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このPodcastで得られること(要点)
社内や周りを巻き込みながら、ウェブ活用をスモールスタートで進めるための「考え方」と「詰まりどころの見つけ方」を整理します。
- 社内が動かないときに、最初に捨てたい前提
- ナッジ(NUDGE)理論で「小さな後押し」を設計するヒント
- ADKAR(Awareness / Desire / Knowledge / Ability / Reinforcement)でボトルネックを特定する方法
- 生成AIを「正解探し」にしない、現場で続く使い方
結論から言うと、社内を「思った通りに動く存在」と見なすのをやめて、相手の不安や障壁を前提に「動きやすい設計」を積み重ねることが、スモールスタートを成功させる近道です。
社内が動かないときに、最初に捨てたい前提
何か新しいことをやろうとしても、周りを巻き込めない、お願いしても動いてくれない。こうしたストレスは、多くの現場で起きます。
ここでつらくなる原因の一つが、「社内や周りの人は、自分の思った通りに動いてくれるはず」という前提です。この前提を持ってしまうと、うまくいかなかったときに苦しさが増します。
出発点としては、まずその前提を手放したいです。社内が動かないこと自体を“異常”と捉えるより、「人は基本的に、放っておくと変わらないもの」として扱ったほうが、次の打ち手が見えやすくなります。
社内を「お客様」として見ると、景色が変わる
私が相談を受けるとき、担当者の方にまずお伝えする視点があります。それは、社内の動かしたい人たちを、マーケティングやセールスの観点でいう「お客様(=相手目線で行動を設計する対象)」として見てみることです。
たとえば見込み客を契約まで運ぶとき、相手の不安、できない理由、次のステップに進めない要因を自然に考えるはずです。その“相手目線”を、社内に向けるだけで見え方が変わります。
「同じ会社の人なのに、お客様扱いなのか」という意味ではありません。行動の変容や態度の変容は、売買だけでなく、人と人の関わりの中で起きるものだからです。相手が気持ちよく動ける条件を考える、という意味での“お客様目線”です。
ナッジ理論で「小さな後押し」を積み重ねる
方法論として、まず知っておくと便利なのがナッジ理論です。強制やご褒美よりも、「ちょっとやってみようかな」と思える小さな後押しを繰り返すことで、行動を変えていく考え方です。
例:デフォルトを変えるだけで、行動は変わる
典型例として、紙の節約があります。「無駄な印刷をやめよう」と言っても変わらないことは多いですし、ポイント付与のような報酬をつけても大きくは変わらない場合があります。
それでも、プリンターのデフォルトを両面印刷に変えるだけで、「両面でもいいか」という人が増える。こうした“小さな設計”の積み重ねが、結果として行動の総量を変えます。
アイデア共有をしたいときに、いきなり「共有会をやるぞ」とすると重くなりがちです。代わりに、誰でも書ける投票箱、付箋を置く、給湯室の入口にホワイトボードを置く、といった“軽い刺激”を先に作るほうが進みやすいことがあります。
前回の「ホームページ30秒振り返りからやってみましょう」という話も、こうした小さなきっかけ作りとして相性が良いアプローチです。
ADKARモデルで「どこで詰まっているか」を特定する
もう一つ、行動を起こすまでのステップを整理するフレームワークとして、ADKAR(アドカー)モデルがあります。変化が定着するまでの流れを、5つの要素で見立てる考え方です。
- A(Awareness:認識):変化が必要だと認識できているか
- D(Desire:やりたい気持ち):やりたいと思えているか
- K(Knowledge:知識):やり方が分かっているか
- A(Ability:実行できる状況):実際にできる状況にあるか
- R(Reinforcement:定着・強化):続けられる状態になっているか
「動いてもらえない」と感じたとき、感情で抱えるより、ADKARのどこで止まっているのかを見ます。すると原因が言語化しやすくなります。
抜けやすいのは「知識」と「実行できる状況」
私がよく見るのは、認識や「やりたい気持ち」まではあるのに、実行に移らないケースです。このとき抜けやすいのが、K(やり方が分かる)とA(実際にできる状況)です。
「知ってるし、便利そうだし、やりたいとも思う。なのに、なぜやっていないのか」という場面は、まさにここが抜けています。
生成AIの導入が進まないのは、意欲の問題とは限らない
最近だと、生成AIやChatGPTの話が分かりやすい例になります。便利だと知っている、やりたいとも思っている。なのに使っていない、という状況はよくあります。
