中小企業・小規模事業者は大企業と異なり、人材にまつわる悩みが大なり小なりあるかと思います。人は足りないが、自分たちだけでなんとかなっているうちは考えないようにしようと、問題を先送りにしているケースもあるでしょう。
しかしどの職種でも人が思うように集まらないのが現状です。
そこで今回はWeb・デジタルの観点で「フリーランスなど外部人材の活用」のポイントについてお伝えできればと思います。
前提:良化する兆しの見えない人材不足
もともと新卒も大企業に入りたがるなど、人を採りづらかったところに新型コロナが来襲。
リモートワークなどの体制を早急に整えたり、福利厚生を大々的にアピールしたりできる大企業の人気がより高まったのは言うまでもありません。
また、そもそも人口オーナス状態であり少子化で従業員の高齢化は進んでおり日本として直面している問題が「働き手不足」です。
2022年の「第164回中小企業景況調査」P10にある「産業別従業員数過不足DI」を見ると、新型コロナ期に事業縮小あるいはストップなどのため一時的に人材過剰になっていたものの、それまでは常に0%以下の不足状態、落ち着いてきた今は、またマイナスに落ちています。
参照:https://j-net21.smrj.go.jp/report/smrjsurvey/tsdlje0000001alv-att/164th_houkokusho.pdf
中小企業白書でも、経営者の後継者問題などとともに長年課題として掲載されていたトピックスであり、それは今でも変わっていません。そして波が変わることはないでしょう。大企業に流れていた人材が急に中小企業に流れてくるとは考えづらいです。
外部人材の活用は年々やりやすくなっているが…悩みもある
外部の人材を活用しやすい環境は年々整ってきています。
背景としては
- コロナ禍の中でリモート勤務に関するサービスが一気に加速進化した、手に届く価格帯になった
- ターゲット拡大のために、リモートで行えるサービスを提供しはじめた企業が増えた
- ネット回線の高速化、モバイル回線の高速化・低価格化が進んだ
- 副業に対しての世間の評価がポジティブになってきた
などがあるでしょう。
外部のリモート系サービス活用や、様々な理由で退職してしまった元従業員の方がリモート時短勤務で復帰するなどの取り組みは、体感としても相当広がっています。
特に外部のリモート系サービスやフリーランス活用をまだ行ったことがないという方は、ぜひ何かで一度使ってみることをまずはお勧めします。一回使うと見えてくるものが変わります。
個人的想定ですが、これができる会社とそうでない会社はどんどんと差がついていくと思っています。なぜなら、会社を動かすのは何より人であるからです。
人というリソースをうまく使えることで、中小・小規模事業者の武器である「柔軟性」「加速力」が強く発揮されるからです。
…
しかし、やはりそこには悩みもつきものですね。
「何を準備すればいいのだろう」「どう探せばいいんだろう」あるいは「どう指示出しなどをすればいいんだろう」などの質問はよく受けます。
今までにない就業形態ですので、最初からスムーズに行かないのは当然です。
しかし、これができるようになると、将来の社内人材に関する悩みをかなり軽減することができます。受付対応・経理・事務・Web制作・入力業務などをサービスやツールを使って工数をゼロにし、自社の従業員をコアとなる業務やプロジェクトに集中させることも可能です。
では、どうすればスムーズに活用できるのでしょうか?
今回の結論
結論としては、フリーランスなど外部人材を活用するためには以下が重要です。
- 【発注・検収】業務やビジネスを再度俯瞰し「何を」「なぜ」「何を得たい」かを明確化しておく
- 【発注】目的や目標を外部人材と共有するなど、対等な仲間として接する
- 【発注】どのような手段や道のりで行うかは外部人材と相談しながら決める
- 【検収】何となくではなく、それが目的に合っているかに沿って判断して評価・検収する
です。
これができていれば、大きくずれることはないと思います。特に専門領域を外に任せるときは「目的・目標」「求めるもの」はこちらでキープした上で、やり方は専門家サイドに提案してもらうことをお勧めします。それが外の人材を使う醍醐味です。
※コピペ作業や単純作業などの、作業ベースを依頼する場合は除きます。その場合は発注も検収も定量的に判断すれば済みからです。
また、フリーランス活用でうまくいく例としてプログラム系をよく聞きます。これも成果物が分かりやすいからでしょう。また発注元もそこそこITスキルがある場合が多いので、要件定義書をきちんと作り、納品物のチェックもきちんとできてうまく回るケースが多いのだと思います。
一方でデザイン等感性的要素の強い職種や、マーケーター、販促手伝い、イラストレーション等である程度長いスパンで成果の見極めが発生するものについては、企業さん側の発注がなかなかうまくいかないという問題があるようです。
しかしそういうところこそ、外部化したかったりするわけですよね。
なぜそれが大事なのか?
