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今回の内容について
今回は、Web戦略やホームページ制作の際に、製作側・支援側からよく聞かれがちな質問「御社の強みは何ですか?」について。
この切り口の質問は、経験上今の時代の戦略策定は、ほぼ使えません。10年前くらいまでなら良かったのですが、2010年代に入ったら限界が来ました。
なぜでしょうか?そして、代わりにどう考えればいいのか?詳しくはご覧下さい。
詳しくは、この動画か、iTunes/Googleの音声ポッドキャストをお聞き下さい。
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YouTubeにて動画にて配信しています。内容自体は同じです。お好きな方をご覧下さい。
エピソード詳細
目次
テーマ:Web戦略において、強みは何ですか?という切り口は、今の時代ほぼ意味が無い
ビジネスで重要になる部分の一つである「強み、差別化」というものについて、今の時代に合った考え方をお伝えします。これは当社がコンサルを行う中でもお話することです。
例えばHP制作や営業の何らかを外に頼もうと思った際に皆さんが聞かれることの中に、「他と違うところは?」「差別化要因は?」「強みは?」というものがあると思います。
端的に言うと、これは非常に良くないということをお伝えしたいのです。強みを出して差別化をして比較検討してもらってその軸に合う人を取っていくというやり方は、10年前くらいまではうまく機能していました。しかし2010年代になると通用するケースは非常に少なくなってきている印象です。
2000年代、2000年代後半、2010年代で分けられます。現状としてなぜそれが考え方として良くないかというと、自社と同じような商売をやっている他社は商圏内のどこかにはあり、どこも似たような強みを打ち出しているからです。まず単純に商圏内でHPを持っていない会社が減って、ほとんどの会社が一応持っている状況があります。HPという形でなくても何らかのポータルには登録していて、当然その中で自社アピールをするようになりました。
実際に商売で圧倒的に優れた部分を持つ会社はほんの一握りしかありません。そういう会社であればその部分をひたすら押し出していけばよいのですが、たいがいはそうではありません。地道にやってきた会社は、今までのつながりがあったり、お客様としては満足度が十分あったので今まで利用し続けてくれたという状況だったりすることが当たり前です。
その中で強みを聞かれて改めて他社と比較した時に、自社は人に言えるような強みはないということになってしまいます。どちらかと言うと今から新しくHPを作ってこれから頑張って営業していこうという会社に限って、今までご縁で商売が回ってきたせいもあり、エリア内でマーケティングをしっかり行うという荒波にもまれようとしている時に、自分たちのアピールポイントの少なさを痛感することが多いです。
制作会社や広告代理店のやり方は大抵2種類に分かれます。一つは、とは言えそこしかないのでということで強みを出していくケースです。もう一つはHPからの集客は諦めましょう、というケースです。諦めるケースのほうは、スピードや費用で攻めていくしかないという話に安易に落とし込んでしまうこともあります。
早い、安いを売りにする覚悟があり、マーケットがそれを受け入れられる状況であれば良いのですが、だいたい厳しいです。小さい企業がやるとしたら、新規でそこを攻めていくとたいてい疲弊してしまいます。売上は上がったとしても利益率は低く、なかなかもうからず廃業してしまうケースのほうが多いです。
もう一つ「それしかないからそれを押していきましょう」とうケースです。当然比較検討された時に、どの会社も同じことを書いていることになるので、他の要因で比較されることになります。それで勝てれば良いのですが、負けてしまうとどうしようもありません。
よほどの資産を持つ会社でない限りは、こうなってしまうのは仕方のないことです。昔はHPを持っている会社はたくさんあったけれど、マーケティングを考えていないので強みは一切書かずに、会社案内だけを載せていたりしました。ですからきちんとマーケティングを考えて、お客様の必要な情報をそろえていこうということで強みを出していた会社は少なかったので、ぼんやりとした強みでも判断基準として成立していました。
さらにさかのぼって2000~2005年だと、そもそもHPを持っている会社が多くなかったので、ネット検索する人には選ばれやすい状況でした。ところが2010年代になり、当たり前のようにマーケティングを考えてHPを作るようになってくると、当然そもそも持っている企業の強みで勝負せざるを得なくなりました。
その結果、「今自社は実はそんなに人に言えるような強みはない」と気づいてしまったのです。ではどうしたら良いのでしょうか。支援する側でなかなか方向性が見えていない会社さんは、取りあえず「今の強みは?」という質問をぶつけてしまい、なければ仕方ないという流れになってしまいます。
1年後に持っていたい強みを意識する
よく私が使う例えがあります。パーティーの料理を作ろうとする時に、今冷蔵庫にある食材だけで考える必要はありません。1カ月後や2カ月後に何を作ろうか考える時に、冷蔵庫の中だけを見て何ができるかを考えるのは非常にアホらしいです。
