ペルソナは役に立つ、役に立たないのはやり方が悪いからだ、あるいは、役に立たない、ただのキャラ作りになってしまうから、時間の無駄だ…。マーケティングにおいて賛否両論・多種多様な意見がある物の1つが「ペルソナ(PERSONA)」作りです。
実際確かに「ペルソナを作ってはみたのですが、どう活かせばいいのか分からずお蔵入りになってしまいました」「ペルソナを実際の施策レベルまで落とし込むことができません」といった声は、少なからず聞きます。
では実際どうなのでしょうか。
私は「意味のあるペルソナを作れば、意味がある」と考えています。つまりは作り方と意識の持ち方の問題だと思っています。では、具体的に何を考えれば良いのでしょうか。
前提:ペルソナは「顧客全てをカバーする存在」ではない
ペルソナ=その人だけに売る、という意識を持つとうまくいきません。なぜなら
- ペルソナに当てはまらない人を軽視してしまう
- ペルソナを狭くしすぎるとお客さんが減る気がして、ペルソナが具体性を失い、曖昧になる
といった問題を引き起こしがちだから、です。
ペルソナはいろいろなお客さんの性質を合わせたパッチワーク
ペルソナはパッチワークだというイメージを私は持っています。
様々な考え方・目的・デモグラの人がやってくる中で、ある程度共通点が見いだせます。そしてそれは1つではないはず。その中で、相反する物は除いて、ある程度幅を持った物を作っていきます。
例えば「男性」「30〜50代」「ホームページを見るのは会社で」「チームの生産性について悩みを持っている」「上司から生産性についてよく指摘されている」「検索スキルはある」「月額10万円くらいの予算は出せる」などです。
また、直接購買する人以外のペルソナがあっても良いですね。影響力がある人/ステークホルダーが周りにいることが多いなら。ペルソナを1人に絞る理由はありません。
例えば先ほどのように「上司」が大きな意思決定要因になっているなら、上司のペルソナを軽く作っても良いのではないでしょうか。軽くというのは、詳細化が難しいので、ぼんやり作るくらいにとどめておいた方が良いという意味です。
なぜなら、そこを見越したコンテンツを作ることができるからです。有名所だと「分かりづらい商品や提案書造りが面倒そうなら、提案書ひな形をダウンロードできるようにする」などですね。
妄想の世界に入ると目的と手段が一体化してしまいます。
隠れた共通の性質を探そうと躍起になるのは危険
また、この後紹介するContent Markerting Instituteの Marcia Riefer Johnston氏の記事にあるのですが、何か宝探しのように「隠れた共通点を探す」ことは止めた方がいいと述べられています。
具体的には
「多くの人が、顧客の中で独特な性質を見つけると、興奮します。「これはすごい、これに焦点を当てよう」と考えるのです。問題は、もし赤い靴を履いた人に焦点を当てる場合、白い靴を履いた人はすべて見過ごしてしまうということです。」
引用:Buyer Personas You Want to Use: The 9 Essential Parts
ということです。分かりやすい共通点を積み上げれば良い、と。
イメージできないときは、直近のお客さんを想像してもらう
とは言え、コンサルの中でも、お客さんに対して質問をしてみても、イメージがわかないと悩まれる方も多いです。その場合、3名から5名くらいでしょうか。直近で、満足してもらったかつ、会社としてもまた来てもらいたいお客さんについて、教えてもらいます。
その上で、その中から、共通点をこちらで作ってペルソナにします。情報が足りなければ電話したりなどして、リサーチしてもらいます。
なぜこれがよいかというと、事実を言ってもらえばいいので、とても情報を出してもらいやすくなるからです。(※プライバシーなどには配慮してもらって下さい)
改めてペルソナ作りのポイント
三人称で説明してはいけない、一人称で語らせる
また、先ほどのCMIの記事で興味深いのは、人称の問題です。ペルソナを作るときにその説明を、第三者的、つまりは客観的に書いてしまいがちだと思います。
しかし、そうではなく一人称にした方が気づきが多いと述べられています。
例えば引用すると
×「ダイアナはより効率的に商品を売り出すことを求められていて、とても忙しい」
