第251回: 提案が伝わらないとき、相手を理解するために見てほしい2つのポイント

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、お客さんのイメージやニーズがつかめない、いい提案をしているつもりなのに伝わらないというお悩みについてお話しします。お客様から質問されることもありますし、私自身も苦労してきたことです。

「どんな言葉なら伝わるのか」「どういう切り口やレベルで話せばいいのか」。そう悩んだときは、数字だけでなく、相手が暮らす風景や、生きてきた世界にも目を向けることをお勧めします。

データだけで、相手に合う提案を作るのは難しい

提案を作る段階では、企業のWebサイトや、ざっくりヒアリングした売上、目標数字などをもとに考えがちです。でも、それだけで作るのは、ものすごく難しいんですね。

もちろん、それでちゃんと提案できる方もいます。数字の裏にある情報を、意識的に、あるいは無意識に吸い取って、自然に相手に合わせられる人です。うまい先輩やトップの方は、それを無意識にやっていたりします。

私自身は、そういう天才型ではなくて、考えて考えてここまで来たタイプです。その人の見えているやり方だけをまねすると、大体失敗するんですね。

データは大事です。裏付けがなければ困ります。ただ、画像や動画などの定性的な情報も取り入れた上で、何をどう話すかを考えると、相手に合わせやすくなります。

「Webサイト」と言うのか「ホームページ」なのか。「売上」「利益」「プロフィット」、「コスト」「費用」のどれを使うのか。競合を持ち出すなら、どの会社を例にするのか。相手がイメージしやすいものを出すには、その人の生きている世界になるべく寄り添うことです。

現場に行かないと分からない、とよく言いますよね。電話やメールでは分からない情報が、その場にはたくさんあります。目で見えるものや音、匂いなどから受け取る情報もあって、そこから直感的に提案につながることがあります。

とはいえ、毎回訪問できるとは限りません。提案前に行くには費用がかかるし、どれぐらい見込みのある話か分からない段階では、工数を割けないこともある。そこで、訪問できないときに補える方法を、二つの切り口でお伝えします。

Point1 : 相手の現在の環境を、画像から知る

一つ目は、今の状況を知ることです。営業の方なら、問い合わせ先の住所が分かったら、ストリートビューを見ている方も多いと思います。

このとき、私は事務所の最寄りである志木駅の周辺を見ながらお話ししました。場所によって、雰囲気は全然違います。例えば、駅前の歯医者さんに提案するとしたら、その建物の前や周囲を見てみるんです。

窓にはどんな案内を貼っているか、見た目をどれぐらい整えているか。入っているビルはどういうところか。そうしたものを見ると、デザインや細かい部分をどれぐらい気にしている会社なのだろう、と考えられます。

周りを歩いている人、近くの競合らしい看板なども見えてきます。地元のお客さんが来る商売なら、「こういうところを歩く人が、自然に入ってこられるようにしたいんだな」と、想像が広がります。

相手が毎日見ている風景を知るだけでも、提案の幅や言葉の選び方が変わってくるんですね。

例えば、「お店の前を歩いている人の何人かが、こんなふうに入ってきてくれたらいいですよね」と話す。大きな窓から通行人が見えるなら、「あの人たちが、こちらに来てくれないのはなぜだと思いますか」と考えるところから始める。相手にもイメージが湧きやすくなり、認知の話などにつなげやすくなります。

訪問する場合にも、周辺を知っていれば気持ちが楽になります。分かっている情報が多いほど安心できるので、そこに余計なエネルギーを使わずに済む。周辺を調べてきたこと自体で、相手の反応がよくなることもあります。

自社に問い合わせる会社の共通点も見てみる

自社のマーケティングなら、最近問い合わせてきた会社の社屋や周辺を見ていく方法もあります。「うちには、こういう感じの会社から問い合わせが来やすいんだ」と気づくかもしれません。

そこで、なぜそういう会社が申し込んでくるのかを考える。自分たちのどこにひかれているのかが分かれば、発信にも、問い合わせへの対応や提案にも使えます。

現地の画像は、人間がいろいろな情報をくみ取る力を働かせてくれるんですね。当時はGoogleのストリートビューに加えて、Appleのマップでも同じ場所を見比べていました。違う時間帯の様子に見えたり、違う風景が見えたりする。ただ、両方を使わなければいけないということではありません。

