で出てくる不安や迷いなどを丁寧に拾っていくと、「どのタイミングで、どんな情報が必要とされているか」が見えてきます。
検索エンジン以外のチャネル(広告やSNSなど)はどう考えればよいですか。
検索エンジンは今でも大きなチャネルですが、広告・SNS・セミナー・メールマガジンなどもすべて「お客さんが探す場所」と考えられます。 どのチャネルを使うかは、「自社のお客さんが実際にどこで情報を探しているか」「どのタイミングで接点を持ちたいか」を基準に選ぶと良いです。
Why → What → How の順に考えるメリットは何ですか。
最初にWhy(なぜやるのか)を決めることで、施策の方向性がぶれにくくなります。 次にWhat(何をやるのか)で作戦レベルの方針を固め、最後にHow(どうやるのか)で具体的な手段を選ぶことで、テクニックだけが先走ることを防げます。 結果として、SEOや広告といった「武器」を、ビジネス全体の戦略ときちんと結びつけやすくなります。

タイムスタンプ

  • 0:00:09 – はじめに
  • 0:00:23 – 今の時代のSEOとは?
  • 0:00:43 – AIによる検索の変化とSEOへの影響
  • 0:03:12 – 「SEO」という考え方からの脱却
  • 0:05:14 – 顧客視点での情報発信の重要性
  • 0:06:46 – 新規参入者が陥りがちな誤解
  • 0:07:59 – ビジネスの本質と顧客理解
  • 0:09:33 – SEOの生死よりも大切なこと
  • 0:12:53 – 戦略・作戦・戦術の重要性
  • 0:14:35 – まとめと過去のコンテンツ紹介

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