“NegativeSEO“というものがあります。 以前からこの言葉は存在していました。
しかし、2012年にGoogleがパンダアップデートともに「ペンギンアップデート」を行い「SEOスパム」や「ブラックハットSEO」といったウェブスパムに対して断固たる措置をとる(Google公式記事)と発表したことで、一気に注目を集めました。
なぜなら、これを悪用することで他のサイトの順位を下げることができる可能性があるからです。
ネガティブSEOについては、記事にしようかいつも悩みます。
いろいろな意見がある所なので、中庸になるように書くために気を遣います。話題にされづらいトピックスかつ、確固たる情報や事例があまりないのでふわっとした話になってしまいます。
とは言え、それが実害があるにせよないにせよ、潜在的脅威として存在する以上は情報自体は仕入れておいたほうがいいと思います。なので今回は、NegativeSEOに関して、まとまった記事を1つご紹介します。
※2015年末頃のネガティブSEOがまだあまり話題になっていない頃に書いた記事です。ただ基本的な部分は今も変わっていません。Googleの対応能力は上がっていると思います(中山)
起業家かつマーケターでCrazyEggなどの共同創業者であり、ForbesのTOP10オンラインマーケターにも選ばれているNeil Patel氏のブログからです。
「The Beginner’s Guide to Monitoring, Fighting and Preventing Negative SEO」という記事、NegativeSEOを監視・戦い・防ぐためのビギナーズガイドとのことです。ビギナーズガイドにしては濃い内容となっています。
ネガティブSEOとは?(NegativeSEOとは?)
まずこの言葉の定義をしっかりさせておきます。ネガティブSEOとは
「誰かが、あるサイトの検索エンジンにおけるランキングを意図的に下げようとする試みのこと。様々な手法が用いられる。最も一般的なタイプのネガティブSEOは。リンクを用いたNegativeSEOだ。しかしそれ以外にもさまざまなテクニックが存在する。」
という定義です。(MozでのMarieHayne氏の言葉(→詳細はこちら))
具体的な手法としては「低品質なリンクを大量につけて、意図的に相手に不自然なリンクのペナルティを課そうとする」が最も一般的です。
一般的なのは不自然なバックリンクをあえて使うもの
最も一般的に行われていると言われているのが、バックリンクを使ったもので、
- スパムと認識されているサイトからのバックリンクを
- 短期間に極めて大量に
- 特定のキーワードで貼る
というもの。また、スパムと認識されやすいリンクとして
- アンカーテキストがキーワードマッチしすぎている
- リンク元サイトの品質が低い
- 好ましくないタイプのリンク(有料リンクなど)※そういう判定がなされているであろうサイトからという意味かと思います
- リンク本数が短期間に急上昇している
- それ以外の不自然なパターン
などの特徴をあえて持たせています。
これは「不自然なリンク」かつ「過剰SEO」です。 Googleはそういったものをウェブスパムと見なしています。
自分のサイトでそんなことをやれば、Googleからスパムサイトとみなされ、まずはWebMasterToolに、おかしなリンクがあるというメッセージが届き、そして順位が一気に下落します。
ネガティブSEOでは、それを他のサイトに対して行います。
それ以外にも意図的に他のサイトのランキングを下げようとする行為全般がNegativeSEOと定義されます。
例えば、スパム判定を受けたサイトから、ターゲットとするサイトに301リダイレクトをかけるというスパム攻撃などでしょうか。
詳細は書きませんが、様々な手段が行われています(ちなみに元記事にもつっこんだ詳細はありません)
海外でのテストでは
- 7,000のフォーラム
- 45,000のブログコメント
- 4000のサイドバーリンク
をもともとSEO的に問題のなかったサイトにぶつけたところ、順位変化が起きたと言われています。
海外SEOプロフェッショナル達も統一見解はない
今までは「とは言え、そんな簡単に順位を下げられたら苦労しないし、簡単にできてしまうから、Googleはそれを見越していて、効果はないんじゃないか?」といった、空気がありました。