地域のデータで、画像から得た印象を補う

画像で「こういう人が歩いているな」と感じても、数値が欲しくなることはあります。そこで、地域の情報を補うものとして、jSTAT MAPやRESASも紹介しました。

例えば、最寄り駅を中心に商圏を考えるとき、二人暮らしが多いのか、単身なのか、高齢者が多いのか。人口は減っているのか。この地域で商売を続けていく上で、どういうことを考えるべきか。そういう情報を見ていくわけです。

画像から得た情報を、地域の人口や産業などのデータで補う。私は地域の商売について考えるとき、こうした情報をかなり使っています。

アクセス解析の数字だけで改善提案をするより、特に地域で実際の商売をしているお客さんには伝わりやすいと感じています。ただ、データを出せば納得してもらえるというものではありません。どんなコメントを添え、どう提案するかには、経験やノウハウも関わってきます。

Point2 : 相手が生きてきた世界を、昔の映像から知る

もう一つは、特に経営層や、自分と年齢が離れた方に話すときにやっていただきたいことです。子どもの頃から今まで、その人がどんなものを見てきたかを、少しでも知るんですね。

私は大学で歴史を学びましたが、そのときにも感じたことです。生まれた時代や見てきた世界は、価値観や大事にするもの、目指すものに、かなり影響します。

「お金を稼いで会社を大きくし、従業員をたくさん雇って、大きなオフィスを構えたい」。そういう話に、「何の意味があるのだろう」と感じる人もいるでしょう。でも、その願いには背景があります。優劣の話ではありません。

相手の願望や、その人が見てきた風景を理解しようとすることが必要だと思います。

そこで私が見ているのが、YouTubeにある昔の地域の映像です。「昔の東京」などで探すと、白黒映像をリマスターしたものや、色を付けた映像などが出てきます。東京に限らず、相手の地域について探してみてもいいと思います。

例えば、1956年の銀座の映像と、1990年、1991年頃の映像を見る。街が変わり、成長していく過程を、その人は体験してきたんだと考える。その上で、今の相手に提案するわけです。

私も以前は、Webについていけない人に対して、少し時代遅れのように思っていたことがありました。でも、昔の映像を見ると、「こういう変化を経験してきたなら、その延長で会社を運営しようとするのもおかしくない」「突然出てきた若い業界を、まず疑ってみるのもおかしくない」と思うようになったんです。

それ以来、私自身が話す内容も変わりました。ただ今の時代についていけない人として見るのか、いろいろな時代を経験して今ここにいる人として見るのか。どちらの気持ちで話すかによって、価値の伝え方や、ニーズのくみ取り方は変わってくると思います。

付け焼き刃の昔話を、営業のきっかけにはしない

ただ、これは自分の心持ちを変えるためで十分です。映像を見たからといって、「昔はこうでしたよね」と付け焼き刃で話すと、うさんくさくなってしまいます。

その時代を研究していたなど、本当に詳しいのでなければ、アイスブレイクに使おうとは考えない方がいいです。相手を理解するための、自分の内面の問題として取り組むものなんですね。

私は昔の映像が好きなので、つい見てしまいます。好きな方は、ほどほどにした方がいいかもしれません。ただ、「こういう時代を生きてきた自分と、こういう時代を生きてきたあなた」という立場で考えると、何をどう話せばいいかが、自然と浮かんでくると思います。

今いる場所の風景を知り、データで補い、その人が生きてきた時代にも目を向ける。今作っている提案書も、そういう観点で見直せば、順番や言葉、データの伝え方が変わるのではないでしょうか。

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お客様から直接得た情報を改善へつなげる考え方は、Podcast 第498回:顧客からの直接の情報を、商品やサービスの改善に使うで扱っています。

相手に伝えたいことからデザインを考えるときは、Podcast 第155回:デザインより先に、何を伝えるかを考えるも参考にしてください。

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