第569回: 中小企業のAI活用は、苦手な仕事を減らして得意な仕事へ時間を回すところから

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、中小企業がAIをどこから使い始めるかという話です。

AIが重要だと言われても、自分の会社でどう使うかとなると、イメージがつかない方も多いと思います。チャット画面で質問したり、壁打ちをしたりするところで止まって、「意外と使えないな」「現場ではあまり利用価値がないな」と感じてしまうこともあるでしょう。

そういうときは、まず会社の「凹んでいる部分」を埋めるために使うと考えてみてください。苦手な仕事の手間を減らして、空いた時間を、自分たちの得意なことへ回すんです。

ここからのAIの得意・不得意については、この記事を公開した2025年9月当時の私の見方です。特に、これから導入する会社が、最初にどう捉えると使いやすいかという観点でお伝えします。

最初は、会社の苦手な仕事を楽にするために使う

どの会社にも、得意なところと、うまくやれていないところがありますよね。お客さんへのサポートは得意でも、新しいサービスを作ったり、営業したりするのは苦手。その逆もあると思います。

そういう会社のデコボコを考えたとき、AIはまず、凹んでいる部分をどうしたら楽にできるかというところから使うと分かりやすいと感じています。

例えば、パソコンが苦手で、フォームから来た問い合わせにスピーディーに対応できない。そういう仕事を、どう楽にできるか相談するんです。LINEと連動させる方法や、一般的にはどんなやり方で効率化しているか、といった案ですね。

メールやDMの文言を考えるのが苦手、ということでも構いません。いろいろな会社がこれまで苦労してきた部分には、すでにやり方や情報があります。そういうところを埋めるために使うと、最初の効果を感じやすいと思うんです。

AIの提案だけで、自社の強みを作ろうとしない

当時の私の感覚では、AIに相談して、返ってきた案だけを頼りに進めると、各社が似たようなところへたどり着くのではないかと思っていました。

例えば、クレジットカードや保険などの比較サイトは、上位にあるものが結構似ていますよね。激戦区で、各社が反応の取れる形を追い求めた結果、似た形へ収まっていく。限られた条件の中で同じ目標を目指すと、そういうことが起きます。

AIに「どうすればいいか」と聞き、その答えだけをもとに強みを作ろうとしても、既存の枠の中で、みんなができていることを揃える方向になりやすいと考えていました。

これから使い始める段階では、自分たちのよいところを作ることまでAI頼みにしない方がいいと思います。自分たちがうまくできていない部分を、まず引き上げる。その役割で考えると、使いどころが見つけやすいんですね。

「この業界で圧倒的に勝つ強みを教えてください」と頼んでも、他社が自分たちの強みを作るためにやっていることは、そもそも外へ情報として出ていないかもしれません。既知の評価軸を全部5点にするような案と、新しい強みを作ることは、分けて考えた方がいいと思います。

自分のアイデアを補強する使い方はできる

これは、AIを強みづくりに一切使えないという話ではありません。慣れてくれば、自分たちのアイデアをもとに、それを補強する伴走役として使うことはできます

私は、最初からゼロを1にしてもらうことを期待するより、1を3にしたり、3を30にしたりするために使う方がよいと考えていました。厳密には違うという意見もあるでしょうが、導入の最初はそう捉えた方が分かりやすいと思います。

すでに新しいものを作る仕事をしている人が、情報収集やレポートの読み取りにかかる時間を減らして、自分の力を伸ばす。そういう使い方はあります。ただ、やったことのない仕事で「とりあえずAIを使えば何か出てくるだろう」と進めるのは、かなり難しいと感じています。

空いた時間と費用を、得意な仕事へ回す

苦手な仕事が楽になった後に、何をするかも大事です。「時間が空いたから、それでいい」「費用がかからなくなった分は、利益として残しておこう」で終わらせず、空いた時間や費用を、自分たちの優れた部分を伸ばすために使うことをお勧めします。

