第571回:放置は危険… Google AIモードや ChatGPTが潜在的に持つ 自社の評判への脅威

第571回:放置は危険…Google AIモードやChatGPTが潜在的に持つ自社の評判への脅威

※2026年7月追記:本記事は2025年9月に配信したPodcastの内容を基に、現在のGoogle AIモードの仕様と、個人情報・機密情報を扱う際の注意点を補足しています。

GoogleのAIモード、日本上陸で問われる新たなウェブ戦略

Googleは2025年9月、日本語版の「AIモード」の提供を開始しました。AIモードは、質問を複数のサブトピックに分けて検索し、関連するウェブページへのリンクとともに回答を生成する対話型の検索機能です。

通常の検索結果に必要に応じて要約を表示する「AIによる概要(AI Overviews)」とは、関連していますが別の機能です。詳しい仕組みは、Googleによる日本語版AIモードの公式発表で説明されています。

しかし、競合や市場の動向を調べること以上に、まず確認すべき重要なポイントがあります。それは、「自社について検索した際に、生成AIがどのような情報を生成するか」です。今回は、生成AI検索の時代に必須となる「ブランド情報の防衛」という観点について、その重要性と具体的な対策をお話しします。

なお、AIモードを利用する際は、便利さだけでなく、入力する情報にも注意が必要です。Googleは、検索内容やAI機能の利用情報を機能の開発・改善に使用し、人間によるレビューも行っていると説明しています。

レビュー対象のデータをアカウント情報から切り離し、個人情報や機密性の高い情報を自動的に認識して削除する対策も示されていますが、機密情報を入力しないことが基本です。詳しくは、Google検索ヘルプ「生成AIの詳細」をご確認ください。

AIモードへ入力しない情報の例

  • 氏名、住所、連絡先など、個人を特定できる情報
  • 顧客情報、契約内容、未公開の価格や社内資料
  • パスワード、APIキー、Cookie、秘密鍵などの認証情報
  • 顧客名、内部URL、識別子、認証情報を含むソースコードやログ

また、組織のGoogle Workspaceアカウントでログインしているだけで、検索のAIモードが組織向け生成AIサービスと同じデータ保護の対象になるとは限りません。

実際に、大阪産業大学法政大学は、それぞれの学内アカウントでAIモードを利用する場合について注意を呼びかけています。業務で利用する場合は、アカウント名だけで判断せず、自社が利用を承認している製品と契約範囲を確認しましょう。

生成AI検索と従来の検索、その決定的な違いとは

なぜ、自社に関する生成AIの回答をモニタリングする必要があるのでしょうか。それは、生成AIによる検索では、複数の情報源を基に組み立てられた回答が、検索結果の目立つ位置にまとまった形で表示されるからです。

従来のGoogle検索とAI検索機能の主な違い
比較する点 従来のGoogle検索 AIモード・AIによる概要
情報の示し方 複数のウェブページを一覧で表示する 複数の情報をまとめた回答と関連リンクを表示する
情報の調べ方 利用者がページを開き、内容を比較する 回答から概要をつかみ、リンクや追加質問で詳しく調べる
注意したい点 情報を比較するための時間と手間がかかる 前提条件や更新日を確認せず、回答を信じすぎるおそれがある

単一の「答え」として提示されることの危うさ

従来のGoogle検索では、さまざまなウェブサイトが一覧で表示されます。利用者は複数のページを比較し、「この情報は信頼できそうだ」「こちらは異なる立場から説明している」と判断できます。

一方、AIモードやAIによる概要では、複数の情報をまとめた回答が先に提示されます。関連するウェブページへのリンクも表示されますが、利用者がリンクを開かずに回答だけを読むと、情報の前提条件、更新日、異なる見解を見落とすおそれがあります。分かりやすく整った回答だからこそ、その内容を事実として受け入れすぎないことが重要です。

個人情報や機密情報を入力しないことに加え、重要な判断では回答内のリンクを開き、発行者、公開日、更新日、根拠を確認しましょう。

医療、法律、金融、セキュリティなど、誤りによる影響が大きい情報は、公式情報や専門家の見解で確認する必要があります。

生成AIは「事実」を語っているわけではない

ここで理解しておきたいのは、大規模言語モデル(LLM)が、情報の正しさや善悪を人間のように判断しているわけではないという点です。LLMは、学習した言葉のパターンを基に、文脈に続く可能性が高い言葉を予測して文章を生成します。

