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ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
検索におけるAIの回答や対話型AIの回答に、自分たちの会社やサービスがどのくらい出ているか。
それを調べる「AI可視性ツール」が、国内外で増えています。皆さんも、自社の情報を登録すれば、お客さんが聞きそうな質問を選び、対策の効果まで測ってくれるという期待を持っているのではないでしょうか。
ただ、会社やサービスの説明を入力しただけで、自分たちのお客さんに合った調査になるとは限りません。2026年11月3日の収録時点では、何を測っている数字なのかを把握し、自社の顧客に合う質問へ調整しながら使うことが必要だと考えています。
今回は、ツールごとの違いも見ながら、数字をどう受け止めればよいかをお話しします。中心になるのは、どのツールが一番かという話よりも、そのスコアは、自社のお客さんを理解するための数字になっているかという点です。
AI可視性のスコアが上がったら、喜んでよいのか?
設定画面に沿って情報を入れると、質問が並び、定期的な計測が始まり、スコアが出てくる。ここまで整っていると、スコアを上げることが目的になりやすいですよね。でも、調査対象の質問をお客さんが実際には使わないなら、スコアが上がっても判断に困ります。
私は、ツールそのものに否定的なわけではありません。Ahrefsも日本で広く知られる前から使っていましたし、Semrushをはじめ、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)のツールにはかなりお金を使ってきました。だからこそ、数字を取れることと、その数字が自社の判断に役立つことは分けて考えたいんです。
今のところ、私はAI可視性ツールを積極的には使っていません。スコアを上げる意味を、自分の中で十分に説明できていないからです。もちろん、今後の技術やデータの変化で状況は変わるでしょう。あくまで現時点での判断として聞いていただければと思います。
ツールがチェックしている質問文は、どこから来ているのか
この話を考える材料になるのが、AIMCLEARによるAI可視性ツールの調査です。87ツールを対象に、質問の作り方などを公開情報から調べています。分類表に載った79ツールのうち、47はソフトウェアによる生成が主な分類でした。約6割です。ツールが用意する質問の多くは、実際の顧客の質問をそのまま集めたものとは限りません。
ただし、この47ツールがすべて検索キーワードだけを使っている、という意味ではありません。会社の情報やサイト、想定顧客などを材料にする方法もあります。79ツールの中には、仕組みが不明なものも含まれます。「自動生成だからだめ」と決めるのではなく、何を材料に質問が作られたかを確かめることが出発点です。
検索キーワードを使うことにも意味はあります。従来の検索に慣れた人なら、AIにも単語を並べて聞くかもしれません。長い文章で事情を伝える人もいるでしょう。自分たちのお客さんがどんな聞き方をするかによって、合う調査の仕方も変わるわけです。
スコアを見る前に押さえたい、三つのポイント
1.お客さんは本当にその質問をするか?
例えば、工場設備の修理会社を探すとして、「おすすめの工場設備修理会社」と聞く人ばかりでしょうか。現場では、「操業を止める時間をできるだけ短くしたい」「休日に対応してほしい」という事情の方が切実かもしれません。
同じ会社を探していても、短い単語で聞く人もいれば、設備の状態や困り事を説明してから聞く人もいる。ニュースを見たことがきっかけになる場合もあります。業種名だけから質問を作ると、お客さんが相談するに至った事情や、比較するときの条件が抜けてしまうんですね。
関連する調査として、Semrushは米国の利用者データに基づくChatGPTの分析で、調査期間の大半において、プロンプトの65〜85%が同社の検索キーワードデータベースと一致しなかったと報告しています。検索キーワードと、AIに入力される質問を同じものとして扱わないための材料になります。
参照:Semrush「ChatGPT Search Insights」
ここは数字の読み方に注意が必要です。この割合は、AI可視性ツールの測定が65〜85%間違っていることを示すものではありません。対象も米国のChatGPT利用です。キーワードとの不一致率を、そのままツールの誤差や日本の顧客の行動に置き換えることはできません。
2.データが多い=自分に関するデータが多いと決めつけていないか?
何億件、何十億件という数字を見ると、十分なデータがあるように感じます。でも、仮に100億件あったとしても、その中に自社の商圏や、専門性の高い小さな市場のお客さんを理解できるデータがどれだけあるかは別の話です。
中小企業の商売では、全国の一般的な傾向より、地域や業界の事情が大きく影響することがあります。法人向けなら、担当者の裁量や社内の決裁方法でも選び方が変わる。担当者が替われば、それまでと違う探し方になるかもしれません。全体のデータ量だけで、自分たちにも有益だと受け取らないようにしたいところです。
3.ツールの限界としてのAI検索のパーソナライズを押さえているか?
