中小企業のWebマーケティングとは?戦略から考える実践手順

中小企業のWebマーケティングとは?戦略から考える実践手順企業がWebサイトを活用しよう、そうだWebマーケティングにきちんと取り組もうと考えた時、陥りがちなのが、

「SEOを始めよう」「広告を活用しよう」「認知度を上げるためにPRを行おう」など、

手法から考え始めることです。

しかし、私の経験上、こうした手法から入る進め方では成果につながらないケースが多いです。

なぜなら、Webマーケティングでは、最初に「何を実現したいのか」という目的を決め、その目的に合う施策や手法へ落とし込む順番が必要だからです。

そこでこのページでは、Webマーケティングとは何かを押さえた上で、実際の進め方をまとめていきます。

自社も関わりながらの実践の中にしか答えはありません

事業の目的や対象顧客は、企業ごとに異なります。地域性や個別性が高い中小企業では、なおさらです。

そこで、経営者やWeb担当者は、まず目の前の顧客が自社を知ってから購入・継続へ進むまでに、どのような接点をたどったのかを書き出すなど、今までの経営や現場の経験をもとに生の情報や体験が絶対必要です。つまりは、Webに詳しいだけでは成果は出ないのです。

Webの専門会社に丸投げして成果が出ないのはそのため。Webの知識と現場の知識の両方が必要なのです。かといって、社内にWeb部門やチーム、Web担当者の経験者採用をしなければいけないわけではありません。役割分担すればよいのです。このあたりは以下のページもご覧ください。

→ 中小企業におすすめのWeb活用体制とは?

1. Webマーケティングとは何か

企業は、顧客が自社や商品を知る前から、比較、問い合わせ、購入、継続へ進むまでを支援することで顧客を生み出していきます。マーケティングファネル、カスタマージャーニー、いろいろな呼び方はありますが、大枠は同じ。ボトルネックを潰す、伸ばせるところは伸ばす、そういった「点」ではなく「線」や「面」が重要です。

その上でざっくりと述べると「営業・マーケティング全体の計画を、Webサイト、検索、広告、SNS、動画、メール、Podcastなどの活動へ落とし込み改善のサイクルを回す」その一連の取り組みが、Webマーケティングです。

Webマーケティングは新規集客だけを目指すものではありません。集客がボトルネックあるいは最も効果的な改善点であることが多いため、Webマーケティング=Web集客、と思われがちですが、営業活動のうちWeb画家か悪者すべてに視野を広げることが必要です。

例えば以下のような物です。

顧客の状況 企業がWebで支えること
自社や商品をまだ知らない 検索、広告、SNSなどを通じて、新しい接点を作る
解決策や依頼先を調べ、比べている 選び方、費用、実績、条件、自社の違いを伝える
問い合わせや購入を検討している 不安を減らす情報と問い合わせまでの流れを示し、営業へつなぐ
商品やサービスを利用している 活用情報やサポートを届け、継続、再購入、紹介へつなげる

また、顧客は、Web上だけで意思決定するとは限りません。Webで得た反応を営業や顧客対応とつなぐことも必要です。O2O(Online to Offline)、オムニチャネルといった言葉や、CRMやSFAとの接続、フィールドセールスやABM(アカウントベースドマーケティング)などがこのあたりに関わる概念です。

Webを活用する会社が少ない時期はWebだけ見ていれば成果は出ましたが、今やWebサイトが必要なのに持っていない会社は少数、オンラインとのつながりも最適化していかないと、勝てないのです。

2. Webマーケティングはこの順番で考える

Webマーケティングでは、事業目標から成果の評価までを、ステップで捉えると分かりやすくなります。これはここの企業でカスタマイズしていくのがよいですが、例えば以下のようなステップをたたき台にするとよいと思います

  1. 事業目標(KGI)
    何を成果とするか
  2. 対象顧客・提供価値
    誰に何を届けるか
  3. 顧客の大きな流れ
    どこで接点を持つか
  4. 最も大きな問題
    顧客が進めないのはどこか
  5. 戦術(施策)
    何を実現するか
  6. 手法
    どのように実行するか
  7. 実行体制
    誰が判断し、誰が実行するか
  8. 成果の見方(KPI)
    何を見て次を決めるか

Why – What – Howのゴールデンサークル理論も押さえるとよりよいかもしれません。

この順番を理解するために、戦略、戦術(施策)、手法の違いだけを短く見ておきましょう。

用語 決めること
戦略 事業としてどこを目指し、限られた資源をどこへ使うか 新規商談より継続利用を優先し、既存顧客向けの発信へ予算を配分する
戦術(施策) 戦略を実現するために、何を実現するか 比較時に選ばれる理由を伝える、問い合わせ後の商談化率を高める
手法 決めた戦術を、どのように実行するか SEO、検索広告、SNS運用、事例、Q&A、動画、メール、Podcast、ページ改善

