第497回:情報を公開しても伝わらない、売り手も気づかない情報の差を考える

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

ホームページへ情報を出しているのに、お客さんの知りたいことが伝わっていない。もう十分に説明したつもりなのに、これ以上何を出せばいいのか分からない。こういう状況を考えるとき、売り手と買い手が持つ情報の違いから見直してみると、分かりやすくなると思います。

今回は、Webサイトが情報を公開する場として広がってきた流れと、その後に残っている情報の差について、私の見てきたことをお話しします。

売り手に聞かなければ、分からなかったことがある

売り手は、商品やサービスのことをよく知っています。自社のことだけでなく、業界の事情にも詳しい。一方で、買い手は同じだけの情報を持っていません。この違いを、ここでは情報の非対称性と呼んでいます。

Webで調べることが当たり前になる前は、買い手が情報を得る手段は限られていました。パンフレットが欲しければ、その会社へ問い合わせなければならない。良さそうな商品だと説明されても、本当にそうなのかを、別の情報で確かめるのは簡単ではありませんでした。

日用品なら、近くに使っている人がいて、新しく出た洗剤はどうだった、と聞くこともできたでしょう。でも、企業向けの商品になると、そうしたつながりがいつでもあるわけではありません。

営業の話を聞くことが、買い手にとって情報を得る機会にもなっていたわけです。売り込まれるのは嫌でも、とりあえず話を聞かなければ分からない。私は、そういう情報の差も、かつての営業活動が成立していた背景にあると考えています。

情報を先に出す会社が、お客さんの調べ方を変えた

そこへ、ホームページで情報を公開する会社が出てきます。問い合わせないと分からなかった価格を、先に見られるようにする。サービスの内容や、判断に必要な情報を、自分で調べられるようにする。そういう情報の先出しが進んできました。

チラシは手元に残る期間が限られますし、パンフレットは、まず手に入れなければなりません。Webなら、離れた場所からでも調べられて、必要なときに読み返すことができます。これは買い手にとって便利ですし、売り手にとっても、自分たちを知ってもらう方法になります。

情報を出した方が、結果的に問い合わせを得られる。そう分かって、公開する会社が増え、買い手も、調べてから問い合わせるようになっていった。私がこの仕事をしてきた中では、そうした変化が積み重なってきたと感じています。

ホームページは、売り手に会う前でも判断材料を手に入れられる場所になったんですね。だから、ただ会社の名前が載っていればいいわけではありません。お客さんが、ここへ相談してみようかと考えるための情報が必要になりました。

ただ、情報の公開が当たり前になれば、それで全部解決するかというと、そうでもありません。公開された情報と、自分が実際に受けるものとの間には、まだ分からないところが残っています。

情報があるのに、自分に合うかは分からない

商店街で考えると、以前は何屋さんなのかもよく分からない建物が並んでいて、扉を開けないと中が分からなかった。そこから、何を扱っていて、どのぐらいの価格帯で、どんな会社かが、外から見えるようになったというイメージです。

ところが、外に書いてある内容を信じて中へ入ったら、思っていた対応と違った。気になっていたプランは、もうやっていなかった。逆に、あまり期待せずに入ったら、自分が欲しかった別のサービスも扱っていた。こういう、外から見た姿と中の姿の違いは、皆さんも経験があると思います。

それを確かめるために、口コミや第三者の評価を参考にする。ただ、ほかの人にとって良いものが、自分にも合うとは限りません。誰かが満足したという情報だけでは、自分が使うとどうなのかまでは分からないんですね。

情報が増えた後も、「自分にとってどういうサービスなのか」という疑問は残ります。同じような説明をする会社がいくつもある中で、お客さんは自分が判断できる情報を探しています。ここまで公開しているのに、まだ足りないのかと思うのは、売り手の側から見た感覚なのかもしれません。

売り手自身が、足りない情報に気づいていない

ここで難しいのは、売り手が情報を隠しているとは限らないことです。お客さんはこういうことが知りたいはずだ、と考えてFAQを作っても、本当に知りたかったことが入っていない場合があります。出し惜しみではなく、その疑問があること自体に気づいていないんですね。

そうすると、単に情報をもっと出しましょう、では解決しません。まず、何を出せばいいのかに気づく必要があります。お客さん自身も、自分が何を知りたいかを、うまく言葉にできていないことがありますから、決まった質問を送れば必ず分かるという話でもありません。

例えば、営業とアフターフォローの担当が連携して、その人がどの段階で、どんな言葉を使っているのかを捉える。どういう問いかけをすると、ほかのお客さんも抱えていそうな疑問が出てくるのかを考える。そうした情報を受け取れる仕組みがあるかどうかです。

売り手もまだ気づいていない情報の差を、お客さんとのやり取りから見つけていくことが次の課題です。ここには、誰でもすぐ使える魔法のような方法は、なかなかないと思っています。聞く力や、お客さんを知ろうとする会社の姿勢が関わってきます。

そうして分かったことは、自社の大事な知識になります。何でもすぐに公開するのではなく、商談やヒアリングの中で生かすことも考えてください。そのうえで、誰へ何を伝え、文章や画像、動画など、どんな形なら伝わるのかを選ぶ。これ以上何を出せばいいのかと感じたら、その前に、まだ気づいていないお客さんの疑問がないかを考えてみてほしいと思います。

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