第546回: Webマーケの改善点が見えないとき、自分が買い手になった体験を振り返る

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回はCX、カスタマーエクスペリエンスについて、中小企業・小規模事業者の方が踏み出しやすい一歩をお伝えします。

きっかけは、ITmediaのCXに関する人気記事の振り返りを見たことです。システムを導入して改善した話や、コールセンター、大きな店舗の話など、記事になるのは対象の大きな事例が多いんですね。本屋さんやSuicaの記事を読んでも、自分たちの商売で何を考えればいいのかは、なかなか分からないかもしれません。

では、自分たちの改善点をどう見つけるか。今回お勧めしたいのは、「人の振り見て我が振り直せ」で、自分が買い手になったときの体験から見直すことです。

「うちのお客さんはこういう人」が、思い込みになっていないか

自分たちのことって、分からないんですよね。自社のサービスはよく知っていますし、「こういう場合にはこうだよね」というものがあります。「こういうお客さんが来ているに違いない」「こういう悩みを持っているに違いない」という固定観念も、積み上がっていきます。

「うちのお客さんは、ここを押さえておけばいい」「こういうお客さんを連れてくればいい」という答えがぱっと出てくるほど、私は結構怖いなと感じます。もちろん、正しければいいんです。でも、何となく作った「脳内お客様」が更新されないまま、その人に向けて施策を打っていることがあるんですね。

「お客さんはこういう人のはずなのに、なぜか当たらない。手段が悪かったのかな」。それで、SEOならSEO、広告なら広告、SNSならSNSの会社さんに頼もうとなる。そうすると、そもそも誰に向けているのか、最初に何を解きほぐすべきか、どんな順番で情報を伝えればいいのかが、見直されないままになってしまいます。

ただ、そこを見直すのは難しいんです。歴史が長いほど難しいし、過去にうまくいった経験があれば、なおさらです。「あの頃これでうまくいったんだから、合っているはず」と思う。でも、そのお客さんの価値観が変わっていたり、お客さん自体が入れ替わっていたりすることもあります。

買い手として、よかったこと・嫌だったことを書き出す

そこで、自分が買い手になった場面を見直してみてください。個人としても、会社としても、何かを買う側の体験はたくさんしているはずです。

自分たちの問題は見えなかったり、意識したくなくて見ないようにしたりします。思いついても、また押し込んでしまうこともある。でも、よくも悪くも、他人のあらは見えるんですね。「このサービスはここがよかったんだけど、ここがね」ということなら、指摘しやすいと思います。

他社のサービスを受けて、よかったこと、よくないと思ったこと、嫌だったことを、一度書き出してみるんです。できれば複数人でやって、まとめていくといいと思います。

ただ、ミーティングやブレストでやると、悪口大会になりかねません。そこは、うまく進行してくれる人が必要になります。

昔受けたサービスを最近また受けて、驚くほどよくなっていた。逆に、昔はよかったのにと思った。そういう場合は、何が変わったのか、その後ろにどんな変化があったのかまで考えてみます。

例えば、お迎えの対応がよくなくなった背景には、人材の問題があるかもしれませんし、お客さんに対する経営側の考え方が変わったのかもしれません。分からないことは多いですし、確定もできません。それでも、いろいろな可能性を含めて考えてみるということです。

提供する側のつもりと、欲しい対応のずれを見る

他社のサービスを振り返ると、「この会社はこう思っているんだろうけれど、お客さんとしては、そこは求めていないんだよな」と感じる場面があると思います。「それより、こうしてほしいんだよな」というずれです。

そのずれを意識した上で、自分たちが提供者になったときにも、同じことをしていないかと振り返ってみてください。

自分たちは、このタイミングで、この順番で進めるべきだと思っている。ここはお客さんの判断に委ねるべきだ、逆にここはこちらで予定を決めて進めるべきだと思っている。それが本当に、今のお客さんにとっていいのだろうか。他社で得た気づきをもとに、自分たちのサービスを見直していく形です。

慣れてくると、他社を鏡にしなくても、「自分たちがお客さんだったら」という目線にぱっと切り替えられるようになってきます。今対応すべきこと、今やった方がいいことを考えて動けるようになる。まだ難しいなら、他社という鏡を借りればいいんですね。

大きな仕組みが必要でなければ、日常の体験から進める

CXの仕組みを大きく考えることも大事です。ただ、システムや大規模なものが必要な段階でなければ、中小企業・小規模事業者は、こうしてアナログに顧客理解を進める方がいいと私は思っています。

メディアには、予算のある企業向けの情報が多く出てきます。対象が違うものをまねしても、あまり効果がないこともありますし、「これをやった方がいいのでは」と大きな予算を組んでしまうこともあります。対象の違う情報は、基本的に見送っていいと思うんです。

日常には、ヒントがたくさんあります。CXという言葉に限らず、買い手として感じたことをためて、自分たちの改善につなげるのは、すごく有効です。

サービスをよく知らない人の体験も聞いてみる

新しい人が会社に入ってきたときも、同じです。その人は、まだ皆さんのサービスをよく知らないですよね。顧客体験研修を行う会社さんもありますが、そういう状態だからこそ、一から体験してもらう意味があります。

入ったばかりの人が指摘するのは、ハードルが高いかもしれません。それでも、「ここが不安だった」「この情報は、もっと前の段階で欲しかった」という声を聞くことは、同じ観点から役立ちます。

「この段階ではこうしてほしかった」「この書類は、このタイミングで欲しかった」「ここでこういうものがあると安心する」。あとで知ったことを、もっと早く知りたかったという場合もあるでしょう。

会社さんによっては、商圏が違うなどの条件で、仲のいい経営者同士がお互いのサービスを体験することもあります。自分では分からないことの方が多いので、社内だけのブレストで何とかしようとせず、外の体験から気づきを得る方がいいと思います。

Webのデータに出にくいところを、現場の感覚で見つける

特に経営者は、自分のサービスについて「こういうものだ」というこだわりを持っている方が多いですよね。そして、こうした顧客体験の部分は、Web上のデータだけではなかなか見えてきません。

サイトの行動データから、いろいろな判断ができる状態にするには、かなりの量が必要です。月間のアクセスが3桁、4桁、多くても5桁の前半ぐらいの中小企業・小規模事業者では、難しい部分があります。データが得られても、知りたいところまで細かく見えないことがあると感じます。

「それはN=1の話でしょう」と言われるかもしれません。でも、現場の肌感覚から、改善につながる一つの気づきが出てくる可能性は高いと、私自身は感じています。

家族など、年代の違う人にも話を聞いてみてください。年末年始のように普段と違う買い物をする機会には、お客さん側として感じたことをメモして持ち寄り、年始にみんなで気づきを集めてもいいと思います。

改善のヒントは、自分たちの中だけでなく、市場や日々の行動にもあります。「これはうちでも使える」「うちもここがよくなかった」と、一人ひとりが気づけるようになる。その気づきを受け入れる雰囲気が会社にあれば、自分たちのサービスを更新し続けられるのではないでしょうか。

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お客様が全商品・全ページを比較するという思い込みは、Podcast 第487回:買うときと売るときの、選び方の違いで扱っています。

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