この3つは、Webマーケティングを進める順番を考えるための道具です。言葉の暗記が目的ではありません。より詳しい違いは、「Web戦略」の定義と施策との違いで扱っています。

3. まず、事業目標と対象顧客を決める

企業が最初に決めるのは、Webで何をするかではなく、事業として何を実現したいかです。

悩んだら以下の5つを考えてみてください。

  1. 何を実現したいか
    新規商談を増やす、休眠顧客と再び接点を持つ、特定サービスの売上を伸ばす、継続率を高めるなど、事業上の目標を決めます。
  2. 誰に選んでもらいたいか
    対象とする顧客、顧客が困っている場面、比較する内容、意思決定に関わる人を明確にします。
  3. 顧客はなぜ自社を選ぶのか
    顧客に届ける価値、他の選択肢との違い、顧客が選ぶ際に感じる不安、判断に必要な根拠を言葉にします。
  4. 現在、顧客とどこで接点を持っているか
    紹介、営業、店舗、展示会、検索、広告、SNS、電話などを書き出し、商談や購入につながっている経路を見える化します。
  5. 何を成功とし、どこまで実行できるか
    問い合わせの内容、商談化、受注、継続などの成功条件と、使える予算、人員、期間、専門性を決めます。

対象顧客や選ばれる理由は、売り手の想像だけでは決められません。

問い合わせ、失注、継続顧客への聞き取りを通じて、最初に立てた仮説を実際の顧客の反応と照らし合わせます。ずれがあれば、対象顧客や伝える価値を見直します。

この5つが、Webマーケティング戦略の土台です。次に、この戦略を実際の顧客の動きと照らし合わせます。

4. 顧客が自社を知ってから購入・継続するまでを描く

紹介、店舗での接客、営業活動、検索流入、広告流入、SNSなどを、オンラインかオフラインかで分けることはおすすめできません。片方だけで判断するケースは実際少ないですよね。

では具体的にどうなのか?については、いわゆるカスタマージャーニーを関係者を集めてブレストするのがよいです

顧客との接点と、その後に起きる行動を順番に書き出します。

  1. 顧客が自社を知るきっかけを、実際の流入元や紹介経路から書き出す
  2. 顧客が比較し、問い合わせや購入を決めるまでに触れる情報と、対応する担当者を時系列で並べる
  3. 問い合わせ後の商談、購入、利用、継続までをつなぎ、顧客が次の段階へ進めていない場所を示す

この大きな流れを1枚に描くことで、新しい顧客との接点が少ないのか、比較に必要な情報が足りないのか、問い合わせ後の対応が遅いのかが見えてきます。

そして大事なのは、それをきちんと実際にそうなのかお客さんにインタビューしたりして確認すること。いわゆる「脳内お客様」になってしまったら、すべてが無駄になる可能性もあります。

5. 最も大きな問題を1つ見つける

そして、描いた大きな流れの中から、事業成果への影響が最も大きい問題を1つ選びます。

問題を絞らないまま手法を増やすと、予算や担当者の時間が分散し、どの取り組みが成果に影響したのかも判断しにくくなります。

次の表では、企業で起きている出来事や課題に対し、改善の方向性と具体的な施策を対応させています。

出来事・課題 改善の方向性 具体的な施策
訪問はあるが問い合わせが少ない 訪問した人の目的とページ内容を合わせ、比較に必要な情報を補う サービスページ、関連ページへの案内、問い合わせフォームを改善する
問い合わせは増えたが商談に進まない 問い合わせ数ではなく、対象顧客と商談化率を重視する 広告の対象と表現、価格・条件の伝え方、問い合わせ項目を見直す
返信が遅い、担当部署へ届かない Webの手法を増やすより先に、社内の対応手順と責任者を決める 通知先、一次対応の担当者、返信期限、商談への引き継ぎ手順を決める
新規顧客を獲得し続けなければ売上を維持できない 新規集客だけでなく、継続、再購入、紹介にも予算と時間を配分する 既存顧客向けの活用情報、メール、セミナー、紹介の仕組みを用意する

例:表面上の要望と、実際の問題が違う2つのケース

例えば、企業が「アクセスを増やしたい」と考えているとします。

しかし、顧客が進む大きな流れを見ると、アクセス数は必要な量に達している一方で、サービスページを見た顧客が比較に必要な情報を得られず、問い合わせへ進めていない場合があります。手段の目的化がされていると多いケースですね

