第356回:中小企業のDXはどこから始めるか、経営者の関わりと業務効率化の順番

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

DXをやらなければと思っているけれど、何から始めればいいのか。詳しい人が入るまで待った方がいいのか。そうした段階の中小企業の方に、押さえていただきたいことがあります。

今回は、IPAの「DX白書2023」を読んで私が考えた、取り組む側としての四つのポイントをお話しします。大きな仕組みを一度に入れる話ではなく、経営者がどう関わり、どんな順番で前へ進むかという話です。

詳しい人を待つより、経営者が動ける状態を作る

DXが進まないとき、詳しい人が音頭を取るべきだとか、現場から声が上がるようにするべきだとか、いろいろな考え方があります。人材や社内の雰囲気が大事なのは、その通りです。ただ、それを変える判断を誰がするのかまで考えると、やはり経営者の役割は大きいと思います。

私が以前からWeb活用をお手伝いしてきた会社でも、相対していたのは経営者の方が多かったんですね。「こういうことをしたい」「これはどうなんだろう」と疑問を持ってきてくださる。そのやり取りの中で、ホームページやメールなどを改善し、集客の仕組みを作っていきました。

経営者自身が動くか、任せた人が動ける権限とお墨付きを与えるか。そのどちらかは必要だと思います。担当者を置いても、その人が何も決められなければ、会社としては進みにくいですよね。

予算や人材が本当に足りず、難しい会社があることは分かっています。一方で、「今は余裕がない」で後回しになっている場合には、優先順位の判断も含まれています。必要だと考えるなら、誰かが始めてくれるのを待つだけでは難しいんです。

最初からデジタルのことを全部知る必要はありません。分からないから後回しにするのか、分からないから知ろうとするのか。その姿勢から変えていくことが、まず一つ目だと思います。

取り組みやすいものが出るまで待ち続けない

もう少し業界がこなれてきたら、自社でも簡単に使えるものが出るのではないか。安く、分かりやすくなってから始めよう。そう考えたくなる気持ちも分かります。

ただ、新しい技術が出ることと、それが自分たちにとって分かりやすくなることは、同じではありません。使えることが増える一方で、高度な使い方も増えていきます。待てば自動的に、自社へぴったり収まるものが来るとは限らないんですね。

いつか取り組みやすくなるという期待だけで止まらず、自分たちから知りに行くことが必要です。そのためにも、すべてを一人で調べ、ゼロから考えようとしない方がいいと思います。

白書には事例がありますし、周囲で取り組んでいる会社から話を聞ける場合もあるでしょう。近くに同じようなことを得意とする会社があるなら、まず相談してみる。商工会など、相談できるところをたどっていくこともできます。

身近な会社が何をしているかを知ると、「自分たちもやってみよう」と思えることがありますよね。事例を読んで、どの部分なら自社でも試せそうかと分解する。そういう入口からで十分だと思います。

業務効率化と、提供する価値を変えることを分ける

白書では、業務変革を目指すデジタルオプティマイゼーションと、事業から社会までの変革を表すデジタルトランスフォーメーションを分けています。私はここを、既存の仕事を効率化することと、自分たちの提供する価値を変えることの違いとして考えると、捉えやすいと思いました。

ペーパーレス化や電子契約、書類をやり取りする工程を減らすことなどは、今ある業務の置き換えです。仕事自体は同じでも、かかる手間や時間を減らせる。これはデジタルオプティマイゼーションとして捉えられています。

一方、デジタルを使って、新しい商品やサービスを作れないか、お客さんに提供できる価値を広げられないかと考えるのが、トランスフォーメーションの側です。既存の改善と、自分たちの変化を分けて考えると、やろうとしていることが整理しやすくなります。

どちらが偉いという話ではありませんし、まだ手をつけていない会社なら、まず業務効率化から始めるのがよいと思います。いきなり自社を変革しようと言われても、どんな技術があるのかも分からず、難易度が高いですよね。

既存の仕事を置き換える中で、「技術を使うと自分たちにも良いことがある」と経験する。手間を減らし、そこで生まれた時間を次の取り組みに使う。こうした順番なら、組織として新しいものを取り入れる経験もできます。

逆に、新しい価値を提供しようと進める中で、営業活動をデータにしなければ傾向が分からないなど、既存業務の改善が必要になることもあるでしょう。二つを区別しながら、つなげて考えてほしいと思います。

行きたい場所を決め、軌道修正しながら進む

最後は、一発でうまくいくことを前提にしないということです。白書では、不確実性の高い状況で、柔軟かつ迅速に対応するためにアジャイルの原則に沿った取り組みを求めています。私はこれを、最初から一度で成功させようと構えるより、試行錯誤しながら進めていくということだと受け止めました。

ここで大事なのは、何でも試せばいいわけではないことです。自分たちはどこへ行きたいのかを決めたうえで、そのためのやり方を修正していきます。目的地まで曖昧なままでは、試したことをどう判断するかも分からなくなってしまいます。

具体的なやり方が浮かばなければ、事例を見るところからでいいんです。自社との条件の違いも考えながら分解し、取り入れられるものから試す。ゼロから独自の方法を考えることに、こだわる必要はありません。

経営者が学ぶ姿勢を持ち、まず足元の効率化を経験し、目指す方向へ少しずつ進める。詳しい人が来ることや、理想的な仕組みが出ることを待ち続けるより、相談できる相手と一緒に、最初の一歩を具体的にしていただければと思います。

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