ところが、前述したGoogleのWebSpam強化宣言、及びそれによる先日のペンギンアップデートの流れによって、
- 道徳的、倫理的にそんなことが許されていいのか
- 効果があるのではないか、それを証明している事例はないのか
- 効果があるとしたら、身を守るすべはないのか
といった議論が再燃しました。 実際効果があるとすれば、これを見逃すわけには行きません。
これは、言いかえれば、マラソンで、レース中に相手に攻撃することも許可されたようなものです。
純粋に身体能力を高めて勝つというルールが破られたということです。
リバースSEO(逆SEO)と勘違いされることが多い
ちなみに、ReverseSEO(逆SEO)と混同されることが多いです。リバースSEOは、あるキーワードについて、ターゲットサイトを蹴落とすために多数のサイトを上位表示させるという力技です。悪評をつけられやすかったりするサービスでよく使われますね。
「○○○ 解約」「○○○ 詐欺」「○○○ クレーム」など、特定の製品名で検索したときに、検索上位が「○○○は詐欺って本当?実際に検証してみた」などのタイトルで埋まっていること。
そして、どれでも内容は結局「詐欺ではないです!」という結論に至っているサイトばかりのことってありますよね?これはリバースSEO+風評対策のコンボですね。
事例:ネガティブSEOはいつから行われている?
厳密には分かりません。ただ、昔は今で言うブラックハット的な手法が「問題ない当たり前」の時代がありましたので、そもそも敵に塩を送るようなことはしなかったのではないかと思います。
実際、NegativeSEOという言葉が人々の間で話題になり始めたのは2012年4月以降、つまりは初回のペンギン・アップデート後からです。同年2012年10月にリンク否認ツール(DisavowTool)がGoogleから発表されたのも、実態と何か関係があるかもしれません。
事例1:seofaststart.com への攻撃?
「Dan Thies」という人がいます。 SEOerとして海外では有名な人ですが、このDanThies氏が運営していた「seofaststart.com」が、NegativeSEOによって、大きく順位を下落させた、という話があります。
実際にその「実行報告(?)」がTrafficPlanetというフォーラムで行われました。
今はもう閲覧できませんが「 CASE STUDY: Negative SEO – Results – Main Backlinks/SEO Discussion – Traffic Planet (リンク切れ)」というタイトルでした。
完全に私怨というか、マイナスな感情によるもので受け入れがたいのですが、ケーススタディとしては貴重かと思いますので、共有します。
seofaststart.comは、以前は順位が
- dan thies 1位
- seo 11位
- seo service 34位
- seo book 3位
でした。それが、彼らが「ネガティブSEO」を行ったところ
- dan thies – 1位
- seo – 1000位以下圏外
- seo service – 1000位以下圏外
- seo book -34位
となったとのことです。時系列的な出来事としては
- 3/15- Dan Thies が Matt Cutts に対してTwitterでスパム対策について賛辞を送るコメントをし、彼らの怒りをかった(らしい)、そしてターゲットに選ばれた。
- 3/18 – seofaststart.com に “seo” “seo service” “seo book” などのアンカーテキストでたくさんのリンクが付けられた(ただこれは恐らく本人がやったことで、彼らはやっていないそうです)
- 3/22 – seofaststart.com に彼らが 100万の scrapebox blast を行い始めた。アンカーテキストはすべて “Dan Thies”
- 3/26 – Dan Thies のWebMasterToolに「不自然なリンク警告」メッセージが来た
もともと、ちょっと不自然なリンク追加が途中であったのですが、その後100万のスクレイプボックスブラスト(簡単にいえばコメントスパム)を行った結果、WMTから警告が来て、そして先程のような順位下落につながったようです。
また、別途彼らは自分のサイトでも実験をしてます。そこでは純粋にNegativeSEOだけを行いました。結果としては、圏外といったものではないものの1位→13位といった下落がおきたと言われています。
