第523回:Web担当者を兼務で育てる、現場の仕事とデジタルを切り離さないために

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

Webに取り組みたいけれど、任せられる人がいない。中小企業の方から、こういうご相談をよくいただきます。そこでWebの専門家を一人採用しようと考えるわけですが、その前に、どんな仕事を社内で担ってほしいのかを考えていただきたいんですね。

私は、最初からWebだけを仕事にする人を置くよりも、営業や総務、製造などの仕事をしながら、兼務でデジタルの活用を覚えていく形が合う会社さんも多いと思っています。現場の仕事とWebの仕事を切り離さないためです。

お客さんや現場を知っていることが、Webの材料になる

商品を作るところと、それを売るところは、できるだけ近い方がいいんですね。売る側がお客さんから聞いたことを作る側へ返せますし、作っている人が知っている特徴も、売るときの説明につながります。ここが離れてしまうと、せっかく社内にある情報がうまく使われません。

Webでも同じです。業界の事情やお客さんのことを知らないまま、デジタルの知識だけで取り組もうとしても、何を伝えるのか、その材料が出てこない。お客さんが何に価値を感じているのかを知っている人が関わることに、意味があるわけです。

社内で持つべきなのは、何のために、誰に、何をするのかを考える力です。細かい制作作業まで、全部自分たちでできる必要はありません。そこは外へお願いすることもできます。ただ、何を作ってほしいのかまで、社外へ丸ごと預けてしまっていいのかということですね。

マーケティングを学んだ新卒の方が来たとしても、学んだことをその会社の仕事にどう合わせるかは、また別に覚える必要があります。社内の仕事を知り、そのうえでデジタルを身につけるという順番も考えてみてほしいんです。

専任者が必要になる前の段階では、兼務が合うこともある

中小企業で人を採るなら、まず営業や総務、製造といった、日々の事業を動かすために必要な仕事がありますよね。その仕事を担う方が、Webも使っていけるように育つ。初めの段階では、私はその形が現実的だと思っています。

もちろん、取り組むことが増えて、Webの仕事だけで十分な量があるなら、専任の方が必要になります。ただ、そこまで行っていないうちから専任者を置くと、やることを作るために仕事を増やしてしまうことがあるんですね。ずっとSEOの細かいことをしているけれど、それが今の会社に必要なのか、という状態です。

コンテンツを作るにしても、担当者一人で全部が完結するわけではありません。ほかの人から情報をもらうのを待ったり、返事を待ったりする時間が出てきます。その間、兼務であれば、本来の仕事に戻ることができます。

Webのためだけに一人を置くのではなく、実際の仕事量に合わせて役割を作ることが大切です。待っている間も仕事を作らなければならない形にするより、現場の仕事と行き来できた方が、会社としても無理がありません。

デジタルを教える人は必要だが、社内の判断まで渡さない

では、その兼務の方に誰が教えるのか。ここは考えなければいけません。自分で試行錯誤しながら覚えられれば、どうしてそうなったのかという過程も身につきます。ただ、日々の仕事をしながら、それを全部自力で進めるのは難しいこともありますよね。

そういう場合には、教えてくれるコンサルタントや制作会社さんなど、信頼できる方と一緒に進める方法があります。作業を頼むだけではなく、担当者が覚えていくことも含めて、関わってもらうということです。

例えば一年ぐらい一緒にやりながら、社内でできることを増やしていく。これは一年たてば必ず一人前になるという話ではなく、いつまでも同じことを外へ頼み続ける状態から、少しずつ変わっていくための考え方です。できるようになったら、そこは自分たちで進めていけばいいんですね。

外部の人には教わりながら、業界とお客さんを知る社内の人が判断できる状態を目指します。外の専門家が、社内の人と同じだけ業界のことを知っているとは限りません。その会社ならではの知識に、デジタルの使い方を加えていくことが大事だと思います。

担当する範囲をどう捉えるかは、第559回:Web担当という職種の枠から、仕事の目的へ目を向けるでもお伝えしています。作業の名前だけで、自分が関わる仕事を狭めないための話です。

Webだけの担当ではなく、会社の売り方を考える人を育てる

採用するときにも、Web担当という枠だけで探すのではなく、必要な仕事を担ってもらい、その中にWebを使って売っていくことも含める。こう考えると、育て方も変わってくるはずです。

マーケティングに関わる人が、Webは別の人の仕事だから分からない、という状態ではもったいないんですね。いろいろな売り方がある中で、デジタルも使えるようになる。会社の活動の中に、Webが入っている状態にしたいわけです。

とても小さな会社であれば、経営者の方がまず覚えて、動かしてみるのも一つの方法です。意思決定できる人が取り組めば、話は早い。そのうえで、ほかの人へ渡していく。ただ、会社が大きくなってきたら、経営者には経営者としてやるべき仕事がありますので、同じ形をずっと続ければいいわけでもありません。

人を一人採ればすぐに変わるというより、現場でデジタルを使える人を増やしていく話です。自社を知っている人が学び、仕事の中で使い、それを会社のやり方にしていく。専門家を探すことだけに目を向けず、そういう育て方も選択肢に入れてみてください。

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