AIとは、一問一答だけでなく、会話を続けて使いますよね。例えば保険代理店を探す場合でも、前のやり取りで法人向けの条件や所在地、事故対応の速さを重視することを伝えていれば、その後の「おすすめは?」の意味が変わります。同じ質問文でも、そこに至る会話の条件が違います。
ツールで一定の質問を繰り返すことは、変化を見るうえで役立ちます。ただ、その結果が、個々のお客さんに返される回答をすべて再現するわけではありません。どの条件で観測した結果なのかを押さえて、数字との距離を取る必要があります。
有名ツール、例えばSemrushやAhrefsの数字は、何を表しているのか
ここからは、代表的なツールの考え方を見ていきます。私が確認したかったのは、順位を付けることではなく、質問の材料とスコアの意味が、自分たちの調べたいことに合っているかという点です。仕様やデータ量は更新されるため、利用時には各社の最新の説明も確認してください。
Semrush:トピックの広がりと、回答内の言及を見る
Semrushの公式説明では、AIサービスの利用データと、AI Overviews向けのGoogle検索キーワードデータなどを使っています。関連する質問は、意味の近いトピックにまとめられます。単に一つの検索キーワードの順位を測るのとは、集計の単位が違います。
参照:Semrush「Semrush AI Visibility Data」
例えば「外壁塗装の費用」と「外壁塗装の見積もり相場」を近い話題として扱う、と考えるとイメージしやすいでしょう。これは説明のための例です。どんな質問をまとめて、一つの話題として見ているかによって、数字の意味も変わります。
同社のAI Visibilityは0〜100の独自指標で、トピックをどれくらい広くカバーしているか、関連する回答でどれくらい一貫して言及されるかなどを見ます。ここでいう一貫性は、長期間出続けているという意味に限りません。「費用」「塗料」「業者選び」といった話題の広さと、その中での言及を捉える指標として理解する必要があります。
AI Volumeも、AIでその話題がどのくらい尋ねられるかを推計したものです。個々のお客さんが何回質問したかを、自社で直接数えた値ではありません。実測のアクセス数や問い合わせ数と、同じ感覚で並べないようにしてください。
Ahrefs Brand Radar:検索データから広げた質問を観測する
Ahrefs Brand Radarは、検索キーワードやGoogleの「他の人はこちらも質問」などを材料にし、関連する質問を広げて調査します。例えば塗料の耐用年数から保証についての質問へ広げる、といったイメージです。これも私の説明用の例ですが、元の検索データから、質問をどう広げているかが見どころになります。
参照:Ahrefs「Brand Radar Methodology」
競合と比べた言及の割合を見る指標もあれば、検索需要を使って重み付けした推計値もあります。Estimated Impressionsという名前でも、実際にその回答を見た人数を数えているわけではありません。数字の名称だけで判断せず、何を分母にして、どのデータで計算しているかまで見ることが必要です。
実際の利用データを使うツールにも、確認は必要
ProfoundやSimilarwebなど、利用者の行動データを取り入れるものもあります。AIMCLEARの調査では、Semrushもパネル・クリックストリームの分類に含まれています。「こちらは検索キーワードだけ、こちらは実際の質問だけ」と、きれいに二分できるわけではありません。
参照:AIMCLEAR「Prompts for Sale」のデータ取得方法の分類
実際の利用データであれば、自社にも必ず合うということでもないんですね。対象となる地域や利用者の層が違えば、知りたいこととのずれは残ります。どちらが良いかを先に決めるより、自社に合う切り口かどうかを考える方がよいと思います。
| 確認する対象 | 数字を見るときの着眼点 |
|---|---|
| Semrush | トピックのまとめ方と、AI Visibility・AI Volumeそれぞれの定義を確認する。 |
| Ahrefs Brand Radar | 検索データから広げた質問の内容と、言及割合・推計値の計算方法を確認する。 |
| Profound・Similarwebなど | 利用データの対象地域や利用者層が、自社の顧客とどの程度合うかを確認する。 |
| どのツールでも | 自動提案された質問を、実際の商談や問い合わせと照らし合わせる。 |
質問の調整は、商談や問い合わせの言葉から始める
私の経験でも、自動で出てきた質問をお客さんと一緒に見ると、「こういう言葉は使わないですね」となることがあります。半分くらいがそうだったこともあります。全ツールに当てはまる割合ではありませんが、設定画面で出てきた質問を、そのまま正解にしない方がいいと感じています。
Webの担当者が、お客さんと直接話す機会をあまり持っていないこともあります。「この質問は実際の商談で出ますか」「営業の方に確認しましたか」と聞くと、まだ確認していないというケースもある。担当者の想像だけで、顧客の質問を決めないようにしたいですね。
最初に拾いたいのは、お客さんが判断するまでに、実際に口にした疑問や条件です。例えば、次のようなものがあります。
- 見積もりを頼む前に、不安に感じていたこと。
- 他社と比較するときに、確認していた条件。
- 商談で繰り返し聞かれることや、失注した理由。
- 問い合わせフォーム、電話、メール、チャットに出てきた言葉。
- 契約後のサポートで、初めて分かった困り事。
特に電話でのやり取りなどは、その場で解決すると記録が残りにくいですよね。それを会社の中でためていく。お客さんの声を残す仕組みは、AI可視性ツール以外の施策にも使える資産になります。
ただ、現場の声を全部入れればよいわけでもありません。印象に残った特殊な案件ばかりを質問にすると、今度はそちらへ偏ります。よくある相談なのか、一部の条件に限った話なのかを分けて、バランスを見ることも必要です。
質問の調整は、できれば測定を始める段階で行いたいところです。途中で調査する質問を大きく変えると、それまでの数字と単純には比べにくくなります。最初に何を観測するかを決めてから、変化を見る方が判断しやすいと思います。
注意:顧客の声にも、Search Consoleの「声」にも偏りはある
ここまでお客さんの声が大事だとお話ししましたが、顧客の声も万能ではありません。私たちが聞けるのは、問い合わせや商談まで来てくれた人、取引をしてくれた人の話が中心です。その前に候補から外した人や、何も言わずに離れた人の事情は見えにくいんです。
Google Search Consoleも参考になりますが、自社サイトが検索結果に出ている範囲のデータです。まだ接点を持てていない需要まで、そのまま見えるわけではありません。既存のお客さんの声と、既存の検索データのどちらにも、見えていない範囲があると考えておく必要があります。
だから、ツールのデータを全部捨てて、顧客の声だけに置き換えれば解決する、という話ではありません。それぞれが見ている範囲を理解して、足りないところを補いながら使う。ここは、使う側の経験や判断が問われるところだと思います。
質問が思い浮かばないならどうすべき?
