第541回: Web担当者がツールを使いこなすには?データへの興味とモチベーションの育て方

中小企業を強くするWebマーケティングPodcast — ラウンドナップWebコンサルティング 中山陽平

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、ツールをどうしたら使いこなせるのか、さらに言えば、どうしたら楽しく使えるようになるのかというお話です。

ツールについては、「何を入れたらいいのか」から「この機能をどう使うのか」まで、いろいろなご質問をいただきます。ただ、現場でお話を伺っていると、機能の説明だけでは解決しない、もっと手前の問題があると感じています。

便利だと分かっていても、データを見たくならない

ツールについて情報発信する側には、当たり前のように使っている人が多いですよね。そのため、「こういう機能があります」「こういう数字が見られます」という細かい話に集約しがちです。それを説明すれば使ってもらえる、という流れになりやすいんです。

でも、使う側も、便利なのは分かっています。使った方がいい、見た方がいいという認識は、大体皆さんお持ちです。その上で、「でも、なかなか見られないんですよね」「どう見たらいいのか分からないんですよね」となる。

「自社に合ったツールを選べていない」「見方が難しくて社内に浸透しない」というご相談も、切り口が違うだけで、根っこは同じことが多いです。ツールを見たいと思えていない。出てくるデータを面白いと思えないから、見ない。私は、ここに行き着くと考えています。

もちろん、数字が細かい、使いづらい、見方が分からないといった事情もあります。GA4についても、私自身、見やすいとは思っていません。ただ、見たいと思ったら、多少使いづらくても見るんですよね。

提供する側は「数字の意味を説明すれば、使うようになってくれる」と考えがちですが、順番は逆です。「ツールのことはよく分からないけれど、こういう数字を見たい。それが見られるツールはないか。あった、じゃあ見よう」。この流れに、自分たちをどう置くかです。

ツールの前に、自分たちが何を知りたいのかを出す

もっと遡ると、Webからどうお客さんが生まれて、反響につながっているのか。その全体に興味を持てていなければ、それを支えるツールにも興味を持ちにくいでしょう。

ツールには、マーケティングの各ステップで、今どういう状況なのかを把握する機能がたくさんあります。そもそもその流れに関心がなければ、数字を見ても解像度が上がりません。

「適切なツールを選べない」「もっといいツールがあるんじゃないか」と漠然と考えている場合も、実は、自分たちが何を欲しているのか、何を知りたいのかが、まだ形になっていないことが多いです。まず、自分たちが何を知りたいのかを出していきましょう。結論から言うと、そこなんです。

無理やり使わせる荒療治で何とかなるかというと、経験上、なりません。数字を報告することはできるかもしれませんし、上がった、下がったということも分かるでしょう。でも、その先の考察や、もっと深い機能へ進むところには、好奇心ややる気が必要です。

それから、専門家ならどんなツールでもすぐ使えて、たいていの機能を分かっていると思われがちですが、そんなこともありません。私だけかもしれませんが、お客さんのところに入っている初めてのツールを見れば、「これはどうなっているんだろう」と分からないことはいくらでもあります。

普段使っているものでも、「ここの基準は何だろう」「こっちとこっちの数字は何が違うんだろう」と思うことは山のようにあります。いろいろなデータが入っているので、ツールはそもそも簡単なものではないんです。分からないところがあること自体は、専門家も同じです。

興味が湧くのを待たず、自分でモチベーションを動かす

私にも、やらなければいけないけれど興味を持てないことは、たくさんあります。自動化できないルーチンワークだと、「またこれか」となって、つい後ろへ押し下げたくなることもあります。

そんなときは、効率が悪いかもしれないけれど、あえて違う方法でやってみる。普段とは違うポイントに着目してみる。そうやって、自分のモチベーションをコントロールしています。自動化が楽になっても、まだまだ単純で面倒な作業は残っていますからね。

モチベーションや楽しさは、天から落ちてくるのを待つものではなく、自分で作るものだと考えてみてください。どうすればこれに興味を持てるのか。ツールなら、どうすれば管理画面を開こうと思えるのか。そこを自問自答して、自分をその状態へ持っていく方法を考えるんです。

誰かに連れていってもらう、いつか自然にそうなる、というのを待っていても、なかなか来ません。私は「頑張って興味を持つ」という考え方を、ぜひ持っていただきたいと思っています。

内側から自然に興味が湧くことも、もちろんあります。ただ、自分で作り出せるようになった方が、はるかにフットワークは軽くなります。ツールに限らず、いろいろなところで使える力です。

慣れた営業の数字を見るときの感覚を、Webにも持ってくる

ツールのご相談では、「そもそも自分が何をやりたいのか思いつかない」「このデータで何ができるのか分からない」とも言われます。「質問していいと言われても、見当違いだったら恥ずかしい」という方もいらっしゃいます。

でも、皆さんが慣れた領域ならどうでしょう。例えば、フィールドセールスの数字をまとめていて、「今月は数字が上がらない」「この地域がよくない」と分かったとします。それで「仕方ないね」と終わらせることは、あまりないですよね。

具体的にどのセグメントが悪いのか、どのステップに問題がありそうなのか、と掘り下げていくはずです。やらなければいけないことでもあるし、その分野に興味があるから、「こうかもしれない」と考えるのも、それほど苦ではない。

その感覚をWebでも作れれば、データをもっと見たいという気持ちは自然に出てきます。最初はセッション数やキーワードの種類、コンバージョンといった大きな数字だけを見ていても、次第に気になることが増えてくるんです。

