近年、従来の「マーケティングファネル」モデルが現代の消費者行動に合致しなくなっています。AIDMAやAISASといった直線的な購買プロセスを前提としたモデルでは、実際のユーザー行動を正確に捉えることが難しくなっているのです。本記事では、その背景と企業が取るべき新しいアプローチについて考えて行きます。
ファネルモデルが捉えきれない現代の消費者行動
従来のファネルモデルは、消費者が広い認知段階から徐々に興味・関心を深め、比較検討を経て購買に至るという一直線のプロセスを前提としています。
代表的なフレームワークであるAIDMAやAISASなどのように、消費者が段階的に認知から購買へと直線的に、ですね。
しかし、現代の消費者行動は多様化・複雑化し、このようなモデルでは捉えきれなくなっています。
企業側は、ユーザーがしっかりと比較検討し、慎重に意思決定をしていると想定しがちです。しかし、実際にはそのようなプロセスを踏まないケースが増えています。
その背景としては
- 情報収集の多様化: インターネットやSNSの発達により、消費者は様々な情報源から情報を得ることができるようになり、一足飛びに情報にアクセスすることも多くなっている。
- 比較検討の基準の多様化: 消費者は、価格や機能だけでなく、価値観やライフスタイルなど、様々な基準で商品やサービスを比較検討するようになっている。
- 購買プロセスの複雑化: 偶然の出会い(たまたまおすすめされた、担当者と気が合ったなど)や、周囲の人からの影響など、予測不可能な要素が購買の決め手となるケースが増えている。
といった状況があります。
具体例で見るファネルモデルの限界
偶然の出会いが購買に繋がるケースが増えている
最近では、偶然目にした情報や、その場のタイミングで購買を決定する消費者が増えています。
- 具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- たまたまSNSでおすすめ商品を見かけた
- お店で店員に勧められた商品が気に入った
- 知人から良い評判を聞いた
これらのケースでは、消費者は積極的に情報収集や比較検討を行っていたわけではなく、偶然の出会いがきっかけとなって購買に至っています。
偶然の出会いが購買に繋がる背景
では、なぜこのような現象が起きているのでしょうか?以下の様な要因が大きいです。
- 情報過多: インターネットやSNSの発達により、消費者は日々膨大な情報にさらされています。そのため、意識的に情報収集することに疲弊を感じ、受動的に情報を受け取る傾向が強まっています。
- 口コミの影響力: 消費者は、企業からの情報よりも、友人や知人からの口コミを信頼する傾向があります。SNSなどで偶然目にした口コミが、購買を後押しすることも多くなっています。
- パーソナライズ化: AI技術の発展により、消費者は自分に合った情報や商品をレコメンドされる機会が増えています。偶然出会ったレコメンドが、購買意欲を高めるケースも考えられます。
比較検討を省略する消費者の増加
詳細な比較検討を行わずに購買を決定するケースも多く見られます。以前はエクセルで比較表を作成するなど、慎重に情報を集めていた消費者も、今では直感や簡単な情報で意思決定をする傾向があります。
情報過多や時間不足などの理由から、比較検討に時間を割くことへの抵抗感が高まっていると考えられます。
AIサーチの普及と検索行動の変化
GoogleのAI検索(SGE)やチャットボットの普及により、消費者の情報収集方法が大きく変わっています。従来のように検索結果のリストから情報を選ぶのではなく、AIが提供する要約や回答をそのまま利用しつつ、自然な日本語でやりとりする行動が増えつつあります。
この流れが進めば進むほど、上位表示されているウェブサイトでさえも、ユーザーの目に触れにくくなっていく可能性が十分考えられます。
チャットボットがサイト内回遊行動に与える影響
また、サイト内でのユーザー行動も変化しています。情報を探すためにサイト内を回遊する傾向はどんどん低くなっています。
従来のWebサイトは、訪問者がサイト内を回遊し、様々な情報に触れることを前提に設計されていましたが、情報過多の現代において、このアプローチは効果を失いつつあります。
また、書いてあることをそのまま受け入れるのではなく、疑問の目線を持ちつつ見る傾向があります。
例えば「強み」や「他社との違い」といった王道コンテンツは、もはや素直に吸収してもらえないのです。消費者は分かりやすく見せつけられた情報ではなく、真実を探したいと思っています。