  1. 現状: アクセス数は足りている
  2. 問題: サービスページで、顧客が選ぶ理由や不安への答えを得られない
  3. 戦術(施策): 比較時に選ばれる理由を伝える
  4. 手法: サービスページ、事例、Q&Aの内容を改善する

この場合、SEOや広告を増やすより、ページの内容を改善する方が、最も大きな問題の解決につながるわけです。それを考えず「もっともっとアクセスを増やせば良い」としていくと、ずっと問題は解決せず投資対効果は上がりません。

他のケースとしては、企業が「問い合わせを増やしたい」と考えていても、すでに十分な問い合わせがあり、返信の遅れや担当者への引き継ぎが商談化を妨げている場合があります。

その場合の戦術は問い合わせ後の対応を改善することであり、具体的には通知先、一次対応の担当者、返信期限、商談への引き継ぎ手順を決めることが有用です。

6. 問題に合わせて戦術を決め、手法を選ぶ

最も大きな問題を決めたら、その問題を解決するために「何を実現するか」を決めます。これが戦術(施策)です。その後で、顧客の行動、成果を判断できるまでの期間、自社の実行力を照らし合わせ、戦術に合う手法を選びます。

同じ手法でも、どの戦術に使うかによって役割や見るべき成果が変わります。例えば、SNSは知名度の向上にも、既存顧客との関係づくりにも使えます。また、事例コンテンツは、比較中の顧客に選ばれる理由を伝える場面と、商談中の顧客の不安を減らす場面の両方で使えます。

次の表では、代表的な戦術と、その戦術で選択肢となる手法を対応させています。

戦術(施策) 顧客に起こしたい変化 選べる主な手法 手法を選ぶ前に明確にすること
新しい顧客候補との接点を増やす 自社や商品を知る SEO、検索広告、SNS、紹介を促すコンテンツ 対象顧客、顧客が情報を探す場所、接点を作った後の受け皿
特定の市場で知名度を上げる 必要になったときに自社を思い出す SNS、動画、Podcast、メール、継続的な情報発信 知ってほしい相手、覚えてほしい価値、継続できる発信体制
比較時に選ばれる理由を伝える 自社と他の選択肢の違いを理解する サービスページ、事例、Q&A、比較記事、動画、営業資料 顧客の不安、比較する項目、自社を選ぶ根拠
問い合わせや商談へ進みやすくする 不安を減らし、次の行動を選ぶ サービスページ改善、フォーム改善、料金・流れの明示、営業連携 顧客が次の段階へ進めていない場所、必要な情報、問い合わせ後の対応
既存顧客との関係を深める 活用を続け、再購入や紹介へ進む メール、Podcast、活用記事、サポート情報、利用者向けセミナー 継続する理由、利用後の課題、顧客へ届ける頻度

手法を支えるコミュニケーション媒体が「Webサイト」や「コンテンツ」

SEO、検索広告、SNS、メールなどの手法を使っても、顧客へ届ける内容がなければ、理解や比較は進みません。企業はコンテンツを通じて、記事、事例、動画、Podcast、Q&Aなどのコンテンツを通じて、顧客の疑問に答え、自社を選ぶための根拠を伝えます。

※コンテンツ=営業トークのようなものです。そういう意味では「コンテンツマーケティング」という言葉は意味が分かりません。「会話で営業する」のようなものですよね。

Webサイトは、各手法で接点を持った顧客が、商品や会社を理解し、比較し、問い合わせるための受け皿です。

訪問があっても問い合わせや購入へ進まない場合は、新しい集客手法を増やす前に、ページの内容と問い合わせまでの流れを改善していきましょう。

7. 誰が判断し、誰が実行するかを決める

戦術、手法、届ける内容、受け皿を決めたら、次に実行体制を決めます。

中小企業は、すべてを社内で行う完全内製も、すべての判断と実行を外部に任せる完全外注も避けるべきです。

自社が判断の舵を取る前提で、専門作業に外部の専門家の力を借りられるように、Web担当者、営業担当者、顧客対応担当者、外部パートナーのよい座組を作っていくことが重要と考えてください。

役割 主に担う判断・情報 避けたい状態
経営者・責任者 事業目標、優先順位、予算、許容できるリスク、最終判断 Web担当者に目標を決めさせ、結果だけを求める
Web担当者・社内Webハブ 現状の把握、関係者の調整、作業の進行、数字と現場情報を結びつけた報告 すべての専門作業を1人で行う
営業・顧客対応・現場 顧客の質問、不安、失注理由、商談の進み方、受注後の反応、専門知識 Webチームから離れ、アクセスレポートだけを受け取る
外部パートナー 専門調査、設計、制作、広告運用、解析、実行支援、第三者の視点 目的、アカウント、データ、判断をすべて外部へ丸投げする

