新しいサービスや商品を市場に出すのはワクワクする一方、大変なこともたくさんあります。特に「本当に新しい=ド新規」なものは大変です。なぜなら、今まで想像もしなかった物が目の前に現れたとしても、人はそれにどのように価値があるのかの想像をすることもできないからです。
どうやって、市場の求めるものを理解し、それに応えられる商品やサービスだと伝えるのか?CMを大量に打つような物量作戦は、大手以外では現実的ではありません。そこで日経トップリーダーの記事にあった「YAMAP / ヤマップ」の事例などを見ながら、そのきっかけを摑んでいきます。
YAMAPの成功は、継続的な革新とお客様との関係を大切にするという思考。このような取り組みが、市場に新しい価値を生み出し、成長を支えるための源泉。
では具体的には?どうすればいいのか?それが今回のテーマです。
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必要条件としての「努力」
新しいサービスや商品というと華々しいイメージがあります。実際、既存カテゴリの新製品であればそうでしょう。
しかし、既存カテゴリでも新たな価値軸を提案するような物や、あるいはそれまで無かった「新商品」を売り出すことは、現実はそう簡単ではありません。ましてや新しい商品カテゴリを作るのだとしたら…
まず大事なのは「新商品はむしろ大変」と考えること。新商品ができたから、世の中にないサービスができたから独立開業だ!というのは、正直かなりリスキーです。
それをどうやって売るか?を、余裕のあるうちに仕組み作りなどしていかないと、しばらく売上ゼロの可能性も十分あります。
春山氏の成功事例:挑戦と地道な努力
日経トップリーダーに2013年にリリースされたアプリ「YAMAP / ヤマップ」とサービスについての記事で、その発案者である春山氏の話がありました。
参照:「40代で友達が増えた」登山アプリに交流機能がある理由:日経ビジネス電子版
少し紹介すると、春山氏は登山が趣味ということから、自分が「こういうものがあったらいいのにな」というニーズを満たすアプリを作ろうとし、周りに企画を持っていったりしたのですが、まぁけんもほろろだったようです。
「ニッチすぎる」「紙の地図とコンパスで十分だと」などなど…。しかしネガティブな反応にもめげず、春山さんはそのアイデアを推し進め、アプリとサービスはリリースされました。
YAMAP / ヤマップ 登山地図アプリ – 山歩しよう。 – Google Play のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.yamap&hl=ja&gl=US&pli=1
ではそれでメデタシというとそうではなく、そのリリース後も春山氏は、ユーザーの声を直接聞くために、登山者に直接アプローチを行うなど、地道な努力を続けています。その中で初期は目も向けられなかった登山者が、段々使ってくれるようになりました。
何を行ったか?デジタルな要素はあまりありません(笑)
でも、実際マーケティングはWebだけのものではないですので…
したことは、例えば、
- 登山者が止める駐車場の車のワイパーにチラシを差し込む
- アプリのカスタマーサービスも春山氏自身が24時間対応し、ユーザーの声を直接聞き取るようにする…
など本当にとにかく「現場からのフィードバックを受けるため」「1人でもまずは使ってもらわないと」と、泥臭い営業というか布教をしてきたんです。
新規事業のリアル:挑戦と困難、そしてWebに魔法の杖はない
ここに魔法の杖も銀の弾丸も何も無いんです。
冒頭で書いた「努力が必要条件」というのは、この辺りができるかどうかともいえます。頭の中で横文字を並べていても、何も変わらない。フィードバックを回していくためには、あらゆる手段を使う、それがド新規の宿命です。
その結果、12年間の時間を経て、ようやくユーザーとのコミュニケーションが取れるような関係を築くことができ、記事が日経の方で取り上げられるまでに至りました。12年です…生まれた子どもが中学生です。
記事には書かれていない部分でも、春山氏はさらに努力を続けていると思います。
