第568回:「己の仕事イコール何と考えるか?」がAI導入への姿勢を変える?

第568回:「己の仕事イコール何と考えるか?」がAI導入への姿勢を変える?

Podcastの概要

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

今回は「『己の仕事=何』と考えるか?が、AI導入への姿勢を変える」という話をします。AI(Artificial Intelligence)を前にして不安が強くなるか、逆に自分の価値を高める方向に切り替えられるか。その分かれ目は、意外とシンプルです。

  • AIへの不安が強まる理由を、「仕事の捉え方(作業か、価値か)」で整理できます。
  • マネジメント側が、AI導入を「分断」にしないために押さえるべきポイントが見えてきます。
  • 自分自身のモチベーションや好奇心を保ち、AIを自己拡張ツールとして扱う考え方が手に入ります。

仕事を「作業」として捉えるほどAIは脅威になり、仕事を「価値」として捉えるほどAIは自己拡張になりやすい。

今回の結論:AIに奪われるか、自己拡張になるかは「仕事の捉え方」で分かれる

AI導入が進むとき、「自分の仕事が奪われるのでは」という不安が出る会社もあれば、積極的に取り入れて成果につなげる会社もあります。もちろん職種や業務内容によって危機感の持ち方は変わります。ただ、そことは別の観点として、自分の仕事を何だと思っているかが、受け止め方を大きく左右します。

ここでのポイントは、仕事を作業レベルで捉えているか、作業を通じて実現する価値レベルで捉えているか、です。

なぜ「作業=仕事」だと不安が増えるのか

作業レベルで自己定義すると起きやすいこと

自分の存在意義を「この作業をしているから価値がある」と置いてしまうと、AIはその作業を置き換えうる存在に見えます。すると、どうしても不安や拒否感につながりやすくなります。

  • 代替不安が直撃する:作業が置き換わるほど、自分の価値まで失うように感じてしまう。
  • AIを敵として捉えやすい:使い方を学ぶより、避ける・抵抗する方向へ傾きやすい。
  • 意欲が下がりやすい:好奇心よりも「守り」が強くなり、成長の糸口を見つけにくい。

価値レベルで捉えると何が変わるか

一方で、「自分はこの作業を通じて、こういう価値を実現している」と捉えられると、AIは「仕事を奪うもの」ではなく、価値提供を拡張するための道具として見えやすくなります。

  • AIを自己拡張ツール(自分の能力を広げる道具)として扱える:作業の置き換えではなく、成果の引き上げに関心が向く。
  • 学習や工夫が前提になる:「どう使えば価値が増えるか」に意識が向き、好奇心が保ちやすい。
  • 心が楽になる:変化を止められない以上、嘆くより「次にどう動くか」に切り替えやすい。

ここは「気持ちの持ちよう」で片付くほど単純ではありません。ただ、視座を一段上げるだけで、見え方が変わるのは確かだと思っています。

マネジメントができること:伝え方と導入プロセスの設計

マネジメント層にとって重要なのは、AI導入を「ツール導入」で終わらせず、仕事の意味づけとセットで扱うことです。

仕事の説明を「作業」から「価値」へ

「この仕事をやっているから価値がある」と作業で語るのではなく、「この仕事は、こういう価値を生み出すからお願いしたい」と伝える。ここが土台になります。

作業は変わります。だからこそ、作業の背後にある価値が共有されていると、AIが入っても「自分は何を実現する人か」を失いにくくなります。

透明性と参加を先に作る

AI導入は、やり方次第で不安を増幅させます。だからこそ、導入前後で以下を丁寧に扱う必要があります。

  • 透明性:会社として何を実現したくてAIを使うのか。何が変わり、何は変えないのか。
  • 参加:現場の不安や意見を拾い、置き去りにしない形で導入を進める。
  • 心理的安全性:不安を言語化できる状態をつくり、「敵ではない」前提を共有する。

部署によって「使う・使わない」が分かれたまま放置すると、分断や対立の火種にもなりえます。会社としての方針を出すこと自体が、導入を円滑にします。

調査から見える共通点

ここからは、私が触れた調査の話です。細部の解釈よりも、共通する示唆を押さえるのが重要だと思っています。

AIを「補完」と捉えるほど、仕事の尊厳や意味づけが保たれやすい

IT(Information Technology)分野のインタビュー調査では、AIを「人間の代替」ではなく「補完」と捉える人ほど、仕事の尊厳や意味づけ(meaningfulness)を維持・向上させやすい、という示唆が出ています。

参照: The Impact of AI on Perceived Job Decency and Meaningfulness: A Case Study(arXiv)

この示唆は、私が先ほど話した「作業ではなく価値で捉える」こととつながります。AIをパワーアップだと見られるほど、満足感や前向きさが保ちやすいという話です。

透明性・関与設計が、受容とウェルビーイングに影響する

HR(Human Resources)領域での整理でも、AI導入が従業員の満足度やメンタル面に与える影響は、透明性コミュニケーション、そして関与の設計に左右される、という方向性が示されています。