事例2:Search Engine Watch に掲載された例
今回の内容に関わる部分を箇条書きにします。
- 2012年4月にペンギン・アップデートが施行された
- SEOコミニュティではネガティブSEOの可否について議論が行われ始めた。
- つまりは、逆に相手に多数の質の悪いリンクを付けることで順位を下げる、あるいはインデックスから削除できるのではないか、という可能性についての議論だ。
- Googleはリンク否認ツールを提供した。これで大きく改善の可能性が上がった。
- しかし、多くの人は、いざ自分のサイトがペナルティを受けてからようやく動き出している。
- 本当はリンク否認ツールも含めて「ペナルティを受ける前に」使い、動き出すべきなのだ。
一言でいえば「ホームページ運営者は、常に自分の身を守らなければいけない」ということです。
そうしなければ、同記事にアップされている以下のバックリンクグラフのように「突然不自然な量のリンクをつけられて」その結果アクセスダウン、といったことが起こる可能性があります。
※May1(5月)くらいから急にバックリンク数が増えています。自社で何もしていなければ、まずありえない動きです。1万5000以上のリンクが増えているので…(このデータはAhrefsのもの)
そしてこの後、オーガニック検索からのアクセス数は50%ダウンしたそうです。
当時、そして今も裏ではギグワークスでのサービス提供が行われている
こういったコメントスパムは、効力はないとされていますが、とはいえ一部のギグワーカーのマーケットプレイスでは、100万単位のコメントスパムを10ドル以下で販売している業者がいます。
今はもう、表向き「NegativeSEO」などと商品名に書くとBANされてしまうそうですが、NegativeSEOではなく普通の大量リンク販売サービスとしては商品にできます。「ペナルティになるかもしれないから気をつけてね」と書いてあるような、遠回しのケースも有ります(本当にそう思って注釈を入れているのかもしれませんが」
また、交渉することによって、対応してくれる業者は少なからずあるという話を聞いています。
そういった系のツールを使ってスパムをするのです。ボタンひと押しで5ドルもらえるなら、特に物価が安い地域では美味しい商売です。
混乱に乗じて良いリンクを外させることも
更に、ターゲットが「うちはネガティブSEOを受けている」ないし「何だか急に順位が落ちた」と感じていると思われる時期に、第三者を装ってそのホームページ管理者に対して「○○○というサイトからのリンクは悪いものだから外したほうがよいですよ」というメールを送るケースもあると。
この場合、当然○○○というサイトは「優良なバックリンク」です。それを混乱に乗じて外させようとするわけです。
…
それ以外にも手法としてはいろいろあります。
ある種突っ込んだやりかたとして、相手サイトのrobots.txtを書き換えるかマルウェアを感染させて、好き放題やるというケースも。ここまで行くと、もはや別の案件かもしれません。
ただ、特にWordPressなどはこの辺りの被害が少なくないので、セキュリティ系のプラグインを入れておくことは必須です。
マルウェアに感染した可能性が高い場合は、SearchConsoleに登録しているサイトなら、Googleが以下のメールアドレスに通知を送ってくれます。
- abuse@
- admin@
- administrator@
- contact@
- info@
- postmaster@
- support@
- webmaster@
サイトを関しているなら「SeachConsoleに登録」し「上記のアドレスを取得して、通知を受け取れるようにしておく」事が重要ですね。
関連ヘルプ → マルウェアとは – Search Console ヘルプ : https://support.google.com/webmasters/answer/163633?hl=ja
ちなみにマルウェアに感染すると以下の様なメールが送られてくるようです(元記事より引用、文字が小さいですが…日本の場合日本語で来るのですかね)
また、301リダイレクトを使ったものもあります。この辺りはGoogleは理論的に難しい部分だとしていて、悩ましいのかなと思います。あっちが立てばこっちが立たずの状況です。
対処としては…?