表に出ない部分がたくさんあるでしょう。表に出るのは氷山の一角です。
新しいものを創り出すことの難しさ、そしてそれを売ることの困難さを理解し、それに対する解決策を試行錯誤しながら進むことの重要性を、春山氏のエピソードは語っています。
そこに覚悟はあるか
現在の副業ブームや起業ブームといった流行りの中で、自ら何か事業を始めたい、自分でサービスを作り出すという方々が増えていると感じております。
独立では無くとも、社内ベンチャーという形で新たな新規事業を立ち上げる動きもあります。
新たな挑戦をするケースが昔に比べると増えていると思います。
それ自体は素晴らしいこと。そしてもちろん、必ずしも成功へとつながるわけではありません。
ただ「やり尽くしていない」「そもそも楽観的すぎる」ケースも少なくないように思います。
これは悲観的な言い方になるかもしれませんが、何か新たな事業を始める際には、「早道はない」という覚悟を決めて始めることが重要ではないかと思う所です。さらに言えば、全力ができる環境を作ってからトライする方が良いですね。
売り方のヒント:新しい物は、新しくない物に絡ませよう
とは言え、我武者羅にやる以外無いのかというわけでもなく。まず、ここまで書いたような火の玉直球ストレートに行くのは避けた方が良いと思います。
ここでのストレートとは、今回のYAMAP / ヤマップのように、一つの商品やサービスだけをその事業部単体で売り出すというやり方です。
そうではなく、一緒に手を引いてくれる存在が、何かしらあると思うんですね。
例えば、すでに既存の事業があるなら、既存のお客様層がすでにいるわけです。顕在ニーズもある。その既存の商品やサービスに絡める、アドオンのような形で見せる所からはじめるとどうでしょうか。
- 既存の商品やサービスは、一般的にはすでに認知されているものである
- お客様が現在利用していたり、世間一般に役割が認知されており、大なり小なり顕在的なニーズがある
- 既存カテゴリと結びつけることで、新規の商品やサービスをの価値、お客さまに提供できる価値を伝えると分かりやすい
既存のサービスというはっきりした物に結びつけることで、分かりづらいサービスや商品も分かりやすくなります。
その様な打ち出しはもしかしたら、不本意かもしれません。
しかし、今の時代まずは触ってもらってフィードバックを得ないと何も始まりません。
ユーザーが増えれば、直接ユーザーさんに説明や本来やりたかったことを話しに行くこともできたりと、打ち手はずいぶん増えます。
このように「既存に絡ませる」のは、お勧めです。マーケティングの観点に限らず。
※私自身も現在、遠隔コンサルティングサービスを行っておりますが、はじめた2010年頃にはこのようなサービスはほとんど存在していませんでした。なので、その時代には、どのような表現を使えばよいのかということに苦労しましたが、今ではその表現が一般に理解され、楽になりました。競合も増えましたが…。
価格は客層とポジションの面で考えることが大事です
新しいサービス・商品の価値は価格に対して払う価値があるかどうかで決まります。新しい商品ではその価値感が分かりづらいので、価格を大幅に変えても影響が思ったより少ない事が多いです。
ただ、安価に設定すれば、その商品が提供しようとしている価値とズレてしまう可能性もありますし、逆に高価に設定すれば単純に避けられる可能性もあります。ですから、価格設定は非常に難しい課題です。
ただここで大事なのは、価格もその商品やサービスに対する目線に関わるということです。高い物は高い物同士で評価され、安い物は安い物の中で評価され比較されます。どのポジションで戦いたいかは価格で結構決まります。
利益の面で見るだけでは無くポジショニングや客層という観点でも見る事をお勧めします。悩んだら高い方が良いです。利益率が高い方が、数を売らなくて済むからです。その分ブラッシュアップに時間を使えます。また、値段を下げるのは楽ですが上げるのは大変です。
信頼性を獲得、ブランディングとマーケティングの重要性
もう1つ大事なポイントは「信頼性の獲得」です。新しい物は、会社自体に信頼や知名度があれば別ですが、そのサービスで独立をかけたような場合、企業にも中の人共々信頼残高を増やしていかなければ、良い物も良いと思ってもらえません。
