第603回:地方自治体のAI研修の現在と、押さえておきたい一つの事例紹介

中小企業を強くするWebマーケティングPodcast — ラウンドナップWebコンサルティング 中山陽平

20260924-自治体AI研修と事例_infographic

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ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

今回は、自治体が行っているAIの支援と、福岡県北九州市の訪問看護会社の事例を取り上げます。中小企業で「AIを使ってみたいけれど、何から始めようか」と考えている方には、自治体の研修が入口になると思います。ただ、会社で使われるようになるところまで考えると、ツールを知るだけでは足りない。そのことを、事例を読みながら感じました。

自治体のAI研修は、どんどんレベルが上っている

うちはAI支援だけをしている会社ではありませんが、Webの仕事でもAIを避けて通る理由はないので、一緒に扱っています。そこで最近感じるのは、国や自治体の力の入れ方の強さです。

Webサイトが一気に増えた2000年代前半にもセミナーはいろいろありましたが、今のAI支援はそれ以上ではないかと感じるくらいです。

無料の説明会や支援が各地で開かれています。内容も、少し前は議事録を取るとか文章を直すとか、比較的やさしいものが多かった印象です。

ところが、今回見た千葉市の事業者向けセミナーは、Claude Coworkを実際に操作し、複雑な作業手順の見える化や業務の自動化まで扱うという内容でした。参加者がノートPCを持参する実習型です。市内の事業者が対象で、参加費は無料と案内されています。

「何から始めたらいいか分からない」という方は、こういう場に一度触れてみてはどうでしょう。以前、何かの分野を知りたければ本を2冊読むといい、と言われたように、いくつかの研修へ出てみて、自分たちに響くものを見つける。それでもいいと思います。

一方、一般的なAIの使い方を教えるだけの民間サービスは、これから難しくなるかもしれません。

無料の支援がかなり実践的になっているからです。業界への深い知見や、会社の中で仕組みを動かすところまで伴走できることがなければ、ゼロからその事業を作るのは危ないのではないか。これは、支援する側にいる私自身が感じていることでもあります。

ツールを目的とせず、誰のためのDXかを考えるところから

研修を受けた先、自分の会社でどう使っていくか。そこで参考になったのが、J-Net21で紹介されていた北九州市のプーラビダ株式会社の事例です。訪問看護を行う会社で、社員が40人規模に増えるなか、社長と現場の間で意思疎通が難しくなり、コロナ禍も重なって離職率が83.3%まで上がっていたそうです。

私が面白いと思ったのは、単に「AIを入れたら生産性が上がった」という話ではないところです。当初はDXをコスト削減の観点で進めていました。

Google Workspaceを導入しても、現場からは「これまでのやり方で何が悪いのか」という反発があり、使っていたのは最初は2人だけだったといいます。40人規模の会社で2人。便利なツールだと経営者が言っても、それだけでは広がらないんですよね。

そこで「人を守るためのDX」へ目的を変えた。働く人の負担を減らし、働きがいを作るために使う。その転換が大きかったのだと思います。ただ、記事では簡潔に書かれているこの転換こそ、実際の会社で真似すると一番難しいところかもしれません。経営者が言い方を変えただけで、現場がすぐに信じてくれるわけではないでしょう。

事例の中で:報告書という身近な仕事で、まず社員への利点を見せる

事例で取り組みの入口になったのが、毎月作る訪問看護の報告書です。利用者一人分に1時間以上かかっていた作業を、Geminiの活用で大きく短縮できたと紹介されています。

会社全体の生産性が10%上がる、と言われても、現場で働く人にはなかなか実感しにくいですよね。でも、「毎月の報告書が早く終わる」と言われたら、自分の仕事との関係が分かります。

そこから社内で使う人が増え、情報の共有や社員同士で教え合う動きにもつながっていったようです。失敗を責めない雰囲気を作ることも欠かせなかったと思います。

AIを使ったことがない人へ「使え」とだけ言い、失敗したら責める。それでは試す人が減るか、失敗を隠すようになるでしょう。ツールの操作以前に、会社の空気を変える仕事があったのだと感じました。

事例の中で:浮いた時間を、人を減らすために使わない

私が特に引っかかったのは、報告書の時間が減った後に、その時間をどう使ったかです。「これだけ空いたのだから、人を減らせる」と考えるのではなく、看護師の研修や資格取得に回している。社員にとっても新しい仕事に取り組めるようになり、会社としてもできることが増える。こういう使い道なら、社員が「自分のための改革だ」と感じやすいと思います。

J-Net21の記事では、離職率が83.3%から7.7%へ改善し、生産性も約1.5倍になったと紹介されています。大きな数字です。ただ、AIを正しく導入すれば、どの会社でも同じ変化が起きるとは思いません。

経営側の姿勢、情報共有、教育、評価、働く人との関係など、いくつものことが重なった結果でしょう。AIだけの成果として読んでしまうと、この事例の肝を見落とす気がします。

記事では、目的を変えたことや社員同士で教え合ったことが伝わります。でも、その途中でどんな反発があり、どう信頼してもらったのかは、自分の会社へ持ち帰るときに一番悩む部分かもしれません。成功事例は、その難しい過程が短く見えがちです。自社でもすぐ同じ数字を出そうとするより、現場の人にとって何が楽になり、その時間をどう使えるのかを具体的に示すところから考えたいですね。

まとめ:研修で知ったAIを根付かせるためには

自治体の無料研修は、AIへ実際に触れるよい入口になっています。会社へ持ち帰った後は、ツールの導入自体を目的にせず、身近な仕事で社員にとっての利点を示せるかが問われます。

プーラビダの事例では、報告書作成の負担軽減だけでなく、空いた時間を研修や資格取得に使い、情報共有や社内の雰囲気も変えていました。数字の改善はAI一つだけで説明できるものではない。その点も含めて参考になる事例だと思います。

引用元・参考情報

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