○「私は市場に商品をより早く届けることに苦労しています。なぜならそのプロセスはとても複雑で、私の上司は、それを変えることは混乱を招くのではと危惧しているからです。」
こういった、生々しい言葉でペルソナを彩ってあげる方が洞察できる物が増えると述べられています。
なぜなら、ペルソナは定性的な分析ですから、気づきや洞察をどれくらい得られるかはとても重要だからです。なので、こういった会話の方が良いです。
そういった意味でも、実際のお客さんを想像してもらうというやり方は、重宝しています。
できるだけニーズは具体化させる
ニーズの設定を大まかに
- 「売上を上げたい」
- 「効率を良くしたい」
とだけ考えて止まってしまうと、例えばどんなコンテンツを書いたら良いか、その方向性が見えません。
そうではなく
- 半年後にウェブから10人の成約を取らないと、降格の危険性がある
- 今の体制で○○を自動化しないと、サービスのリリースが1ヶ月遅れる
などまで具体化できるように、買い手のリサーチを行う必要があります。
なぜなら、具体的なニーズを把握できていれば、それに対するストレートなQandAコンテンツを書いていくことができるからです。
これは、まさにRiverPoolandSpa社がやった「FAQをひたすらリッチにコンテンツとして書き続ける」に当たることです。この辺りは昔記事にしているので、よろしければご覧下さい。
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「Top 5 Fiberglass Pool Problems and Solutions(ファイバー製のプールでよく起きるトラブル5つと、その解消法)」というコンテンツである。このページを実際に見た時、文章の量は予想以上だったのではないだろうか。大体半角で10,000文字以上ある。単純に日本語と英語を比較できるものではないが、日本語であれば4,000から5,000文字くらいの分量だ。
このようなコンテンツはこれだけではない。経営者であるMarcus Sheridan氏はこのようなページをあっという間になんと800ページ以上作成した。「買い手が悩んでいることを、詳しく詳しくサイトに載せた」のだ、それも大量に。
最初のニーズを把握し、その後どんな疑問を持つかも考慮する
買い手は、様々な判断基準を持っています。
費用はこれ位、こういうものがいい、アレも必要…など。しかしそれは並行して同じ優先順位で持っているわけではなく、「まずこれがないとダメ」その次に「あれとこれについて比較して良い方にしたい」「同じならこういうものがいい」と、かなりシーケンシャルに判断を行っていきます。
一つ一つの障害を、きちんと順番にクリアしていかなければ、購買してもらうことはできません。
買い手に対してアピールするメッセージが、買い手にとっては最後に検討する内容だったとしたら、そのセールスメッセージが響くことはないですよね。
きっと買い手は「いや、その前に知りたいことがあるから」と思うのではないでしょうか。
そういう観点で、ペルソナとして設定した買い手のニーズの優先順位と検討順番も、ペルソナの周辺情報の中に取り入れることをお勧めします。(この辺りを基にしたコンテンツ設計が、戦略的なコンテンツ作成のコアな部分だと思います)
終わりに
ペルソナは、なかなか扱いが難しい物だなと思います。とは言えしっかりと自分たちが誰に何を売り、それは何を解消してあげて価値提供となっているのかを考え、統一することはマーケティングでは必須です。
そのためにペルソナは1つのツールとして役立つ物です。しかし、人間が元々持っている物語作り好きの性質がそこに強く表れると、実際のお客さんと離れていきますし、洞察も得られません。
チームできっちりコントロールしながら、現実を第一にしてペルソナを維持管理していくのが良いと思います。目の前の現実が常に正しいですので固執したら負けです。
作ったことがない方は、作ってみる、作っている方は、この記事のような観点を取り入れてみる、そんなきっかけになれば幸いです。作ってみて悩んだらお気軽にご一報下さい。
中小企業・小規模事業者の方々に向けて、ウェブの活用やホームページの戦略などについてWebコンサルティング、施策代行実施などを行っている、株式会社ラウンドナップ代表取締役の中山陽平です。中小企業のWeb活用をサポートし、そこからの反響獲得を実現させています。→プロフィール詳細はこちらから