自社が行う判断と、外部を活用する部分を分ける

自社に残す 外部を活用しやすい
事業目標、対象顧客、提供価値、成功条件 デザイン、撮影、実装、広告の設定、専門的な分析
顧客の声、営業・対応履歴、商品の専門知識 短期に集中する制作、社内で常時使わないスキル
アカウントとデータの所有、最終承認 第三者の調査、課題の切り分け、社内で結論が出ない判断の支援

中小企業に適しているのは、社内が方針、顧客情報、アカウント、最終判断を持ち、外部が専門作業を支える形です。詳しい分け方は、Web担当者を内製するか、外注するかの判断基準で扱っています。

8. 成果の見方を決める

戦術や手法を実行する前に、何を見て成功と判断するかを決めます。走り出してから状況を見ていこう、では「自分たちに都合のよい数字を成果報告に使おう」となりがちだからです。

このとき、外れても良いので仮説を立てることが大事です。仮説を立てて「この数字が変わるはずだ」と考えておくことで、その後の結果の見方が大きく変わるからです。

たとえば、前述の通り、アクセス数だけでは、問い合わせの質、商談化、受注、継続といった事業への影響を判断できません。

経営者、営業担当者、Web担当者は、ツールが取得する数字と、営業や顧客対応の現場で起きた結果を組み合わせます。次の表では、成果と運用を4つの観点に分け、各観点で見る数字と判断する問いを示しています。

見る観点 主な指標 経営者・営業担当者・Web担当者が判断する問い
認知・訪問 検索表示、広告表示、クリック、訪問、再訪、指名検索 対象とする顧客候補に届いているか
比較・行動 重要ページの閲覧、ダウンロード、問い合わせ、電話・予約 必要な情報が伝わり、次の行動へ進んでいるか
事業成果 問い合わせの質、商談化率、受注、利益、継続、紹介 Web上の反応が事業へどのように影響したか
運用の振り返り 作業時間、必要な協力、再現できた手順、想定外の反応 次回も続けられるか、内製と外注の分担は適切か

Web担当者は、GA4のチャネル合計だけではなく、自然検索、検索広告、SNS、メール、Podcast、他サイトからの参照、直接訪問、オフラインの紹介を分けて見ます。その上で、問い合わせ内容と商談の結果を参照元別に比較します。計測から問題を見つけ、改善へ進む方法は、GA4・Search Consoleからサイト改善へつなげるWeb解析入門で詳しく扱っています。

9. 例:90日で実行へ移す場合

90日の理由

ここで示す90日は、すべての企業が守るべき期間ではありません。戦略を実行へ移す過程を具体化するための一例です。30日だと特に検索エンジン周りは動きが遅いので難しい、広告もアカウント構築だけで終わる、しかし半年だとプロジェクトの維持力や意識のグリップ力が下がるので、90日位をおすすめしています。

仮に90日で走り出すとしたら、経営者、営業担当者、Web担当者は、「いつまでに、何を、どの状態にするか」を決めます。実際の期間と作業は、事業の繁忙期、公開の制約、顧客の検討期間に合わせて変えます。

以下は例です

期間 企業が行う主な作業 企業が目指す完了状態
1〜2週目 事業目標、対象顧客、提供価値、現在の顧客との接点、成功の見方を明確にする 目標、対象顧客、判断者、成功条件を文章で共有できる
3〜4週目 顧客と営業担当者へ聞き取り、顧客が進む大きな流れを描き、最も大きな問題(ボトルネック)を1つ選ぶ 最も大きな問題と、その問題を解決する戦術が決まっている
5〜8週目 戦術・手法を選び、受け皿の改善、コンテンツの制作、問い合わせ対応の見直しなどを実行する 公開または配信が完了し、判断に必要な数字と現場情報を収集できる
9〜12週目 参照元別の反応、問い合わせの質、商談化、実行負荷を振り返る 継続、修正、停止のいずれかと、次の期間の優先課題を決めている

企業は、最初から多くの戦術や手法を同時に始める必要はありません。小さく始める場合も、「何を学び、次に何を決めるか」を先に定めます。実行後は、Web上の数字と営業・顧客対応で得た情報を合わせ、戦略、戦術、手法のいずれを見直すかを判断します。

ここまでで、事業目標から成果の評価までの全体像を見てきました。次は、自社の現在の課題に近いテーマを選び、必要な部分を深掘りします。

戦略と優先順位を決めたい

集客で何から始めるか決めたい

Webサイトと問い合わせを改善したい

コンテンツを作りたい

社内体制と予算を決めたい

顧客理解と継続を見直したい

AI検索への対応を把握したい

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