曖昧なまま依頼しても、良い成果物は返って来ない
自分たちが何を依頼したいのか、そしてそれによって何を実現したいのかを明確にしないまま「作業ベース」で外部に依頼している事がよくあります。その場合うまく行かないケースが多いです。
なぜだめなのか?経験上のポイントをピックアップします。
- 外部人材(フリーランスでも元社員でも)は、みなさんが何を求めているかを汲み取れないと思って接したほうが良いです。実際には経験で汲み取れたり、質問してくれて汲み取ってくれる人もいますが、それはレベルが高い人材であり、端的に言えば「人気」で「高い」です。
- そもそも「何を」「なぜ」「何を得たい」かは、発注側が明確にすべきです。そうすることで、それを満たしているかという「検収」ができるからです。
- 明確にして共有することで、フリーランスの方は経験からおすすめを提案してくれます。手段は外部人材に相談する前提のほうが良いです。(提案してくれない人は避けたほうが良いです)
私自身、フリーランスとして「誰かの懐刀」を目指して仕事をしていた10-20年前は、そのあたりを汲み取ることに腐心していました。質問ばっかりしていました。
そうしないと、自分が持っている引き出しの中で、これがいい!という提案ができないからですね。
目的を明確にしたら、手段は任せるのがポイント
「手段を任せつつ、目的を明確にすることで、フリーランスなどの外部人材の力を最大限に引き出せる」んです。
わからないことは都度聞いて、と丸投げする前提だと「作業代行」以外はうまくいきません。
プロなんだからそういうところもうまくやってよ、と思われるかもしれません。
それはその通りなのですが、やはり理想論です。
また、それができる外部人材であっても積極的に発注者側が情報を提供したり、目的や目標を進んでシェアしてくれたほうが動きやすいですし、その分アウトプットにもプラスの影響が起きます。モチベーションも上がります。
外部に限らず内部の依頼も同様・相乗効果が
これは外部の人材に関わらず社内での依頼にもつながりますよね。
「あいつは言われたことしかやらない!」という言葉の背景には「マイクロマネジメントするから、言ったとおりにやらないとダメ出しされるからそうなってしまっている」など。
なので、外部人材をうまく使えていればそれをスライドさせることで内部での依頼の品質も上がります。
それは突き詰めていけば、会社としてのミッションやお客様に何を届けたいのかと言った上位の企業理念にもつながっていくものです。
であれば、足並みをそろえる、自社にあった人材が育つ、リファラルで採用できる、文化に合わない人を炙り出せる、などにもつながっていくでしょう。
このあたりは広げるときりが無いですね。
使える企業と使えない企業の差は開いていく
Webやデジタルを活用するために外部人材を使っていく、フリーランスや外部伴走支援サービスなどを使っていくことは今の時代の流れにも合っており、良い方向性です。
ただその際は、ただの作業代行にならないようにしないと思ったような成果物を受け取れないでしょう。そのためには、発注者であるみなさんが、まずは目的・目標を明確にし、それを実現するためという流れで依頼できるようになる、そのような人材を育成することをお勧めします。
距離は遠いけれども、仲間だという意識でやり取りをしていただくのが良いですし、それができるパートナーという観点で、探してみてはいかがでしょうか。
どこで探せば?
探す場所としては、フリーランスであれば検索してWebサイトを見る、スキルマーケット(クラウドワークスやランサーズ、ココナラなど)を見ていただいても良いと思います。知り合いのつてでも良いのではないでしょうか。そこはあまりこだわらなくて良いと思います。
ただ、クラウドソーシング系は依頼が基本的には公開されますので、外に見られたくないものには向いていません(一応、閲覧制限がかけられる有料オプションはありますが)中間マージンもあります。
反面、評価が見える化されていたり、スキルセットがわかりやすかったり、支払い周りに保証があったりなにかトラブルがあったら介入してもらえたり(※ケースによります、だめなこともあります)しますので、そのあたりは天秤にかけてください。
ご不安な方は、企業としてサービス提供しているところのほうが、丁寧に教えてもらえるかと思います。いわゆる商売ですので。
関連情報
それ以外にもフリーランス活用・外部活用についてはトピックスがあります。よろしければこちらもお聞きください。日本では数少ない「使用者側(経営者側)」の労働事件や労働法、企業法務に詳しい、杜若経営法律事務所 の弁護士「向井蘭」先生をゲストにお迎えし、対談させて頂きました。
中小企業・小規模事業者の方々に向けて、ウェブの活用やホームページの戦略などについてWebコンサルティング、施策代行実施などを行っている、株式会社ラウンドナップ代表取締役の中山陽平です。中小企業のWeb活用をサポートし、そこからの反響獲得を実現させています。→プロフィール詳細はこちらから