そうすると、まずやってしまいがちなのが「サービスや商品」そのものに対しての信頼性を上げようとすること。原材料だったり製造工程だったり…そう言う物に拘りアピールする。もちろん意味はあります。ただ、人間性のない物に対しての信頼感醸成って難しい。
なので、特に初期団体は「あの会社が出してるなら安心だよね」「あの人が売っているなら大丈夫かな」という、生の人間あるいは「その人が率いている会社、集団」に対しての信頼感を醸成するという考え方をお勧めします。
言いかえると、商品やツールそのものよりも、売る側の企業や個人のブランディングをする方が有効な場合が多いということです。
人間と企業の関係構築
インターネット上では個人ブランディングが広く行われており、さまざまな商品やサービスを販売する方法が定着しています。また、インフルエンサーによるビジネスもまだまあります。
これは人が一番信頼関係を作りやすいからです。それにお金を出して乗っかっているのがインフルエンサーマーケティングであり、芸能人を使ったTVCMなどですね。
会社でも個人事業主の方でも、新しく立ち上げたとしたら、既に歴の長い会社と繋がるのは効果的です。一緒にいるだけで、そのオーラ力を借りることができますし、ジョイントすることでリストを共有できる可能性もあります。
その観点で言うと、やはり法人の方が動きやすいのも事実です。個人事業主・フリーランスは一般的になってきましたが、やっぱり法人に比べると印象としては一段二段落ちます。
初期のお客さまをとにかく大事にしよう
ブランディングやマーケティングを通じて新たなお客様が得られた場合、特に最初のお客さまは大切に扱うべきです。信頼関係を築き、さまざまな意見を得ることで、フィードバックループの品質は大きく向上します。それまでは所詮脳内ですので限界があります。
また、その最初のお客さまは、一緒になってサービスを育てていくという立場になるとやはりモチベーションがあがるものです。いわゆる「巻き込み」です。
プロダクトローンチフォーミュラの大事な要素の1つでもありますね。
ちなみにプロダクトローンチフォーミュラとはいつの間にか色々なところで一人歩きして「元祖」が増えている気がしますが、ジェフウォーカー氏の会社が登録商標を持っていますのでご注意下さい。
長く使って頂いているお客さまは、本当に、本当にありがたいです。
ブルーオーシャンは自分で作る
ご相談でも、新規参入の相談は多いです。ブルーオーシャンなんて分かりやすい物はすでに取られていてどこもレッドです。
ブルーオーシャン戦略の続編でも延べられていますが、ブルーオーシャン戦略の肝はレッドでも戦略キャンバスで現在無い価値軸を作ってブルーにして行くことです。
既に市場に影響力のある企業が多数あり、彼らからシェアを奪うことは容易ではないケースも少なくありませんが、新しい軸を訴求することで可能性が生まれます。しかしその時今回話題になったような「新しい概念」を攻める難しさが立ちはだかります。
ド新規商品・ド新規カテゴリの立ち上げは困難であるという現実を直視しつつ、そうした難しさに対処するための方法として、いろいろお伝えできればと思い今回はこのテーマにしました、
今回の内容がそれを超えるきっかけになれば幸いです。
関連サイト・記事
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- YAMAP / ヤマップ | 登山をもっと楽しく、登山情報プラットフォーム
- YAMAP / ヤマップ(登山地図アプリ)(@yamap5586)さん / X
- Product Launch Formula – Jeff Walker
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中小企業・小規模事業者の方々に向けて、ウェブの活用やホームページの戦略などについてWebコンサルティング、施策代行実施などを行っている、株式会社ラウンドナップ代表取締役の中山陽平です。中小企業のWeb活用をサポートし、そこからの反響獲得を実現させています。→プロフィール詳細はこちらから