第583回:タイパ重視のユーザーに対してやるべき事は?|良いことばかり書いても売れない時代のWeb戦略

第583回:タイパ重視のユーザーに対してやるべき事は?|良いことばかり書いても売れない時代のWeb戦略

 

この記事で得られること(要点)

次の3点です。いずれも「何を書くか」ではなく、「どの順番で伝えるか」を見直すための視点です。

  • 今の消費者が、商品・サービス選びの初期段階で何を確認しているのか(足切り条件)が分かる
  • メリットを先に並べるだけでは生まれやすい違和感と、その回避方法が分かる
  • 販売ページや営業トーク(トークスクリプト)に、どう落とし込めばいいかの考え方が分かる

今回のテーマ:比較検討情報は「何から」出すべきか

今回のテーマは、比較検討に必要な情報をどの順番で提示するかです。言い換えると、「まず魅力を伝えるのか」「先に不安や条件を整理するのか」という話になります。この順番を見直すだけで、反応が大きく変わるケースが増えています。

なぜ今、「売れづらい」と感じるのか

率直に言って、今は物が売れづらくなっていると感じる場面が多いのではないでしょうか。これはB2B(企業間取引)でもB2C(一般消費者向け)でも共通です。これまで効果があった施策が、ここ数年で効きづらくなっていると感じている方も少なくないはずです。

たとえば、同じチラシの打ち出しでも反応が鈍くなったり、Web上でも「今の訴求が本当に届いているのか分からない」と感じたりすることがないでしょうか?問い合わせの際に聞かれるポイントが変わってきた、という変化を感じているケースもあるでしょう。要因はさまざまですが、今回はその中でも「情報の出し順」に焦点を当てて考えていきます。

従来の定石は「メリットを積む→最後に条件」だった

これまで一般的だったのは、まず「魅力的な情報」をしっかり伝えて興味を高め、その後で価格や制約などに触れる流れ。広告用のLP(ランディングページ)は特に、この構造になりやすいですし、商品紹介ページでも似た形が多いと思います。

この考え方は、良い点を十分に伝えれば、多少のハードル(価格が高い、導入が大変など)があっても納得してもらえる、という前提に立っています。ただ、この順番自体が、今の消費者心理と少しずつズレてきていると感じています。その背景にあるのが、「できれば選びたくない」という感覚。

今の消費者は「できれば選びたくない」

今の消費者は、不安を強く感じやすい傾向があります。大きな成果を狙うよりも、「失敗しないこと」を優先したいという気持ちが前に出やすくなっています。無駄な時間を使いたくない、余計な思考や出費を増やしたくない、という感覚です。

この意識は、タイパ(タイムパフォーマンス)やコスパ(コストパフォーマンス)といった言葉にも表れています。突き詰めると、「ムダを避けたい」「判断にかかるコストを下げたい」という発想です。そのため、メリットを読む前に「自分の条件に合っているか」をまず確認しようとします。

「選ぶため」ではなく「検討対象から外すため」にまず比較検討する

商品やサービスを比較検討する際、お客さんは必ずしも上から順に丁寧に読んでいるわけではありません。まずは自分の中で譲れない条件を探し、検討対象から外すための判断をしています。その条件がクリアできて初めて、「検討する価値がある」と感じてもらえます。

たとえば、お客さんが早い段階で確認したい条件の例は、次のようなものでしょうか?まず確認しておきたいことと言う観点で。

  • 金額はどれくらいか(この範囲に収めたい、という基準)
  • 購入形態や縛りはどうか(サブスクは避けたい、契約期間の縛りがあるかなど)
  • 導入後に必要な工数はどれくらいか(工数を割きたくない、考えることを増やしたくない)
  • 社内外への説明コストはどうか(選んだ理由を細かく説明する必要があるか)

ページは上から順に読まれない:ザッピングの正体

ページを見るとき、多くの読者は全体をざっと確認します。一見するとざっと見ているだけで「ちゃんと読んでいない」ように見えます。ザッピングですね。しかし経験上、これは実際には必要な情報を探しているケース多いと思います。ページの中からまず確認しておきたい前提条件の部分を探しているわけです。

ヒートマップやマウストラッキングを見ると、勢いよく下までスクロールしている人がいます。流し見に見えても、本人は「譲れない条件」に関する情報を探しています。条件が分からない状態が続くと、不安になり、疑いながら読み進めてしまうのです。

後出しは「早く言ってくれよ」を生む

条件がページの後半にまとめて出てくる構造は、悪いユーザー体験になりやすいです。なぜなら、良い点を読んで期待が高まった後に、価格や制約、必要な工数が出てくると、「思っていたより高い」「そこまで手間がかかるのか」と感じがちだから。売り手に悪意がなくても、読み手はがっかりしてしまいます。

その結果、「それなら最初に教えてほしかった」と感じます。これがよくない。

このがっかりは、購入を見送るだけで終わりません。本来であれば他の人に紹介してくれる可能性があった商品やサービスでも、紹介されにくくなります。場合によっては、良くない印象だけが残ってしまうことも。

先に条件を見せると、読んでもらえる人が増える

なので今の時代はむしろ「足切りになりやすい条件を先に、自然な形で提示」しましょう。「価格はこのくらいです」「こういう条件があります」「こういう作業が必要になります」と事実を整理して伝えるだけで十分です。大切なのは、読者が探し回らなくても判断できる状態をつくることです。

また、条件が分かると、人は意外と落ち着いて検討できます。条件が完全に一致しなくても、「この条件なら一度読んでみよう」と、心を少し開いて読み進めてくれる事も多いです。その結果、一定の割合で「多少条件は厳しいけれど、価値がある」と判断して選ばれるケースも出てきますので、拾えることもある。

