第487回: Webマーケティングで重要な「マキシマイザーとサティスファイサー」思考とは?

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、セミナーでも少し触れた「マキシマイザーとサティスファイサー」という考え方についてお話しします。

バリー・シュワルツ氏の『なぜ選ぶたびに後悔するのか―「選択の自由」の落とし穴』で紹介されている話です。私が今回取り上げたいのは、自分が買うときと、お客様に売ろうとするときで、選び方の想定が変わってしまっていないか、というところです。

全部を比べて選ぶか、自分の満足点で選ぶか

マキシマイザーとサティスファイサーは、何かを選ぶときに、どういう考え方をするかという分類です。ただ、人がきれいに二つに分かれるというより、どちら寄りの考え方をするかと捉えてもらうといいと思います。

マキシマイザーは、比較検討できるものをすべて比較して、その中で最もいいものを見つけようとする考え方です。ショッピングセンターなら、自分に関係する商品を全部見て、その中から選ぶという感じですね。

サティスファイサーは、自分の中に満足できるポイントがあって、そこに達していれば「これでOK」とする考え方です。それを妥協点と呼ぶか、及第点と呼ぶかは人によって違うと思いますが、ざっくり言うとそういう違いです。

私がこの本から受け取ったのは、マーケティングの話というより、どうすればよりよく生きられるかという話でした。選択肢が多い中で、すべてを比べて最良のものを求め続けるのはストレスが大きい。自分の中に基準を設け、ほどよくサティスファイサーの考え方へ移っていった方がいい、という趣旨です。

この本は以前持っていたのですが、お客様とのミーティングであげてしまったと思うんですよね。オフィスへ来てもらったとき、「この本、いいですよ」と、本棚の本をどんどん渡してしまうんです。セミナーで紹介した後、主催の方から入手しづらいと聞いて、もう一度読みたかったな、と少し悔しくなりました。

お客様が全部を比較できるとは限らない

昔は、何かを選ぼうと思ったときに、きちんと比較できるWebサイトが数社分、10サイトもないぐらい、ということがありました。そのぐらいなら全部を見て、比較シートを作り、自分にとって最良の選択肢を選ぶ行動ができたんですね。

その結果、本当にいい選択ができたかどうかは人によります。それでも、少なくとも全部を比べるという行動はできました。

それに対して、選択肢が増えた中で同じことをするのは、ほとんど不可能ではないかと私は思います。もちろん、よほどニッチで、取り扱っているところが二つか三つしかないものなら、その中で全部を比較できます。先ほどの本も、売っているところが限られていれば、その中で決められますよね。

でも、多くの場合は、ショッピングセンターだけでなく、メルカリにあるかもしれない、ヤフオクにあるかもしれない、近所の誰かが持っているかもしれない、と選択肢が広がります。全部を比べきれないので、どこかで自分が満足できるものを選ぶ。皆さん自身も、お客様の立場では自然にそうしているのではないでしょうか。

売るときだけ、全部比較するお客様を想定していないか

ところが、自分が売ろうと思った瞬間に、頭の中でマキシマイザーのようなお客様を想定してしまうことが多いな、と私は感じています。

Webサイトには、他社との違いや強み、特徴を書きますよね。それを考えるとき、いろいろな競合サイトを調べて、「ここにはこう書いてある。あちらにはこう書いてある。だったら、うちはこう書けば選ばれるはずだ」と考える。

そこで、お客様も、自分が調べた競合をほぼ全部比較してから選ぶはずだという前提を、無意識に持っていないでしょうか。

買う立場に戻ると、「いや、別に全部は検討していないよな」と思うはずです。私も全部を検討していたら時間がいくらあっても足りませんし、だんだんそれ自体がストレスになってきます。

私は、値段がこのぐらいなら何分まで、と、決断に使う時間を自分の中で決めています。その範囲で検討し、ほどほどのところで「これでいい」と決めるようにしています。

もちろん、悩むこと自体を楽しむ、娯楽として比較するのであれば、それもいいと思います。ただ、何かを決めて、その先で何かを得たいのであれば、いつまでも悩み続けるのは合わないのではないかなと思うんです。

