こんにちは、ラウンドナップ・Webコンサルティングの中山陽平です。三寒四温と言うとはいえ気温の上下が激しいですね。体調など崩さないようにご自愛下さいませ。
さて、今回はハーバード・ビジネス・レビュー誌の記事で興味深い物がありましたので、その紹介と、そこから導き出される「成功事例を見過ぎる危険性」について掘り下げていきたいと思います
オンラインでさわりも見られないのですが…2021年9月号でした。
DIAMONDO ハーバード・ビジネス・レビュー 2021年9月号 | ダイヤモンド社
https://www.diamond.co.jp/magazine/059690921.html
成功事例を鵜呑みにする危険性は過去、いろいろなところで話題にしております。
メルマガの後にこの辺りもお聞き頂けると幸いです。
- 成功事例の罠と失敗事例の価値 [Webコンサルメルマガ]- Webコンサルタント中山陽平
https://roundup-inc.co.jp/nakayama/info/ml-20200423/ - Podcast第233回:厳しい時代を乗り切る処方箋は成功事例ではなく「失敗事例」
https://roundup-inc.co.jp/nakayama/podcasts/vol233_sioppai-jirei-importance/
5年前くらいのもありますね…声が若いですね…。
- Podcast 第84回:お客さまの声・成功事例を見る時の注意点と分析のススメ
https://roundup-inc.co.jp/nakayama/podcasts/vol084-voice-tyuiten/
さておき、本題に入ります。
HarvardBusinessReview誌の記事「イノベーションコンテストで競争を煽ってはいけない」は、全体としてはこんな内容です。
- イノベーションコンテストにおいて、競争心を煽る目的で参加者に他の応募案も見せている
- たくさんアイディアを見た参加者は、予想に反してパフォーマンスが低かった
- 少数(2コほど)であればパフォーマンスは上がったが10コ見せると低かった
- 示されたアイディアは単なる例で、実際の物ではないと伝えるとパフォーマンスは維持された
その上で、記事では
「ライバルの応募案をインスピレーションの源ではなく、自分の思考を制約する物として見る傾向がある
「先行のアイディアの要素を利用するのではなく、自分のアイディアをそれらと差別化することに集中してしまう」
と書かれています。
このレポートはあくまでコンテストでどのように創造性のレベルを上げるか、という観点の物です。
ただ、成功事例に対して我々が取りがちな態度もこれと同じ穴ではないかと思うんですね。
該当分野に自信がなければ、差別化ではなく方向性を寄せようとする
この事例はイノベーションコンテストということで、それが得意な人が基本的に意欲的に取り組んでいくものです。しかしWebやITに取り組もうとして苦労している方は、決してWebやITが好きなわけでも、意欲的に取り組めているわけでも無いと思うんですね。
商売として必要だから、あるいは担当だからということで頑張られているケースが多いと思います。
イノベーションコンテストであれば「会社命令だから何か出さないといけない」などでしょうか。経営者であれば「良く分からない分野で不安だけれど、やらないと先は見えなさそうだから時間を割こう…」でしょうか。
決してその様になってしまうことを責めているわけでは無いです(むしろWeb/IT業界の一員としては反省しかないのですが)ただ、その様な状況だと「先行のアイディアの要素を利用するのではなく、自分のアイディアをそれらと差別化することに集中してしまう」ことは起こりづらい。
そうではなく「先行のアイディアの中でやれそうな方向性の物に沿って、何か作ってみる」になると思うんです。
成功事例を鵜呑みにする時の心情とよく似ている
これって、成功事例を鵜呑みにする時の心情とよく似ていると思うんですね。
成功事例はWeb上のコンテンツとしてたくさん見つけることができます。セミナーもやっています。それがヒキになることが分かっているからです、主催者側は。
ただ、じゃあそれをたくさん見ていれば何かしら自分たちの進むべき道が見えてくるかというと、違うわけです。
先ほどのレポートの結果が示すとおり、自分の思考の枠組みが狭まってしまうんです。
きらびやかな事例を見すぎるとむしろ思考の幅が狭まる
情報を収集する時、私たちは「自分たちの思考の幅を広げる」「ヒントを得る」など広がりを作るために行っていると思うんです。しかしどうやら、むしろ見てきた事例に引きずられて、
- その方向や手法でしか成功しないのではないか
- それを自分たちなりに実現するにはどうしたらいいんだろうか
と、無意識に方向性を狭めてしまうようです。
これは私の実感としても似ていて、考えることとその裏付けを取ること、順番を間違えると引きずられる。
具体的には以下の様な順序を私は取っています
- 自分の中で「こうあるべき」を考え
- 事例などではないできるだけ一次情報(お客さまの声やリサーチアンケートなど)で揉んで
- こういうのはどうだろうかと案を作る
- その上で、他社の成功事例があればぶつけてみて補正すべき所がありそうなら補正する
先に成功事例を見ると、無意識にそれを否定するなり肯定するなり裏取りの情報を無意識に選んで持ってきてしまうんですよね。
と、いろいろゴチャゴチャしましたが、改めて皆さんには「事例に振り回されない」「まずはじっくり自分たちのあるべき姿を考える」その上で検証のために事例含めいろいろな情報を取り込む、という流れをお勧めします。
そうしないと、失敗だけで済めば良いですが、自分たちに合わない靴を履かされたまま誰かに引きずり回されるような、負の遺産を背負ってしまうかもしれません。
自分の商売の舵取りは自分でやらないと、ですよね。
では今回は以上です。