どこから来た人なのか。どのページを、どう回ってきたのか。売れている商品と流入チャネルに関係はあるのか。こういうことが知りたくなると、ツールの中で探したり、検索したり、ChatGPTに「こういうことはできるのか」と聞いたりするようになります。

見当違いの質問をするのが恥ずかしいという気持ちも、興味があれば変わります。「それはできない」と分かることだって、一つ前に進む材料として受け取れます。結局、そこに落ち着くというのが、私の考えです。

支援を頼むなら、楽しく使えるようになることを目的にする

私が大事にしている考え方に、プロセスコンサルテーションがあります。自分たちの問題を最終的に解決するのは、自分たちだという考え方です。こう言うと、「コンサルタントがそれでいいのか」と思われることもあるんですが。

私は、後ろから後押ししたり、気づきを提供したりして、自分たちで進めるようにするのが、本来のコンサルタントの立ち位置だと思っています。外からひたすら教えて、学ぶ機会を奪い、外圧で変えたところで、会社の根本的な問題は解決していない。そう考えています。

もちろん、人の助けを借りることが悪いわけではありません。モチベーションが湧くように支援してもらいながら、「これはどうやるのか」「これはできるのか」といった、毎回調べると面倒な部分をプロに聞く。そういう使い方はあります。

支援の目的を「ツールの使い方を覚える」ではなく、「自分たちが楽しくツールを使えるようになる」に置いてほしいんです。その方が結果的に早いですし、教えてくれる人に依存しない使い方ができるようになります。

数字の定義は、もちろん間違ってはいけません。ただ、結果が出ていれば、使い方自体は千差万別で構いません。何のために教わるのかを、間違えないようにしていただきたいです。

使い慣れた人の思考をコピーして、そこから離れていく

もう一つ、教えてくれる人の思考をコピーするという方法もあります。解析なら、どういうときにどこを見て、どの数字をチェックするのか。そこには、経験がある人とそうでない人との隔たりがあります。職人技のような部分ですね。

「どう改善するんですか」と漠然と教わるより、目の前にある具体的なやり方を、まずコピーした方が早い場合があります。理由はまだ分からないけれど、このようにやるとうまくいく、というところから入ってもいいと思います。

例えば、「なぜここで10秒冷やすんだろう」「なぜここで一日寝かせるんだろう」という手順も、分かる人には意味がある。でも、その意味が分かるまでには時間がかかることもあります。まずやり方を得て、なぜそうするのかも一緒に聞いて、相手の考え方を取り込むんです。

ただ、コピーした後は、自分たちのものにするために、その型を破り、離れていくことも必要です。守破離ですね。同じ環境、同じ状況はありませんから、いつまでも同じやり方をそのまま当てはめればよいわけではありません。

マニュアルも、複雑な判断や感覚を具体的な形にして、飲み込みやすくするものです。自分が楽しいと思えること、自発的に知りたいと思えることを意識しながら、使い慣れた人の頭の中の流れを、材料として借りていく。そんなプロの使い方がいいのではないでしょうか。

これは教える側も意識しなければいけません。機能説明だけで満足したり、「こちらでやるので、情報だけください」となったりすると、自分たちで分かるようになる機会がなくなってしまいます。

知りたいことが見えると、有料ツールの判断もできる

自分たちが興味を持ったことを、もっと分かるようにするには、もっと効率よく調べるには何があるか。こうした探し方が会社に定着すると、ツールにいくらかけるかという判断も変わってきます。

Googleが無料でいろいろなものを出していることもあって、無料と有料の間には大きな壁があります。でも、有料だから駄目というわけではありません。投資に対して、どういうリターンを見込めるかですよね。

「自分たちが欲しいデータを得られて、この価格なら安い」と、自分たちで判断できることが大事です。人から「価格以上の価値があります」と言われても、5万円、10万円という金額に自分たちが納得できなければ、うまく使いにくいでしょう。

AIツールでも、自分たちで試して効果に興味を持てれば、「これは費用に見合うから、どんどん使おう」と判断できます。逆に、「こちらはまだ興味を持てないし、うちには高いから、少し寝かせよう」という判断もできます。

解析だけでなく、コンテンツ作成の支援や、AIを使いやすくしたもの、業務効率化のツールなど、候補はたくさんあります。どれを取り入れるかを考える力は、会社として持っておくべきものです。そこを丸ごと外に任せてしまってはいけないと、私は思っています。

自分たちで興味を持って進める状態を目指す

私も普段のコンサルティングでは、そこを残すように心がけています。自分が考えた結論へ無理やり導かない。私の考えが最良だとは思わない。

最終的に目指しているのは、コンサルタントがいなくても、皆さんが自ら楽しくWebやデジタルの世界を渡り歩けるようになることです。新しいことが出てきたときだけ、ちょっと呼ばれたり、質問されたりするくらいになればいいと思っています。

そういう状態になったお客さんは、自分たちでいろいろなことをやっています。外から見て少し危なっかしいと感じることもありますが、とても生き生きしているんです。私としても、やってよかったと思いますし、そうやって卒業していただけると嬉しいですね。

ツールを楽しく使えるようになるには、どうすればいいのか。少し定性的なお話ですが、そこを自分たちで突き詰めて考えていくことが、ツールにまつわる多くの問題を解く手がかりになると考えています。

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第343回:SEO調査ツールを、減らしたい手間から選ぶでは、実際に調べる経験を持ってから道具を選ぶ考え方をお伝えしています。

何を確かめるかを考えるときは、第484回:仮説を立ててからデータで答え合わせをするもご覧ください。解析とサイト改善の全体像は、中小企業のためのWeb解析入門にまとめています。

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