EFO(エントリーフォーム最適化)という言葉があります。
資料請求や問合せフォームからの連絡をゴールにしている場合、売り手側としても買い手側としても最後の砦になるのが「フォーム」。 ここの作り方によって大きく問合せの率、コンバージョンレート(CR)が変わりますよね。
そのフォームを最適化するEFO策の中で、最もよく聞く話題の1つが「フォームの項目数」ではないかと思います。 できるだけシンプルに、簡単に入力できることでCRを上げましょう、問合せを増やしましょうと。
しかし、この「項目数」ただ減らせばいいというものではありません。場合によっては、多いほうがいいこともあるんですね。 そこで今回は、フォームの項目数の考え方と、どうしたら自社にとって最も良いフォームが作れるのか、その指針を書いていきたいと思います。
1.フォームは2つの観点で評価する
フォームの良し悪しを判断する指標はいろいろありますが、基本的には「2つの観点」があります。 それは
- 純粋にフォームとして優れているか (ユーザビリティの観点)
- 自社の状況に合ったフォームか (戦略的な観点)
の2つです。 この2つをごっちゃにしてしまうと、うまくいきません。
1.1.この2つの観点は具体的にはどんなものなのか?
この2つの観点について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
1.2.純粋にフォームとして優れているか(ユーザビリティの観点)とは
1つめの「純粋にフォームとして優れているか」は純粋に「使いやすい道具」を作るということです。 つまりはユーザビリティの話であり
- 郵便番号から住所を入力できるようにする(ajax4zipとか)
- 人は上から見るので、注釈は入力欄の下ではなく上におく
- 入力ミスしづらいメールアドレスは、フォントを大きくしておく
- 入力項目は分類して、グルーピングする
- 必須入力欄と任意入力欄は背景色を変えておく
- タブで移動できるようにする
- 入力チェックを厳しくするのではなく、サーバサイドで入力ミスをサポートできるようにする(大文字と小文字など)
などの話です。 ここはたくさんの情報が巷にありますので詳細は省略しますが、1つ大事な事は
「この時点では、項目の数とユーザビリティは関係ない」
ということです。
1.3.自社の状況に合ったフォームか(戦略的な観点)とは
ここで、項目数などが関わってきます。 1でできた「よくできたフォーム」を、自社の状況に合わせて
- 後ろの問い合わせ対応部隊のことも考えて、どんな項目が最低限必要か
- どんな項目は、後で自然と聞けるから、この時点では任意にしておくか
- 文言はどんなふうにするか(できるだけお客さんの使っている言葉に合わせる)
などを考えて作り込んでいくんですね。 自社の営業目標を実現できるように、フォームを調整していくということです。
2.この2つがごっちゃになってしまうことがよくある
しかし、少なからず、ユーザビリティの話とビジネスの話が混乱してしまいがちです。 例えばフォームの改善提案として
- 問い合わせが来ないのは項目が多いからですよ
- 項目が多いと入力が大変だから、問合せが減りますよ
- だから項目を最小限にしましょう
- 電話で聞けるんだからメルアドだけでいいじゃないですか
という流れはよくある流れです。 これは、多くの場合「結果として」いい方向に進みます。 なぜなら、だいたいどんなところでも「問合せが少なくて困っている」からで、項目を減らせば、問合せ数が減ることはまずありえないからです。 … しかし実は、何も考えずに「減らすことは100%いいことだ」という提案をするのはとてもリスキーです。
2.1.「最適化」するなら本来流れはこうあるべき
まず、項目を考える際に押さえておかなければいけないのは、 本来先程の流れは 例えば
- 問い合わせが来ない理由は、項目の数や項目の内容や、それ以外の様々な要因が絡んでいるからです
- その中で、バックで問合せ対応している部隊に聞くと、大して必要がないこともどうやら、項目として存在するようです
- なので、それを減らして、他もこんなふうにして行きましょう
- 結果として、このくらいのコンパクトなものになりましたね
