第547回: CRM・MAツールが使われないのはなぜ?導入前に仕事の流れを整える

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

CRMやSFA、マーケティングオートメーションなどのツールを入れたけれど、使われていない。ライセンス料は払っているのに、結局は以前のやり方で仕事をしている。そんな状況になっていないでしょうか。

私は、こうしたツールの導入を最初から全面的に支援するより、すでに入っているものの再活用や、他社さんが進めている導入へのセカンドオピニオンを求められることが多いです。2025年初めにこの話をしている時点でも、数年前に導入したまま、使われていないという会社さんに出会うことがあります。

ツールで業務を効率化できたという事例もたくさんありますよね。では、何が違うのか。私は、導入する前に、会社の中で仕事の流れを共有できていたかどうかが大きいと感じています。

成功事例では、ツールを入れる前に何ができていたかを読む

私が普段読んでいる媒体で、導入がうまくいった事例を見ると、「こういう流れで仕事をしていたけれど、ここに時間がかかっていた。そこでツールを使ったら改善できた」という話が多いんですね。

細かな手順まですべて決まっていなくても、「会社として、こういう流れにしていきたい」という合意があり、その上でツールを入れている。ツールがあれば仕事の流れもできる、と考える前に、すでに社内で何を共有できていたのかを読んでください。

例えば、Webから見込みのお客様と接点を持ち、どの段階でどんなアプローチをし、営業の中で案件をどう回し、どうフォローして、どこへデータを残すのか。その流れがあるかどうかです。

そこがないところへ、ツールを入れることで仕組みも一緒に買えるのではないか、と期待してしまう。私が見る範囲では、それがうまくいかないケースの一つになっています。

仕事の仕組み作りと、ツールの習得を一度に抱えない

ツールの標準的な使い方を教われば、会社の中にもその仕組みができる。そう考えたくなる気持ちは分かります。でも、すでにいろいろな暗黙のやり方がある会社で、新しいデジタルの操作を覚えながら仕事の流れまで変えるのは、かなり難しいことです。

導入を強く進めたとしても、定着するまで支援を続けず、途中で「そろそろ現場に任せていいだろう」としてしまうと、以前のやり方と新しいツールの両方へ入力するだけになることがあります。あるいは、面倒だからもう使わないと、元へ戻ってしまいます。

慣れていない仕組み作りと、慣れていないツールの導入を、自分たちだけで同時に進めることは避けたいところです。大きなCRMだけの話ではありません。今まで見込み客への継続的な連絡をしていなかった会社が、メール配信を始めるくらいの単位でも、仕事の流れとツールの使い方を一緒に覚えるのはしんどいんですね。

もちろん、業務分析から支援してくれる人が入り、会社にも受け入れる準備があるなら、進め方は変わります。できたばかりの小さな会社が、これから全部作るという場合もあるでしょう。

あるいは、社内は仕組み作りと調整を担当し、ツールの設計や設定は外部に任せる。そうやって仕事を分けるなら考えられます。難しいことを両方とも自社で抱えてしまわないようにしたいんです。

まずは、慣れた方法で仕事を回せるようにする

では、何から始めればよいか。私がお勧めするのは、仕組みを先に作ることです。将来使いたいツールにどんな機能があるかは把握しつつ、最初は会社の中で慣れている方法を使って構いません。

紙の帳票でも、付箋の伝言でもよいんです。後から見たら効率が悪く感じるかもしれませんが、決めた流れに沿って実際の仕事が回る状態を、まず作ってください。

すでに流れがあるのに、見える形になっていない会社もあります。「こういう依頼は何々さんへ回す」「この場合は紙に書いて入れておけば、後は進む」。そういう暗黙の了解で動いているなら、最初にやるのは、それを分かる形にすることです。

仕事には流れがあり、その流れを変えると効率がよくなる。その感覚を会社の中で共有できたら、少しずつデジタルへ置き換えていく。そのときに合うツールを探す、という順番がよいと思います。

何の作業がなくなり、何が変わるのかを説明する

仕事の流れを意識していると、「今まで紙でやっていたここを、ツールへの入力に変える」と言われたときに、どこが変わるのかを理解しやすくなります。

反対に、流れが見えていないまま新しい操作だけ増えると、自分がやっていた仕事のどれが不要になって、どれが増えるのか分かりません。そこで現場が困り、上の人も有効な手を打てず、高いお金を払ったのに使われない、という状況になってしまいます。

新しいツールの操作と一緒に、今の仕事の何がなくなり、何が残るのかを伝えられるようにしてください。ツールが入れば、会社に合う仕組みが自動的にできるわけではありません。今ある仕事の流れを見えるようにし、効率よく進めるために使うものだと捉えていただきたいと思います。

導入期間には、慣れるまでの時間も見込む

費用や期間をどれくらい見積もればよいか、と悩むこともあるでしょう。これは私の感覚ですが、期間は、自分たちが考えている倍ぐらいかかるつもりで見ておいたほうがいいのではないかと思っています。

費用そのものは、そこまで変わらないかもしれません。ただ、社内の人件費や、慣れるまでにかかる手間、仕事が滞る分も含めて考えると、目に見える支払いだけでは済まないんですね。

正確に何倍になるという話ではありません。導入作業を終えればすぐに使いこなせる、と見込まず、会社の中で回るまでに時間がかかるという前提を持っていただきたいと思います。

ツールの標準的な使い方に、自社を無理に合わせない

ツールには、こう使ってもらうと効率がよい、という前提の流れがあります。自社の仕事をそこへ合わせる方法もありますが、これはかなりの荒療治だと考えてください。

見本がなくて、どう変えればいいか分からない。同じ業種や業態の会社が使っているツールの標準的な流れに、自分たちも合わせてみる。そういうやり方でうまくいく場合もあります。

ただ、会社の中には、よくも悪くも今の状況に合うようにできてきた流れがあります。まずは現在の仕事の流れを再現し、何が問題か分かるようになってから改善するほうが進めやすいと思います。

その中で数字が取れ、どこに時間がかかっているかが見えてきたら、その数字を使って周りと話し合い、効率化していく。ツールの都合だけで一気に変えるより、そのほうが周りも納得しやすいのではないでしょうか。

無理や無駄を減らすためにツールを入れたいという気持ちは、よく分かります。でも、順番を間違えると、かえって仕事が増えてしまいます。まず会社の中で仕事がどう回っているかを確かめるところから、始めていただければと思います。

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一人ひとりの仕事でツールを試す文化と、費用の考え方は、Podcast:ツールで楽をすることをためらわない(2022年12月26日)で、私自身の配信作業などを例にお伝えしています。

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