しかし問題があります。そんな情報を探すのは非常に骨が折れるということです。しかしAIの発展とともに様々なツールが出てくることで、そのニーズが満たされるケースが出てきています。
例えばチャットボットです。人間が対応するのではなくシナリオ式あるいはトレーニングしたAIで返答を返す物です。
チャットボットに直接質問して情報を得ようとするユーザーが増えています。なぜなら知りたいことをダイレクトに聞くことができるからです。
これにより、サイト内のページビューや滞在時間は減少していますが、ユーザーは求める情報を迅速に得られるようになっています。
企業が今取り組むべき戦略とは
顧客インサイトの深掘り
企業は、従来のファネルモデルに頼るのではなく、自社の顧客がどのように情報を収集し、意思決定を行っているのかを深く理解する必要があります。
顧客の行動や心理を分析し、それぞれのニーズに合わせた情報発信や顧客体験を提供するためには、顧客インタビューやアンケート調査、ウェブサイトのアクセス状況分析など、様々な方法を駆使する必要があるんですよね。
柔軟なマーケティング施策の構築
得られた顧客インサイトに基づき、テンプレートにとらわれない柔軟なマーケティング戦略を構築することが求められます。顧客のリアルな行動に合わせた施策を展開することで、より高い効果が期待できます。
特にAIはハマる可能性があります。AI技術は、顧客ごとにパーソナライズされた対応を提供する上で強力なツールとなりえます。レコメンド機能やチャットボットなど、AIを活用したサービスは強い武器となり得るため、情報のキャッチアップと試用をお勧めします。
顧客との接点の多様化に対応していく
ウェブサイト、SNS、チャットボット、リアル店舗など、顧客との接点を多様化し、それぞれのチャネルに合わせた情報発信ができるとよいです。お客さんはどのタイミングでニーズを思い出すか分からないからです。
顧客は様々な場所で情報に触れているため、それぞれの状況に合わせたコミュニケーションをとることができると強いです。ただ、非常に大変です。情報発信は言うのは簡単ですが、行い続けるのは非常に大変です。
無理に初めて継続出来ないのが一番信頼を失います。やるなら一生続けるつもりで、仕組みを作っていきましょう。できないなら、少し寝かすべきです。
顧客との信頼関係を構築する
情報過多の時代において、顧客は信頼できる情報源を求めています。この会社のいうことは信用できる、そう思えるのはお互いにWin-Winの関係です。
売り手は、如何にして売るかという鼻息の荒さを出す前に、心の扉を開けてもらう必要があるんです。そのためには、正確で透明性のある情報を提供し、顧客との信頼関係を築く必要があります。それを伝えるためのコンテンツ形態も選ぶ必要があります。
顧客の声に耳を傾け、真摯に対応することで、企業としての信頼性を高めることは、全てにおいて大きな武器となります。長期的視点で育てていくことが、数字を超えた効果を生み出すのではないでしょうか。
まとめ:ファネルを捨て、顧客のリアルを捉えるマーケティングへ
マーケティングファネルという従来のモデルに固執するのではなく、顧客の実際の行動を直視し、それに対応した戦略を展開することが現代のマーケティングにおいて不可欠です。
顧客のリアルを捉え、信頼関係を築くことで、長期的なビジネスの成功につなげて行けると、強いですね。
この記事では、従来のマーケティングファネルの限界と、現代の消費者行動の複雑さについてお話ししてきました。でも、難しく考える必要はありません。大切なのは、お客様の本当の行動を理解し、それに寄り添った戦略を立てることなんです。
皆さんの会社でも、固定観念にとらわれずに、柔軟な発想で顧客との関係づくりを考えてみませんか?
信頼関係を築くには?お客さんの行動を信じて、売り手として想定していなかったアプローチも試してみたら?きっと、思わぬ発見があるかもしれません。そうやって少しずつ積み重ねていくことで、長期的な成功への道が開ける何か資産を作る事ができるかもしれません。
ぜひ、この記事をきっかけに、新しいマーケティングの形を探ってみてください。1社1社それぞれの「顧客中心」のアプローチが見つかることを願っています。
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中小企業・小規模事業者の方々に向けて、ウェブの活用やホームページの戦略などについてWebコンサルティング、施策代行実施などを行っている、株式会社ラウンドナップ代表取締役の中山陽平です。中小企業のWeb活用をサポートし、そこからの反響獲得を実現させています。→プロフィール詳細はこちらから