買うときには自分の満足点で選んでいるのに、売るときには全部を比較するお客様を想定している。このギャップは、かなり大きいと感じます。

選択肢を増やすほど、選びやすくなるのか

以前、自社のブログで、店頭に並べるジャムの種類が多い場合と少ない場合を比べ、少ない方が売れた、という話を紹介しました。記事の題名は「陳列するジャムは6個がいい?24個がいい?」というものでした。

ただ、この話の研究としての裏付けまで、私は追っていませんでした。ですから、ここでは私が以前紹介した話として聞いてください。肌感覚としては、確かにそういうことはあるかもしれないな、と感じたんですね。

たくさんの中から自分にとって一番いいものを一つ選ぼうとしているうちに、負担が大きくなり、買うこと自体をやめてしまう。選択肢が少なければ、「この中ならこれだよね」と選びやすい。選ぶことそのものが、ストレスになる場合があるという点を、私はこの話から考えました。

先ほどの本についても、私が受け取ったのは、最良のものを求め続ける考え方は非常にストレスがかかるので、ほどよく満足点を持つ方へ移っていった方がいい、ということです。

Webサイトを端から端まで見てもらえると思わない

自社のコンテンツを作るときも、お客様が全部の要素をびっしり見て比較してくれる、という前提にはしない方がいいと思います。特徴や比較ポイントだけでなく、Webサイトを端から端まで見てくれるとは考えないということです。

作っている側は、「興味がある人ならこのページも見てくれるはず」「こちらのページへ進んでくれるはず」と思いがちです。自分はどこに必要な情報があるかを知っていますし、お客様も選ぶために時間を使ってくれるだろう、と考えてしまうんですね。

でも、自分が買うときは、そこまで見ないことが多いですよね。よく分からなければ問い合わせてくれる人もいますが、面倒になって、そのサイトを見るのをやめる人もいます。そのことを押さえて、コンテンツを作った方がいいと思います。

スマートフォンでの比較を、一緒に見てみる

できれば、お客様や知り合いと一緒にWebサイトを見て、どういう順番で見るのか、他のページとどう比べるのかを確認してみてください。

パソコンなら、二つの画面を左右に並べ、Excelにメモしながら比較することもできます。でも、スマートフォンで画面を並べて比較するのは、かなり面倒です。一つのタブをしばらく見てから別のタブへ移ったら、再読み込みされて一番上へ戻ってしまった、ということもありますよね。

そうなると、頭の中に覚えている情報で比較することになり、一つのサイトがお客様の頭に残せる情報は、かなり少なくなります。お客様側にも負担がかかる。その前提で、最初に何を伝えるかを考えたいんです。

理想を言えば、キャッチコピーを一つ見せたときに「ああ、なるほど。それはいいな」と覚えてもらえるといいですよね。細かいことはいろいろあっても、「この考え方なら、ここはよさそうだ」と思ってもらえる。最初に興味を持ってもらう部分が、とても大切になります。

お客様が今、どこを比べているかを見極める

では、何がその最初の一言に当たるのか。それは、お客様が何を比較しているかによります。ここで言いたいのは、見込みが薄いか濃いかという話ではなく、その市場の中で、今どこが選ぶときの論点になっているかという話です。

ある程度成熟した市場では、「この部分は、だいたいどこも同じだな。でも、ここは違うな」という点が、ところどころにあります。お客様は、その違うところを比較対象にして見ていく。それ以外は、できていて当たり前という感覚で見てくるので、それはそれで怖いのですが。

だから、その比較されている部分を見極め、そこに響く内容を置いていく、という考え方をしてもらうといいと思います。

時間がたてば、市場の中のお客様の成熟度も変わります。前は通用した言葉が通用しなくなり、「今は違うポイントで選んでいるんだな」と分かれば、キャッチコピーも変える必要が出てきます。その変化に気づけることも、企業が強みを生み出すための力になると思います。

自分が選ぶときには、できるだけ少ない労力で、いいと思えるものを選びたい。お客様もそうかもしれない、と考えたうえで、どんな情報を伝えればいいのかを見ていく。キャッチコピー、トップページの構成、よく入口になるページで打ち出す内容を、そうした観点で考えると、選んでもらうための糸口が見つかるのではないでしょうか。

関連コンテンツ

比較に入る前にお客様が確かめたい情報については、Podcast 第583回:価格や利用条件を伝える順番で詳しくお話ししています。

自分が買う立場から顧客理解を見直す方法は、Podcast 第546回:買い手としての体験から自社を見直すも参考にしてください。

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