第566回:AI・デジタル活用を 浸透させる7つのポイントとは?『The Digital Culture Challenge』レポート紹介

Podcastの概要

中小企業のWeb活用でつまずきがちな“経営と現場のギャップ”を前提に、行動に結びつくKPI、チェンジエージェント、小さな実験の回し方を具体的に示します。

Web活用の「最初の一歩」に関するよくあるご質問

Q1: なぜ高価なデジタルツールを導入しても、社内に浸透しないのでしょうか?
A1: 技術やツールの問題ではなく、企業の「文化」や「行動意識」が変わっていないことが最大の原因と考えられます。新しいツールを受け入れ、活用するための土壌となる企業文化を見直さない限り、本当の意味での変革は定着しません。
Q2: デジタル化を進めたいのですが、経営層と現場の社員とで意識がズレている気がします。どうすれば良いですか?
A2: 意識のギャップは多くの企業が抱える問題です。まず経営層がデジタル活用のロールモデルとなり、現場の意見を積極的に取り入れるボトムアップの仕組みを作ることが重要です。双方がオープンに話せる文化を醸成することから始めましょう。
Q3: デジタル変革を成功させるために、具体的にどんなことから始めれば良いですか?
A3: まずは「顧客志向」や「データに基づいた判断」「新しいことへの挑戦を許容する雰囲気」など、7つの重要な要素を意識することから始めましょう。全てを一気に行うのではなく、KPIの見直しや、プロセスを評価する制度の導入など、できることから着手するのが効果的です。
Q4: 社員から新しいアイデアや意見が出てこないのですが、どうすれば活発になりますか?
A4: 意見をオープンに言える「心理的安全性」の確保が不可欠です。「意見を言ったら担当させられる」といった風潮をなくし、どんな意見もまずは受け止める姿勢を経営層が示すことが大切です。年齢や経験に関わらず、フラットに議論できる場を作りましょう。
Q5: 部署間の連携がうまくいかず、データや情報が共有されません。何か解決策はありますか?
A5: 部署ごとに目標が異なり、協力すると自部署の評価が下がるような仕組みになっていないか見直す必要があります。会社全体で協力することのメリットを示し、部署横断の目標設定や、協力姿勢そのものを評価する仕組みを取り入れることが有効です。

なぜAIやDXは社内に浸透しないのか?最大の障壁は「企業文化」

AIやDX、あるいはデジタル系の取り組みが、なかなか会社に根付かない。こうしたお悩みを持つ経営者や担当者の方は少なくないのではないでしょうか。この問題は日本特有のものなのか、それとも世界的な課題なのか。企業の変革を阻む要因を探る中で、示唆に富むレポートを見つけました。

今回は、フランスのグローバルなコンサルティング企業キャップジェミニ社が発表した調査レポート「The Digital Culture Challenge」を元に、企業のデジタル変革について考えていきます。このレポートの結論を先にお伝えすると、「多くの組織は、デジタル技術を導入しても、文化や行動、意識を変えない限り、変革は定着しない」というものです。

経営者と現場に横たわる「深刻な認識ギャップ」

このレポートは約1500社を対象にした調査に基づいており、デジタル変革がうまくいかない最大の障壁は「企業文化(カルチャー)」であると指摘しています。そして、そこには経営層と従業員の間に大きな認識のギャップが存在するといいます。

例えば、経営層は「うちはかなりデジタル化に対応できている」と考えていても、現場の従業員は「全然使いやすい状況になっていないし、仕組みもない」と感じているケースが多く見られます。このギャップがある限り、部門を横断したデータ連携や共同作業は進みません。

大切なのは、優れた技術やツールを導入すれば何とかなる、という考え方から脱却することです。会社としての文化や行動規範を整え、「こういうツールは自由に使って良い」「我が社はAIをこのように活用していく」といった明確な方針と仕組みを示すことが、変革の第一歩となります。

デジタル文化を定着させるために必要な「7つの要素」

では、具体的にどのような文化を育てていけばよいのでしょうか。レポートでは、デジタル文化を醸成するための7つの重要な要素が挙げられています。

  1. 顧客志向
  2. イノベーション
  3. データ駆動
  4. オープンさ
  5. 共同
  6. デジタル思考
  7. 機敏性

1. 顧客志向

まず、すべての中心に「お客様」を置く考え方です。自分たちがどうしたいかではなく、「お客様にとってどうあれば嬉しいか」という視点から、自社がどう変わるべきかを考えることが全ての出発点となります。