であるべきだということ。 ホームページ単体で考えるのではなく、成約ないし顧客化までのフロー全体で考えなくてはいけないということです。 … 「困ったら項目を減らせばいい」「項目を減らす=正義!」のようになってしまうと、本来最適化を行う際に必要なステップが全て抜け落ちてしまいます。 忘れてはいけない観点としては
「ホームページから、どんなお客さんを、どれくらい連れてきたいのか?」
その「どんなお客さん」が抜け落ちてしまうと、ホームページ運営チームはいいかもしれませんが、他のチーム、ひいては会社全体として悪化の方向に進んでしまいがちです。
2.2.最終的な成約までのコンバージョンレートと、内部工数を考える
項目を減らすことは、ホームページの集客からフォーム送信までのコンバージョンレートという意味では、改善しています。 しかし、商売というものはビジネスというものは、そのバックエンドまで考えなくてはいけません。 たくさん問合せが増えたからといって、その後ろで構えている問い合わせ対応部隊が、
- 項目を減らしたせいで労力が何倍にもなってしまう
- 個別の問い合わせに対する質が低下してしまう
- 見込み客を育成していく、フォローしていくにあたって取得できるデータが減ってしまい、フォローの質が下がる
- 見込みの低いお客さんに時間を取られてしまう
といったことが起きてしまうと、会社全体としては、むしろマイナスになってしまいますよね。 また、社内でも「なんか最近微妙な問合せばっかりで、あいつらへんなことサイトでやってるんじゃないのか」と言われてしまったりすると、本来フィードバックをどんどんもらいたい部隊との仲が険悪になってしまいます。
2.3.量と質はトレードオフ。スィートスポットを探せ!
つまり、大概において量と質はトレード・オフの関係だということです。 量を取る場合は、どうやっても質は低下します。 自社サイトのアクセス数を増やすために、お客さんにならなそうなキーワードに対して広告を打ったら、アクセスは増えるかもしれませんが、結果には繋がりませんよね。
問合せも同じです。資料請求ならコストがかなりかかるので、コストも圧迫します。
大事なのは会社としての「スィートスポット」を探すこと。
「できるだけ質を落とさずに、量を増やすにはどうしたらいいか?」あるいは「こんな感じの、ちょっと薄めのお客さんも拾っていこうと思うけれども、対応できるだろうか」と先にバックエンド部隊と相談する。そして落とし所を探る。そういうことがとても大切です。
そういう意味では、項目は逆に「増やしたほうがいい」こともあるんです。
3.改めて、どんなステップを踏めばよいか
改めて、おすすめのステップをご紹介します。 それは
- バックエンド対応部隊も一緒に考えてもらう
- そもそも、どんな項目が必要か「A.絶対必要」「B.あったら成約につながりやすい」「C.あればいいが、なくてもいい」「D.いらない」くらいに分類する
- お客さんが入力しやすい順番を考えて並べる(付箋に書いてホワイトボードでやるのがいいかもしれません)
- 3パターンくらい作成する(Aだけ、AとBの一部だけ、AとB全て、AとB全てかつCを任意で)
- フォームの使いやすさ(ユーザビリティの観点)をチューニングする
- スプリットテストをする
- PDCAを回す
です。 ユーザビリティの観点が後に来ているのは、項目の数や流れによって、細かい部分が変わってくるからです。 また、形有りきだと、最も大切な営業的観点について発想がちぢこまってしまうからです。
終わりに
ザクザクと書いてきましたが、一番伝えたかったのはフォームのサンクス画面のPVが増えた、コンバージョンレートが上がった!バンザイ!で終わってしまわないようにしないといけないということ。
あくまで会社全体のビジネスの流れを考えて、部分最適ではなく全体最適を考える視点を持たないと、お客さんに対しても社内に対しても、うまくいきません。 そういった観点で、フォームというものを見なおしてみてはいかがでしょうか。 苦労しているのは、他のチームも同じなのですから…。
また、ホームページ作成会社を選ぶ時はこちらもご覧ください「[実践]ホームページ作成会社(WEB制作会社)との付合い方選び方」