理由はさまざまです。たとえば「AIに抵抗感がある」「個人情報や入力内容が不安」「料金やアカウント周りがよく分からない」といった不安があるかもしれません。あるいは「手一杯で新しいことを覚える余裕がない」「社内の空気的に使っているところを見せづらい」といった事情もあり得ます。
ここを「やる気がない」で片づけるのではなく、ADKARでいえば、Knowledge(やり方)やAbility(環境・状況)の問題として扱うと、支援の方法が変わります。
支援の方向性は「連れていく」「環境を整える」
たとえば、やり方が曖昧なら、分かっている人とペアで触ってみる形にする。一緒に最初の一歩をやるだけでも、動きやすさが変わります。
環境が原因なら、誤解を解消したり、使いやすい環境を整えたり、工数が取れないなら一時的に別の業務を引き取って余白を作ったりする。こうした“状況づくり”が効くことがあります。
重い用途から始めない。まずは軽い質問から慣れる
生成AIに限らず、新しい取り組みは「最初から重い作業で成果を出す」ことを目標にすると、つまずきやすいです。慣れていないうちは、良いアウトプットを引き出す難易度が高いからです。
私としては、まずはクリティカルではない簡単な質問を、スマホのアプリなどで投げてみるところから始めるのが良いと思っています。小さく触れる回数が増えると、使い方も自然にフィットしてきます。
日経トップリーダー(2025年8月号)の事例で印象的だったこと
私がXでも少し触れたのですが、日経トップリーダーの2025年8月号には、生成AI活用の特集がありました。中小企業の現場でどう使っているか、という観点で生々しい内容で、個人的に面白かったです。
そこで強く印象に残ったのは、「必ずしも正解を求めて使っていない」という点です。生成AIから一発で正しいデザインや完璧な答えを出そうとすると、期待に届かず「やっぱり使えない」で終わりがちです。
一方で、事例では「外れてもいいから気づきが得られればいい」「100個失敗して1個でも近づけばいい」「イマジネーションを刺激できればいい」という、ゆるい使い方をしていました。その結果、たたき台を作り、細部は人が調整する形で、パッケージデザインまで持っていけた、という流れが語られていました。
スモールスタートを成功させるためのまとめ
今回お伝えしたかったのは、急に一気に変わることを狙うのではなく、ボトルネックを見つけて小さく解消していく、という進め方です。社内が動かないことを嘆くより、相手目線で設計し、ナッジで小さな後押しを作り、ADKARで詰まりどころを特定するほうが、前に進めやすくなります。
ウェブ改善のスモールステップについては、関連する回として「第561回:他社の真似は無駄ではない&毎日30秒のWeb活用スモールステップ」でも触れています。合わせて聞いていただくと、今回の話がより具体に落ちるはずです。
会社として気持ちよく動いていける“足回り”は、今後ますます重要になります。できるところから、小さく始めていきましょう。
関連リンク
- The Prosci ADKAR® Model | Prosci
- Nudge: The Final Edition – Penguin Random House
- Fogg Behavior Model | Behavior Design Lab
- 日経トップリーダー 2025年8月号 | 日経BPマーケティング
- DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
FAQ
- 社内が動かないとき、最初に見直すべきことは何ですか?
- 「周りは自分の思った通りに動くはず」という前提を手放すことです。そこから相手目線で、動けない理由や不安を見に行くと打ち手が作りやすくなります。
- 社内の人を「お客様」として見る、とはどういう意味ですか?
- 社内でも、相手の不安や障壁を前提に「どうすれば気持ちよく動けるか」を設計する、という意味です。売買の話ではなく、行動の変容を起こすための相手目線の持ち方です。
- ナッジ理論は、スモールスタートとどう相性が良いのですか?
- 強制や大きな施策ではなく、デフォルト変更などの小さな後押しを積み重ねる考え方だからです。重い会議を増やすより、まず「やれる形」を置くほうが動きやすくなります。
- ADKARで特に詰まりやすいポイントはどこですか?
- 認識や「やりたい気持ち」まではあるのに、Knowledge(やり方)とAbility(実行できる状況)が抜けているケースが多いです。ここを見落とすと、「やる気がない」と誤解しやすくなります。
- 生成AIは、どんな使い方だと現場で続きやすいですか?
- 一発で正解を出すことをゴールにせず、「外れてもいいから気づきを得る」くらいの温度感で試すことです。軽い質問から触れて慣れ、だんだん自分にフィットする使い方に寄せていくのが続きやすいです。
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