それと同じことなのです。現状皆さんが強みと言えるものや差別化要因を持っていないのであれば、「半年や1年後に自社がどういう強みを持てていれば勝つことができるか」というものを考えます。当然それは荒唐無稽なものではなく、実現可能なものでなくてはいけません。
その時に経営者が考えるべきはケーパビリティ、つまり企業が現在中に持っている資産、こういう人がいる、こういう機械がある、こういう経験をしてきた、人脈がある、会社としてこの方向に行くならきっと皆が手伝ってくれる・・・こういったことです。
自社の強みを作っていくために使える資材(人も含めて)がどんなものなのか。それを踏まえて、アプローチしたいお客様をきちんと考えて、どういうお客様にどういう価値を半年後、1年後に提供したいのか。だからこれからこういう強みを作っていけるように準備をして、サービスを立ち上げる、もしくは内部改革をしていこうと考えと良いです。
今の強みを無理やり作り出してそれを1年後も持ち続けるというのは、マーケティング的には非常に良くないことです。そうではなくて常に
次はこういう強みを出していけば勝てる
だから1年後にこういう姿になるよう、1年間こういう強み仕事をしていこう
その間HPは一時的な姿として今出せるものを出して、できる限り営業フィードバックを入れたり、お客様の不安を取り除いたりという基本的な部分をカバーしていき、その上で1年後にこういう姿になれるようにしていこう
このように考えるのです。
HPを今作る時に、必ず未来を見なくてはいけません。そう考えて活動していってください。一番良くない例を挙げます。HPをきちんと考え直してみたら、当社は人に言えるような強みがないから作っても意味が無さそうな気がする、と言って1年が過ぎてしまうことです。
本当はその時点で、この先生き延びられるかを考えることができたら、1年後には相当良いものができているはずです。もくろみがどれくらい当たるかは分かりませんが、他社に勝っていくことができるわけです。このように自社のストレングス部分を考える際には必ず、今勝てないなら無理に何かをするよりも、1年後にどうなりたいかを考えて、そのために1年間走ってください。
もっと大事なのは、1年後には絶対まわりも変わっているので、これを毎年や半年ごとにくり返すことです。外部環境を見て、「あの会社も同じ動きをしだした」「全然違う会社が入ってきたが、当社とぶつかりそうだ」ということに気づいたら、途中で軌道修正が必要です。何かを加える、あるいはやめるということを考えながら調整します。
それでうまくいったら、さらに勝てるようになるためにはということを考えます。うまくいかなかったのなら、なぜうまくいかなかったのかを考えて、次目指す位置を決めていきます。このように進めてください。
WEB戦略全体でもそうですが、それを行った瞬間に何らかの効果が出ることを期待してしまいがちです。既存のHPの改善というかたちで、しかもテクニック論、例えばSEOが全然ダメだったとか、広告の出し方が悪かったということがあれば、やり方の改善によって30しか伝わっていなかった皆さんの価値を100伝えられるようにすれば、当然成果は上がります。
しかしそうではなくて、既にそれなりにやっているところですぐに成果が上がることを求めるのは、なかなか難しいです。3カ月、半年、1年先を見ながらじっくりと、皆さんの会社と一緒に戦略もHPも育てていくイメージを持たないと、これからはうまくやっていけないと思います。
常に先を読んで変化させることも大事
周りが皆さんのことを「ここは頭一つ飛び出ているな」「最近お客さんを持っていかれているな」と気づいたら、必ずチェックされます。そうしたら同じようなことをコピーしてきたり、あるいはそれを超えるような何かを仕掛けてきたりします。それを見越して次の一手を、できるだけ早いスパンで回しながら事業を成長させていくのが基本です。
最初の話題に戻りますが、いきなり強みや差別化要因を聞かれても、現状出ません。そういう会社さんはマーケティングに疎いのかもしれません。明確に強みがあるケースもあるので、当社でももちろんそういう話はします。それがあってもなくても、1年後にどう発展させていけば良いかを考えて一緒に育てて、一緒に成長していくようなスタンスです
そうしないと勝てません。お客様の考え方もどんどん変わりますし、悲しいかな人口動態もどんどん変わります。エリア内の年齢層も変わっていくので、5年後10年後を考えたら、今のうちにその先の業務転換まで考える必要があります。ぜひそういう考え方で、強みや差別化要因というものを立体的に捉えていただきたいです。
そういう時にHPは便利です。なぜなら、形ができるからです。社内で経営方針、経営計画を立てることは重要ですが、明文化されている文章だけでは、自社がどういう方向に行くのかということはなかなか分かりづらいです。そこでHPという分身を作ってあげることで形ができるので、そこを見ることで、「自社はこういう方向性で、自分たちはこういうことを頑張らなくてはいけないのか」ということが分かりやすくなります。そういう作り方をすると、HPはとても便利です。
年末年始は来年どうするかということを考える時期だと思います。ぜひこういうやり方でやっていけるような体制を整えてください。