悪質なリンクなら検知できるので、比較的対処はしやすいです。とは言えリンク否認ツールは最終手段ですので
- サイト管理者に連絡してリンクを外してもらう
- 悪質な場合はホスティング会社に連絡して対応を請う
- リンク否認ツールを使う
という順番が、本来はよいですね。
とは言え、海外からのバックリンクであったり、ホスティング会社がそのサイトを明らかに悪質だと判断できない場合(適当に作られたバックリンクサイトなどでも、リンク一本のために凍結などは出来ないと思いますので)がほとんどですので、実質否認ツール頼りになってしまうかと思います。
バックリンクについては、定期的に差分を取って把握する体制をおすすめしたいです。
元記事にもAhrefsのNew/Lost機能が紹介されていますが、私もサードパーティ製のツールとしてはAhrefsをお勧めしたいです。
MozやMajesticsSEOは日本語化されていませんが、Ahrefsはフルスピード社が日本に持ってきたので日本語化されています。(上の画像は元記事のものなので英語です)
また、3年近く前の調査ですがAhrefsが最もバランスが取れていたので、私はそれから使い続けています。
→ 【決定版】SEOmoz(OSE)&Ahrefs&MajesticSEO…SEO調査ツール大比較 – Web戦略ラウンドナップ
本当に効果があったのか?他のSEOerの意見など
先程のデータだけを見ると、効果があったのか無かったのかというと、効果はあったのではないかと感じます。
ただ、彼らが自分自身のサイトに行った方は、10位程度の順位下落なので、Dan氏の突然のランキングダウンは、このネガティブSEOだけではなく、もしかしたらもっと他の要因も一書に絡んでいるのかもしれないなとも思います。
途中での”seo”などでのアンカーテキストの不自然な追加も関係があるかもしれません。
3.1.SEOBookのAaron氏の意見「他に原因があるのでは?」
Dan氏がAaron WallのSEOBookの記事にコメントを書いています。 GoogleBowling, Negative SEO & Outing | SEO Book.com この中でAaron氏は
「確かに一時的に効果はあるかも知れないけれど、そもそもあなたのサイトのように長い間運営されていてオーソリティがあり、他に自然なリンクがたくさんあるようなサイトなら、それほど効果はでないはずだ」
と、暗に、他に色々後ろでやっているせいではないか、もともとバランスの悪いサイトだったのではないか、と返答しています。
3.2.mozのRand氏の意見「効果がない」
mozのRand氏は「ネガティブSEOは効果がない、あると思うならやってみたらどうだろう、うちのサイトに」という姿勢です(Rand Fishkin Challenges You To Take Down SEOmoz With Negative SEO | SociableBlog) 考えようによってはポジショントークのようにも受け取れますが、この宣戦布告的な発言に対して、現実mozに今のところダメージはないようです。
終わりに
どこまでGoogleがやれているのか定かではありませんし、あまりレポートの上がってこない分野ではありますが、Googleに頼らずできるところは自前で対処していく覚悟が必要かなと思います。
とは言え、SEOについての一定のスキルがないと怖い部分はあります。特にリンク否認ツールは劇薬です。
SEOの基本的知識と情報収集はウェブに関わる人の基本スキルにすべきだといわれれば、たしかにそうなのですが現実問題として、難しいです。
日本にはたくさんホームページというより「ホームページ」があり、専任ではない人が空いた時間で一生懸命回しているケースも少なくありません。そこにSEOという泥沼の世界の知識を求めるのは酷です。
とは言え放置していいことでもないので、どうしたものかなと思うところです。
ネガティブSEOの話題は、いろいろ難しい部分も多いので、一部の紹介にとどめています。お悩みの方はご相談ください。
中小企業・小規模事業者の方々に向けて、ウェブの活用やホームページの戦略などについてWebコンサルティング、施策代行実施などを行っている、株式会社ラウンドナップ代表取締役の中山陽平です。中小企業のWeb活用をサポートし、そこからの反響獲得を実現させています。→プロフィール詳細はこちらから