2. イノベーション(新しいことを試す)

新しい挑戦を後押しする空気があるかどうかは、極めて重要です。特にAIのような大きな変化の波が来ている今、1、2年の遅れが致命的なビハインドになりかねません。会社として「まずは試してみよう」というマインドセットを持つことが求められます。

3. データ駆動(データで判断する)

これは、単に数字を分析することだけを指すのではありません。職人やベテラン営業担当者などが持つ「経験」や「勘」といった、俗人的な知識や無意識のノウハウを、きちんと「言語化」し、組織の共有財産にしていくプロセスが重要です。なぜその判断をしたのか、なぜその手順なのかを解き明かし、データとして誰もが活用できる形にしていくことが求められます。

4. オープンさ(意見をオープンに言える)

年齢や経験に関わらず、誰もがフラットに意見を言える環境は、デジタル文化の土台となります。何か意見を言った際に否定から入るのではなく、まずは「そういう考え方があるのか」と受け止める姿勢が大切です。特に、「発言した人が担当させられる」という文化は、自由な発想を阻害する大きな要因です。

5. 共同(部門間で協力する)

営業、製造、カスタマーサポートなど、顧客との接点を持つ各部門は、それぞれ異なる貴重な情報を持っています。しかし、部門ごとのKPI(目標)が壁となり、協力することがかえって自部門の評価を下げてしまう、といったケースも少なくありません。会社全体として、部門間の協力を促す目標設定や評価制度を設計することが不可欠です。

6. デジタル思考(まずデジタルで考える)

何か業務を行う際に、「まずデジタルツールで効率化できないか」と考える習慣です。2回以上繰り返す作業は、最初に仕組み化する手間を惜しまないことが、長期的に大きな生産性の向上に繋がります。目の前の作業を手でこなす方が早いと感じても、一度立ち止まって仕組み化を検討する文化が大切です。

7. 機敏性(柔軟に動ける)

状況の変化に応じて、柔軟かつ迅速に行動できる組織であることも重要な要素です。

成功企業が実践している具体的なアクション

いわゆる「フロントランナー」と呼ばれる成功企業は、これらの7つの要素を文化として根付かせるために、具体的な施策を行っています。その例をいくつかご紹介します。

  • 評価制度の見直し:結果だけでなく、新しいことに挑戦したか、他部署と協力したかといった「プロセス」を評価項目に加える。
  • 経営層のロールモデル化:経営層や管理職が自らデジタルツールを使いこなし、変革を主導する姿勢を示す。
  • ボトムアップの仕組み:現場の意見を吸い上げ、経営に反映させる仕組みを構築する。
  • スキルアップへの投資:従業員が新しいスキルを学ぶための研修や、外部パートナー(顧問など)の活用に投資する。

特に評価制度の変更は、従業員の行動を変える上で分かりやすく、効果的な手段の一つかもしれません。

まとめ:技術導入の前に、まず組織の土壌づくりから

今回の内容をまとめると、デジタル変革とは単に新しい技術を導入することではなく、「会社の中の文化、行動、意識をどう変えるか」が本質であるということです。「あのツールがあればうちも変われるのに」と考えているうちは、本当の変革は訪れません。

これは、どの企業にとっても簡単なことではありません。しかし、見方を変えれば、従業員数が少なく意思決定の速い中小企業こそ、こうした文化変革に取り組みやすい環境にあるとも言えます。人材確保が難しい今だからこそ、従業員満足度を高め、生産性を上げるための組織づくりに取り組むチャンスです。

最初から完璧を目指す必要はありません。まずは自社の現状を把握するためのアンケートを取ってみる、評価項目に少しだけプロセスの観点を加えてみるなど、できることから一歩ずつ着実に進めていくことが重要です。地道な土壌づくりこそが、将来の競争力を支える最も重要な資産となるのではないでしょうか。

出典と注記

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代表取締役・コンサルタント 中山陽平

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