昨今、市場の考え方が大きく変化しています。特に中小企業にとって、この変化への対応は死活問題と言えるでしょう。この流れはWebマーケティングの世界でも必ずおさえておかなければならないポイントです。
市場の捉え方の変遷を振り返りながら、企業がどのように顧客の感情に訴求し、自社の強みを生かしたストーリーを展開すべきか。この流れを押さえた上でWebをどう活用できるかが、これからの企業のWebマーケティングの鍵になります。
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産業分類に基づく市場の捉え方
かつては、製造業や飲食業といった産業分類に基づいて市場を捉えることが一般的でした。この背景には以下の理由があります。
- 産業分類による市場の分類は分かりやすい
- 高度経済成長期から昭和の時代にかけて、産業分類に基づく市場把握で十分だった
当時は、既に存在するニーズに対して商品やサービスを提供するだけで、ある程度の売上を上げることができました。
三種の神器に見る当時のニーズ
例えば、新三種の神器と呼ばれる商品群(カラーテレビ、クーラー、自動車)は、人々が既に欲しいと思っていたものでした。企業は産業分類の中で事業を展開するだけで、十分に商売が成り立っていたのです。
フロンティアがまだまだ広がり続けている、海外にたどり着いていないからただただ未開拓の地を掘り進んでいれば良かった時代です。
付加価値競争の時代
しかし、次第に多くの商品やサービスが行き渡るようになると、企業は新たなニーズを掘り起こすことが難しくなりました。西海岸にたどりついてしまったのです。
そこで企業は、商品やサービスに様々な付加価値をつけることで、市場の中で差別化を図ってきました。今の市場の中で、新たな価値をつけてシンプルな商品ではカバーできなかった欲望の領域にも版図を広げて言ったわけです。
テレビに見る付加価値競争
テレビを例に取ると、企業は以下のような付加価値をつけることで、新たなニーズを生み出してきました。
- 画質の向上(色の鮮やかさ、高解像度など)
- 省エネ性能の向上
- 大画面化
- ゲームへの対応
こうした付加価値競争により、企業は一つの市場の中で何度もニーズを生み出してきたのです。
市場の垣根を超えた競争への変化
しかし、付加価値競争にも限界が見え始めています。もはや市場の切り口自体が意味を失いつつあり、企業は市場の垣根を超えて競争せざるを得なくなっています。
大概の欲しいものは誰かしらがすでに商品やサービスを提供しており、本当の意味での新商品は極めて狭い門になりました。先行者利益で生きていくのも難しくなりました。
そのため、買い手側が想起するニーズだけではなく、売り手側がより積極的にニーズを生み出す、ニーズジェネレーションやウォンツジェネレーションなどが必要になりました。戦略的PRなどもその文脈と考えると分かりやすいですね。
そのために「買い手の感情にどれだけ訴えかけるか」という、より本能的な方向へのアプローチが増えてきました。
コンプレックス系の商材が幅をきかせているのもそのせいでしょう。
感情のフックに訴求する
今や企業は、顧客の感情に直接訴求するような戦略を取る必要があります。例えば、「安眠」や「朝すっきり起きられる」といった具体的なベネフィットを提供することが求められます。
顧客は自分の感情や価値観に合致する商品やサービスを選ぶようになっており、単なる機能訴求では差別化できないのです。
ストーリーの重要性
企業は自社の商品やサービスを、顧客の感情に訴求する「フック」に引っ掛ける必要があります。そのためには、自社の強みを生かしたストーリーを展開することが重要です。
例えばよくある例としては
- 地球環境に配慮している
- 特定の○○未来の実現を支援している
- ○○の保護に繋がる
例えばこうしたストーリーを通じて、共感を得られる価値観を提示することが求められます。
競合の捉え方の変化
とにもかくにも、従来の産業分類に基づく競合認識では、もはや攻め手がなくなってきています。
企業は、自社と同じ課題を解決できる様々なサービスを競合と捉える必要があります。
例えば、住宅塗装業者は、以下のような選択肢を競合と捉える必要があるでしょう。
- 長期優良住宅などのメンテナンスフリーにする試み全て
- DIYによる塗装など、性能より満足という選択に繋がる試み全て
顧客が求めるのは「快適な住環境」であり、その実現手段は多岐に渡るのです。
顧客の声に耳を傾ける
ストーリーを展開する上で、顧客の声に耳を傾けることが欠かせません。キャッチコピーを考えるだけでは不十分で、顧客が実際に発する言葉を拾い上げる必要があります。
企業は顧客との対話を通じて、自社の商品やサービスがどのような文脈で語られているのかを把握しなければなりません。そうすることで、より説得力のあるストーリーを展開することができるのです。
考えられる打ち手
では、企業はどのような打ち手を考えるべきでしょうか。いくつか例を挙げます。
- 自社の商品やサービスを通じて実現したい世界観を明確にする
- 顧客の感情に訴求するフックを明確にする
- 顧客との対話を通じて、ストーリーに説得力を持たせる
- 地域で先駆けて新しい価値観を打ち出す
ただし、抽象的すぎるストーリーでは顧客の共感を得られません。自社の商品やサービスがどのように顧客の課題を解決するのかを、具体的に示す必要があります。
まとめ
- 市場の考え方が産業分類からベネフィット訴求へと変化している
- 企業は顧客の感情に訴求するフックを明確にする必要がある
- 自社の強みを生かしたストーリーを展開することが重要
- ストーリーに説得力を持たせるには、顧客の声に耳を傾ける必要がある
- 抽象的すぎるストーリーでは顧客の共感を得られない
企業は自社の存在意義を再定義し、時代に合った戦略を打ち出すことが求められています。産業分類に囚われず、顧客の感情に訴求することが、競争を勝ち抜くための鍵となるでしょう。
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中小企業・小規模事業者の方々に向けて、ウェブの活用やホームページの戦略などについてWebコンサルティング、施策代行実施などを行っている、株式会社ラウンドナップ代表取締役の中山陽平です。中小企業のWeb活用をサポートし、そこからの反響獲得を実現させています。→プロフィール詳細はこちらから