そのため、事実と異なる内容を、もっともらしく回答する「ハルシネーション」が起こることがあります。Google自身も、生成AIは間違えることがあるため、回答を評価し、事実として示された情報を確認するよう案内しています。

ただし、GoogleのAIモードは、学習済みの知識だけを使って回答するわけではありません。質問を複数のサブトピックに分けてウェブを検索する「クエリ ファンアウト」を使用し、検索した情報を回答に反映します。不正確な回答は、主に次のような過程で生じます。

  • モデルによる生成:学習した言葉のパターンを基に、事実とは異なる文章を生成する
  • 情報源の選択:古いページや誤ったページを検索・参照する
  • 情報の要約:参照したページの条件や文脈を落とし、不正確にまとめる

生成AI時代に潜む新たな脅威「ブランドへの意図的な攻撃」

こうした特性は、悪意を持った第三者が、生成AIに表示される企業情報をゆがめようとするリスクにもつながります。

海外のマーケティング記事では、ウェブ上に偏った情報を繰り返し流通させ、AIが示す企業像をゆがめようとする行為を「Directed Bias Attack」と表現した例があります。ただし、これは広く標準化されたセキュリティ用語ではなく、提唱者による呼称です。

例えば、特定の企業に関する事実無根の情報を、複数のブログ、口コミサイト、掲示板などへ繰り返し投稿する手法が考えられます。こうした情報が検索・要約の対象に入れば、AIが示す企業像に影響する可能性があります。

実際に、これまでご支援してきたクライアントの社名やサービス名で生成AI検索を試した際、古い情報や、一件のネガティブなレビューブログの内容に回答が引きずられるケースが見られました。

これは、必ずしも第三者による意図的な攻撃があったことを意味しません。しかし、公開情報の不足や更新の遅れによって、第三者の古い説明が相対的に目立つ状況は起こり得ます。

私たちが今すぐ始めるべき「生成AI時代のブランド防衛策」

では、こうしたリスクに対して、私たちはどのように備えればよいのでしょうか。重要なのは、受け身ではなく、確認できる事実に基づいて自社の情報を管理する姿勢です。

1. 定期的なモニタリング

まずは、自社が生成AIによってどのように説明されているかを把握しましょう。ただし、モニタリングの質問に、顧客情報や未公開の社内情報を含めてはいけません。

  • 何を調べるか:会社名、サービス名、商品名、代表者名などを確認します。「会社名 評判」「サービス名 料金」「サービス名 解約」「会社名 採用」など、顧客や求職者が実際に調べそうな組み合わせも使用します。
  • どのサービスで調べるか:GoogleのAIモードに加え、自社の顧客が利用している主要な生成AIサービスを確認します。対象を増やしすぎず、継続して比較できる範囲から始めましょう。
  • 何を記録するか:確認日時、質問文、ログインの有無、回答、表示された情報源、事実との相違点を記録します。回答は利用環境や時期によって変わるため、結果だけでなく確認条件も残します。
  • どのくらいの頻度で調べるか:通常時は月1回を目安とし、新商品や採用情報を公開したとき、報道や炎上があったときは臨時に確認するなど、自社のリスクに合わせて調整します。

2. 問題を発見した場合の対処法

事実と異なる情報や、根拠を確認できないネガティブな情報が表示された場合は、次の順に対応しましょう。

  1. 回答を記録する:回答画面、質問文、確認日時、ログインの有無、表示された情報源を保存する
  2. 情報源を確認する:リンク先のページが、本当に回答内容を裏付けているかを確認する
  3. 自社の情報を更新する:自社が管理するページに古い情報がある場合は、現在の事実に合わせて修正する
  4. 第三者へ訂正を依頼する:第三者サイトに明確な誤りがある場合は、該当箇所と正しい情報を示す
  5. AIサービスへ報告する:回答自体に問題がある場合は、フィードバック機能から報告する

リンクが表示されていても、回答のすべての記述をそのページが裏付けているとは限りません。必ずリンク先の本文まで確認してください。

同時に、自社サイト、オウンドメディア、プレスリリースなどで、会社概要、サービス内容、料金、対応範囲、変更履歴といった正確な一次情報を継続して発信することも重要です。