参照: Employee Well-being in the Age of AI: Perceptions, Concerns, Behaviors, and Outcomes(arXiv)

「会社として何がしたいのか」を共有し、現場の不安を拾い、参加の形をつくる。結局は、導入の技術論だけではなく、納得感と意味づけのプロセスが鍵になります。

便利さの代償として、目的感や自立性が揺らぐことがある

ロボットと共に働く現場では、身体的負担が軽くなる一方で、目的感や自立性が失われがちだ、という話も報じられています。便利さを享受するだけだと、「自分はなぜこの仕事をしているのか」が揺れてしまうことがある、ということです。

参照: Working with robots often carries mental strain, studies find(Financial Times)

私はこの話を、知的作業でも同じ構造が起きうる、と捉えています。だからこそ、事前のケアや、仕事の意味づけの共有が重要になります。

私自身の実感:絶望より、好奇心とモチベーションを選ぶ

私自身も、作業に囲まれることは多いです。戦略立案やファシリテーションのような領域はまだ代替が進みにくいと感じつつも、「自分の価値って何なんだろう」と思うことは何度もあります。

ただ、そこで絶望するのではなく、「この前提で、どうしたら支払っていただいている金額以上の価値を出せるか」「どうすれば3倍4倍の生産性や付加価値を出せるか」を考えるようにしています。そう考えると、AIは敵ではなく、「使い倒してやろう」と思える対象に変わります。

余談:AIの今は、インターネット黎明期と似ている

今のAIの状況は、1990年代末から2000年代頭の、インターネット黎明期に似ている、と例える人がいます。私もその感覚はあります。

当時は「ネットで物なんて売れない」「わざわざパソコンで検索しない」「文字や写真では人のぬくもりが伝わらないから長続きしない」といった否定的な話を、本当によく聞きました。私がネットを触り始めたのも、その頃です。

その中で私は、ある種の生きる術としてデジタル経営で創業しました。既得権益的なプレイヤーも多く、簡単には稼げないと感じたからです。飛び込み営業をする中でも、「それ意味あるの?」「価値あるの?」「お客さん呼べるの?」と言われることは多かったです。

でも今振り返ると、ウェブでいろいろするのが当たり前になりました。AIが今後どう転ぶかは、マクロ要因もミクロ要因もあって断言できません。けれど、少なくとも私は、ポジティブに捉え、「自分にとって何が役に立つか」を考えながら活用していくのが良いと思っています。

まとめ:自分を「代替される手段」ではなく「生み出す価値」で捉える

AIの流れ自体は変えられません。だからこそ、作業そのものを積み上げてきた価値を否定せずに、それを一段上の概念に引き上げて、「自分は何を実現する人か」と捉え直す。ここが、心を楽にし、次の一手を出す助けになります。

ぜひ、自分を手段の代替存在として捉えるのではなく、それによって生み出しているものをコアバリューとして考えてみてください。

今回の内容は以上です。最近AIの話題が増えていますが、今の時期はどうしても触れざるを得ないと感じています。私は現場で泥臭いことばかりやっています。その現場感から、大事だと思うことを話していますので、よろしければ引き続きお付き合いください。

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FAQ

AI導入で反発が起きる会社と、うまく進む会社の違いは何ですか。
「自分の仕事=作業」と捉えているほど代替不安が強まり、AIを脅威として見やすくなります。逆に「作業を通じて実現する価値」で役割を捉えられるほど、AIを自己拡張として扱いやすくなります。
「作業レベル」ではなく「価値レベル」で仕事を捉えるとは、具体的にどういうことですか。
「私はこの作業をしているから価値がある」ではなく、「私はこの作業を通じて、こういう価値を実現している」と捉えることです。作業は変わっても、提供する価値を軸にすると自分の立ち位置が揺れにくくなります。
マネジメント層は、AI導入のときに何を最優先で整えるべきですか。
会社として何を実現したくてAIを使うのかという透明性を出し、現場の不安や意見を拾いながら参加の形をつくることです。導入の技術論より先に、納得感と心理的安全性を押さえることが重要です。
AIが進化していく中で、モチベーションや好奇心を保つコツは何ですか。
「奪われるかどうか」ではなく、「どう使えば価値が上がるか」に視点を移すことです。価値レベルで役割を捉えると、自然と情報への向き合い方が前向きになりやすいと考えています。
便利になればなるほど、なぜ目的感や自立性が下がることがあるのですか。
便利さを享受するだけだと、「自分はなぜこの仕事をしているのか」「これから何を伸ばせばいいのか」が曖昧になりやすいからです。だからこそ、仕事の意味づけを先に共有し、導入後もケアする仕組みが必要になります。

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