AIは間接的に、そのためのサポートをしてくれるんですね。凹んだところにかかる工数や費用を減らして、人は空いた時間で、よいところを作る。あるいは、今やっている、時間はかかるけれど価値のある仕事に、もっと時間を使えるようにするということです。

特に職人さんのような仕事では、実感しやすいのではないでしょうか。「時間がなくてここまでしかできないけれど、この仕事が楽になったら、もう少し細かくできるのに」ということはあると思います。そこへ時間を回せるように、AIを使うんです。

対応できる仕事を任せ、難しい問題に人を回す

2025年当時、私が耳にしていた例として、コールセンターでチャットボットやAIの音声対応を使い、対応できる内容はそちらへ任せる取り組みがありました。

その分、難しい問題へ、スキルの高い人を早めに回せるようにするという考え方です。問題解決やお客さんへの対応の質を上げるために、人の時間を空けるわけですね。

AIによる対応にもよしあしはありますが、何でも全部任せるというより、対応できる内容を任せて、人が力を使うべきところへ早く入れるようにする。その役割分担で見ると、自分の会社にも使える部分が見えてくると思います。

職人やベテランが、開発や次の仕事に使える時間を作る

AIだけでなく、ロボットなども含めた話になりますが、ベーカリーのような職人仕事で、運ぶ作業や繰り返しの作業を機械に任せる例もあります。作れる量を増やしながら、人は、もっとやりたい開発へ時間を割り振れるようにするんですね。

また、熟練者の動きをVRなどで見せて、現場で教える手間を減らす考え方もあります。新人が学びやすくなるとともに、ベテランがずっと教えていなければならなかった時間を、別の仕事に使えるようにする。

こういう例に共通するのは、人の時間を空けて、その人がもっとやりたい仕事、価値を出せる仕事へ回すことです。そのために、今うまくできていないところや、手間がかかっているところを楽にできないかと考えてみてください。

新規事業をAIとの相談だけで決めるのは難しい

なかなかうまくいかないケースで、最初から「新規事業を始めるために、AIと相談して決めよう」と入ってしまうことがあると感じています。

自分たちに足りない部分を見つけて埋めることには使えても、平均的なところまで来た後、そこからどう上へ行くのかは別の話です。その仕事が分かっている人が補助ツールとして使うならよいのですが、分からないままAI頼りで強みを作ろうとするのは、私は無謀だと思います。

他社が優れていると感じる部分も、最初からうまくいくと分かっていたとは限りません。その会社が「これがきっとうまくいくだろう」と信じて続けて、実を結んだものがあります。その後で、ほかの会社が追いかけてくるんですね。

前例のない仕事へ進むときは、人が考えて取り組み、そのための補助としてAIを使う。自分の知識や経験が必要なところまで、丸ごと任せられると考えない方がいいと思います。

業務改善で使いながら、自分たちも習熟していく

最初は、業務改善や対応品質を上げることなど、いろいろな意味でのコストを減らすところから使ってみてください。続けるうちに、「こういうことは得意なんだ」「こういう質問の仕方をすればいいんだ」と分かってきます。

ほかの取り組みも知りながら、自分たちがやっていなかったことを試せるようになる。そこまで慣れたら、自分も必要なことを学びながら、AIの力を借りて、できる仕事を増やしていく使い方ができると思います。

「このAIがあるなら、自分はこのあたりを勉強して、一緒にやればいいのではないか」。そうやって、人が学ぶ速度や、そこから作れるものを増やしていくんですね。

当時も、SNSでは、知識がなくても何でもすぐ作れるような見せ方をよく見ました。ただ、動くサンプルを作ることと、商売で使う重要なものを任せられることには差があると、私は考えていました。

自分で頑張らなければいけないところは頑張る。そのための時間やお金を確保するために、AIを使う。まずは凹んだ部分を埋めて、空いた時間で、みんなで得意なところを伸ばしていく。そんな役割分担で考えていただければと思います。

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