これはAIの情報源を「上書き」するためではありません。検索サービスが、現在の正確な情報を発見・参照できる状態を整えるためです。

Googleも、AIモードやAIによる概要に表示するための特別な施策ではなく、信頼できるユーザー第一のコンテンツと、従来のSEOの基本が引き続き重要だと説明しています。詳しくは、Google検索の生成AI機能向け公式ガイドをご確認ください。

3. 法的対応を検討する前に記録を残す

生成AIが表示した誤情報への対応は、情報の内容、情報源、表示されたサービス、具体的な影響によって異なります。問題を発見した時点で、回答画面、質問文、確認日時、表示された情報源、事実と異なる箇所を保存してください。

個人情報、権利侵害、信用や取引への重大な影響が疑われる場合は、記録を保全したうえで、必要に応じて専門家へ相談しましょう。誰が法的責任を負うかを記事内で一律に断定するのではなく、事実関係と証拠を整理することが最初の対応になります。

まとめ:ブランド管理は「第二のウェブサイト運用」へ

Google検索へのAI機能の統合が進むにつれ、AIが生成する回答も、見込み客、取引先、求職者が企業を知る接点の一つになっています。一方で、AIモードへ入力した情報の扱いと、回答に含まれる誤情報の両方へ注意が必要です。

生成AIが示す自社の姿は、見込み客や取引先が目にする「第二の公式サイト」のような影響を持つ可能性があります。

自社サイトを定期的に更新するのと同じように、生成AI検索における自社の説明を継続して確認し、誤りがあれば情報源から修正する。この運用も、これからのウェブ担当者に必要な仕事の一つです。

まずは、個人情報や機密情報を含めずに、自社の会社名やサービス名でAIモードの回答を確認してみてください。回答だけでなく、どの情報源が使われているかまで見ることが、ブランド情報を守る最初の一歩になります。

Google AIモードの危険性と企業の評判管理に関するよくあるご質問

GoogleのAIモードとAIによる概要は何が違うのですか?
AIによる概要は、通常の検索結果に必要に応じて表示される要約です。AIモードは、追加の質問を続けたり、画像や音声を使ったりできる対話型の検索機能です。関連する機能ですが、同じものではありません。
Google AIモードは危険ですか?
利用するだけで直ちに情報が第三者へ公開されるという意味ではありません。ただし、個人情報や機密情報を入力しないこと、生成された回答をそのまま事実として扱わないことが重要です。重要な判断では、回答内のリンクを開き、公式情報や複数の情報源を確認してください。
AIモードに個人情報や機密情報を入力するとどうなりますか?
Googleは、検索内容やAI機能の利用情報を機能の開発・改善に使用し、人間によるレビューも行っていると説明しています。プライバシー保護の対策は示されていますが、氏名、顧客情報、契約内容、未公開情報、パスワードなどは入力しないでください。
Google Workspaceのアカウントでログインしていれば安全ですか?
アカウントへログインしていることだけでは判断できません。検索のAIモードと、組織が契約・承認しているGeminiなどの生成AIサービスでは、適用されるデータ保護や管理設定が異なる場合があります。利用前に、自社の管理者が承認している製品と契約範囲を確認してください。
なぜAIモードは誤った情報を表示することがあるのですか?
生成AIは言葉のパターンを基に回答を作るため、もっともらしい誤情報を生成することがあります。また、AIモードが検索した古いページや誤ったページを参照したり、情報を不正確に要約したりすることも原因になります。
自社の評判をAI検索で確認する際、何を調べればよいですか?
会社名、サービス名、商品名、代表者名に加え、「会社名 評判」「サービス名 料金」「サービス名 解約」「会社名 採用」など、顧客や求職者が調べそうな組み合わせを確認します。確認日時、質問文、回答、表示された情報源も記録してください。
AI検索で自社に不利な情報が表示された場合はどう対処すればよいですか?
回答画面と確認条件を保存し、表示された情報源が回答内容を裏付けているか確認します。自社サイトの古い情報は更新し、第三者サイトの明確な誤りには訂正を依頼します。AIの回答自体に問題がある場合は、サービスのフィードバック機能から報告してください。

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