中小企業の皆さんが、自社のお客さんならどう聞くか、まだ具体的に思い浮かばないのであれば、いきなり有料ツールに費用をかけなくてもよいと思っています。まずはお客さんの情報を集め、会社の中に残す体制を作るところから進めてはいかがでしょうか。
その情報を使っていろいろな施策を回し、何を調べたいかが見えてきたところで、合うツールを選ぶ。専門家に相談する場合も、その材料があれば話がしやすくなります。導入することより、導入後に数字を使って判断できる状態にすることを先に考えたいですね。
これからAI上での露出を測る必要は、出てくると思います。何らかの定量的な指標も必要でしょう。だからこそ、数字の意味を押さえ、適切な距離を取りながら使うことで、お金の無駄や判断の間違いを減らしていただければと思います。
まとめ:AI可視性の測定は、顧客理解とセットで考える
- 自動提案された質問が、自社の顧客に合うとは限りません。質問の材料と、実際の商談・問い合わせの言葉を確認しましょう。
- 大量のデータがあることと、自社の商圏や顧客を捉えていることは別です。会話の履歴や個別の条件によっても、AIの回答は変わります。
- 独自スコアや推計値を、実際の閲覧人数や問い合わせ数と同じものとして扱わないようにしてください。
- 顧客の声にも偏りがあります。既存の顧客、検索データ、ツールのそれぞれが捉える範囲を考えながら使いましょう。
- 顧客の質問がまだ見えていないなら、先に記録をためる体制から。何を測りたいかが分かってから、ツールに費用をかけても遅くありません。
引用元・参考情報
- AIMCLEAR:AI可視性ツールのプロンプトの出所に関する調査
- Semrush:ChatGPT Search Insights
- Semrush:AI Visibilityのデータと指標の説明
- Ahrefs:Brand Radarの調査方法
AI可視性ツールについて、よくある質問
- AI可視性ツールとは、何を調べるツールですか?
-
AI(Artificial Intelligence:人工知能)の回答に、自社やサービスがどのくらい登場するかなどを調べるツールです。ただし、観測する質問の作り方や指標の定義はツールによって違います。会社情報を登録しただけで、自社の顧客の行動を正確に測れるとは限りません。
- 自動で提案された質問を、そのまま使ってもよいですか?
-
まず、実際の商談や問い合わせで使われる言葉と照らし合わせてください。業種名だけでは、お客さんが比較する条件や相談の背景が抜けることがあります。営業やサポートの担当者とも確認し、自社の顧客に合う質問へ調整してから測定を始めると、変化を比べやすくなります。
- AI可視性のスコアが上がれば、集客の効果が出たと言えますか?
-
スコアの上昇だけでは、集客の効果が出たとは判断できません。独自スコアや推計値は、実際の閲覧人数や問い合わせ数とは異なります。どの質問を対象に、何を分母として計算した数字なのかを確認したうえで、自社の判断に使う必要があります。
- データ量の多いツールを選べば安心ですか?
-
データ量だけでは判断できません。その中に、自社の商圏や業界、顧客の条件に合うデータがどれくらい含まれるかが問題です。実際の利用者の行動データを使う場合も、対象地域や利用者層が自社の顧客と合っているかを確認してください。
- 中小企業は、ツールを導入する前に何をすればよいですか?
-
顧客がどんな質問をするか思い浮かばないなら、商談や電話、メールなどの内容を会社に残す体制から始めてください。見積もり前の不安、比較条件、失注理由などが材料になります。ただし、接点を持てた顧客の声にも偏りがあるため、それだけで市場全体を捉えたとは考えないようにします。
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