いちばん避けたいのは「メリットだけでごり押し」

最も避けたいのは、都合の悪い情報を伏せたまま、良い点だけを並べて押し切ろうとする形です。これは、今の消費者が特に嫌がりやすいパターンだと感じています。だからこそ、条件を先に示し、納得した人が続きを読む流れが、現在の現実的な定石になりつつあります。

不安が強い時代ほど、「最初に判断材料」がほしい

値上がりが続く中で、消費行動はどうしても慎重になります。Deloitteが公表している「2025 Holiday Retail Survey」では、ホリデー商品の値上がりを予測する人が77%、翌年は景気が悪化すると見ている人が57%という数字が紹介されていました。こうした空気感が強いほど、最初の判断材料を先に示すことの効果は高まります。

同様に、PwCの「Holiday Outlook 2025」でも、今後6ヶ月で支出を抑える必要があると考える人が84%という調査結果が紹介されています。購入に慎重な人が増えるほど、「検討のムダ」を避ける動きが強くなり、情報の出し順がより重要になります。

また、バイナウ・ペイ・レイター(BNPL:Buy Now, Pay Later)の市場が伸びている点も示唆的です。社会的な議論はありますが、見方を変えれば「多少予算を超えても、納得すれば買う人がいる」ということでもあります。だからこそ、最初に必要な情報を整理したうえで、評価・検討してもらう設計が欠かせません。

情報の並べ方を整理する

ここまでの話を整理します。ポイントは「メリットを削ること」ではありません。「条件を前に出し、安心して読み進められる状態をつくる」ことです。情報の順番ひとつで、読み手の受け取り方は大きく変わるからです。

並べ方 読み手の状態 起きやすいこと
メリットを先に出し、足切り条件は後半 条件が分からず疑いながら読む 後出しでがっかりしやすい
先に条件を示し、その後でメリット 判断材料が揃い、落ち着いて読める 「読む価値がある」と感じてもらいやすい
条件を隠し、メリットだけでごり押し 不信感が強まりやすい 今の消費者に敬遠されやすい

実務での見直しポイント:ページと営業トークに落とす

商品紹介ページでも、サービス紹介ページでも基本は同じです。

キャッチコピーや主な魅力は示しつつ、必要な情報は早めに分かるようにした方が、結果として下まで読まれやすくなります。

「こういう人に向いている」「こういう場合は別の選択肢の方が合うかもしれない」といった書き方は、かなり有効です。読者が自分ごととして判断しやすくなるからです。

イメージ・例としては見直しの際は、例えば次のようなポイントが分かりやすい位置にあるかを確認してみてはどうでしょうか。それぞれの商品やサービスに合わせて頂ければと思います

  • 価格・料金の目安(どこを見れば把握できるか)
  • 購入形態・契約条件(縛りや更新、サブスクかどうか)
  • 導入後に必要な工数(何を、どれくらいやる必要があるか)
  • 検討時に迷いやすい前提条件(対応範囲、対象外になりやすいケース)
  • 「合う人/合わない人」が分かれるポイント(説明が必要になりやすい点)

お客さんに聞いて、ページとトークスクリプトへ反映する

検証も重要です。お客さんへヒアリングしてみてください。そこで得た声を、サイトや営業トーク(トークスクリプト)に反映させていくと、改善につながりやすくなります。

生の声はたいていの場合「予想外」です。

※インタビューでは、次のような質問が等をしてみて下さい。嬉しかった点だけで終わらせず、「不安だった点」を丁寧に拾うことが重要です。

  • 最初にどこが気になり、どんな順番で確認しましたか
  • 良い点以外で、不安に感じたところはどこでしたか
  • 「これは先に分かって助かった」「先に知りたかった」と思った情報は何ですか
  • 検討をやめようと思った瞬間があるとしたら、何がきっかけでしたか
  • 社内外に説明する場面で、説明しづらいと感じた点はありましたか

まとめ

今の消費者は、できれば選ぶ手間そのものを減らしたいと考えています。そのため、比較検討では「選ぶ」前に「検討対象から外す」行動が強くなり、まず足切り条件を探しています。販売ページや営業トークも、その判断材料を先に渡す設計に変えるだけで、反応が変わることがあります。

メリットを伝えること自体が悪いわけではありません。条件を後出しにして期待を裏切ってしまう流れが、結果的に損になりやすい、という話です。まずは、自社のページで「お客さんが最初に気にすること」がすぐに見つかるかどうかを点検してみてくださいね。

関連リンク

FAQ

比較検討の情報は、なぜ「出す順番」が重要なのですか?
今は、以前効いていた施策が効きづらくなり、問い合わせで聞かれるポイントも変わってきています。お客さんが最初に気にする条件を先に示すだけで、読む姿勢が変わりやすいからです。
消費者が「できれば選びたくない」と感じるのは、どんな背景からですか?
失敗したくない気持ちが強く、無駄な時間や判断コストを避けたい傾向があるからです。タイパやコスパという言葉の流行も、その価値観の表れだと中山は捉えています。
販売ページは、上から順に読まれていないのですか?
上から丁寧に読むというより、全体を走査しながら必要な情報を探す動きが多いと中山は見ています。ヒートマップやマウストラッキングでは、下まで一気に動く行動が見えることもあります。
先に出すべき「足切り条件」とは、どんな情報ですか?
金額の目安、購入形態や縛り、導入後に必要な工数など、譲れない条件を判断するための情報です。これが先に分かると「検討のムダではない」と思って読み進めやすくなります。
ページ改善のために、どんなインタビューをすればいいですか?
最初に気にした点、確認した順番、良い点以外の不安点などを聞くのが有効です。得たフィードバックを、サイトや営業トーク(トークスクリプト)に反映すると改善が起きやすいと中山は話しています。

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