第584回:Webサイト制作の民主化がより進むAI時代、中小企業が伸ばすべき領域はどこか?

第584回:Webサイト制作の民主化がより進むAI時代、中小企業が伸ばすべき領域はどこか?

この記事で得られること(要点)

  • AI(人工知能)の進展によって、Webサイト制作が誰でもできる方向に進む中で、サイトの作り方や見せ方がどう変わっていくのか
  • AIに比較検討される時代において、これまで有効だったテクニックの何が効きにくくなり、何が強みとして残るのか
  • これからも選ばれ続けるために、今の段階から意識して強化しておきたいポイント(商品・サービス、周辺情報、価値観の転換)
  • まだ余裕のある今だからこそ、後回しにせず取り組んでおきたい考え方

Webサイトは今後も情報発信や顧客接点の「起点」であり続けます。ただし、Web制作が民主化されていけばいくほど、サイトの構造はシンプルな姿に収束していく。AIもそれを加速させています。そのため、見せ方の小手先だけで成果を出し続けることは難しい。なので重要なのは「だからこそ、商品・サービスそのものの競争力と、それを支える周辺情報の整備に、これまで以上に力を入れる必要がある」ことです。

これから効きにくくなることと、今から強化したいこと

現時点でも、Webサイトは「見せ方」「動き」「導線」「バナーの配置」といった言ってみれば、店頭販売テクニック的な物によって、一定の成果を出せます。それが全盛だった時期もありますよね。情報商材などが流行っていた時代…。ただ、AIがサイト全体の情報を収集し、フラットに比較検討する流れが進むにつれて、こうした要素はどんどん効果が無くなっていくでしょう。

これから捨てるべき物 今から強化すべきもの
動きや配置といった「見せ方の小技」で差をつける 商品・サービスそのものの競争力を高める
説得テクニックに寄せた文章や導線だけで売り切る 必要な情報を整理し、比較されても評価される中身を作る
複雑な作り込みで“それらしさ”を演出して有利に見せる 第三者の声なども含め、周辺情報を充実させて信頼で選ばれる

象徴としての「Wix Harmony」と、制作の民主化

今回のテーマを考えるうえで象徴的なのが、Wixの「Wix Harmony」。自然言語で「こういうサイトを、このような雰囲気で」と伝えるとページを生成し、ビジュアルエディターで調整しながら、再びAIに戻して修正を加えていく。そうした使い方を前提としたツールです。Wix Harmony(Wix公式)

現時点で、これによって制作会社が不要になる、という話をしたいわけではありません。実際、似た発想の機能はすでに複数存在しますし、企業が利用する一般的なWebサイトを何でも作れる段階かと言えば、まだ発展途上。

ただし、重要なのは「今は途上であっても、いずれその方向に進む可能性が高い」という点。Webの世界では、多くの技術や仕組みが、最終的に「民主化」、つまり誰でも使える方向へ進んで行く傾向があります。Web制作も例外ではありません。

WordPressやMovable Typeが示してきた「10年単位の変化」

Web制作の民主化は、決して最近始まった話ではありません。私はWordPressをアルファ版に近い頃から触っていて、少なくとも20年以上、この流れを現場で見てきました。WordPress.org(公式)

当時のWordPressやMovable Typeは、「ブログツール」という位置づけが強く、企業サイトを本格的に作るものとは捉えられていませんでした。テンプレートやプラグインも十分ではなく、企業サイトは専門家が設計して作るもの、という感覚が一般的でした。Movable Type(Six Apart公式)

それが今では、WordPressはごく一般的な選択肢となり、以前ならプログラマーに依頼していた機能も、プラグインで手軽に実装できるようになっています。こうした変化は、10年という単位で現実になってきました。その延長線上で考えれば、Wixの現状に関わらず、3年から5年、あるいはそれより短い期間で、「必要十分なサイト」は非専門家でも作れる時代に近づいていくんじゃないでしょうか。もっと早いかも。

Webサイトは主役であり続けるが、相手が変わる

Webサイト制作が民主化され、「誰でも作れる」ようになっても、Webサイトは今後も情報発信の起点であり、顧客との接点の中心であり続けるでしょう。ファーストパーティデータの場所として。現時点で、それに代わる明確な存在が見当たらないからです。

変わる可能性があるのは、やり取りの相手です。これまでのように人と人が直接やり取りする場面に加えて、今後はAIエージェントを介したやり取りが増えるでしょう。情報の置き場所としての主体は、引き続きWebサイトが中心になるが、人間がみる割合は相当減っていくでしょう

制作の民主化が進むと、サイトは「シンプル」と「フォーマット化」に向かう

制作会社ではない事業者が、自分でWebサイトを作れるようになると、サイトの形はどう変わるのか。私は、よりシンプルで、必要な情報が分かりやすく整理された形に近づいていくのが自然だと考えています。

理由は明確で、人はサイトを作るとき、自分が「使いやすい」と感じるものを基準にするからです。テクニックや導線で悩まされてきた経験があるほど、必要な情報がすぐに見つかるシンプルさを求めます。もちろん、あえてテクニックを重視する人もいますが、多くの場合はシンプルな方向に寄っていくはずです。

実際に、シンプルなサイト制作の事例を見ると、デフォルトに近い構成や「テンプレートに少し手を加えた程度」のものが多く見られます。これは予算の問題というより、「それで十分だ」と感じているからでしょう。。

最終的には、食品の成分表や車のスペックシートのように、ある程度フォーマットが決まった様式に収束していくと私は考えています。

そうなると、差が出るのは見せ方ではなく、商品・サービスそのものと、それを支える周辺情報です。逆に、小手先のテクニックだけで勝負してきた領域は、徐々に通用しにくくなっていくでしょう。だってAIにはそんな物関係ないのですから…。

テクニック頼みが苦しくなるのは、すでに始まっている

これは遠い未来の話ではなく、すでに起きている変化の延長線上にあります。ランディングページの工夫などでテクニカルに売上を伸ばしてきた企業が伸び悩んでいる、支援する側も苦労している、という声は私の周りでも聞かれます。

だからこそ、今一度、自社のWebサイトを見直してみてください。テクニックではなく、「中身」で選ばれているかどうか。伝え方や手法が不要になるわけではありませんが、どこに軸足を置くかは、これから変えていく必要があります。

今から力を入れるべきところ

1) 商品・サービスの競争力を、サイトのフィードバックを元に磨いていく

これから最も重要になるのは、商品やサービスの中身です。Webサイトから得られる反応やフィードバックを材料にしながら、競争力を継続的に磨いていくことが求められます。

2) 商品の周辺情報を充実させ、選ばれる根拠を増やす

フォーマット化が進むほど、選ばれる理由は「中身」と「周辺情報」に集約されていきます。第三者の声のような情報は、比較検討の場面で特に判断材料になりやすい要素です。

サイト上で意識して厚くしていきたいのは、次のような情報です。

  • 商品・サービスを補足する情報(誤解されやすい点や選び方の考え方など)
  • 第三者の視点による情報(評価・感想・推薦といった周辺からの見え方)
  • 検討時に出やすい不安や疑問への回答(迷いどころを先回りして解消する)

3) 価値観の転換を早めに行い、お客さんへの解像度を上げる

令和以降、コロナやフェイクニュースなどを背景に、消費者が重視するポイントは大きく変化しています。その変化を感覚的に捉えるだけで終わらせず、具体的にお客さんの解像度を高めていくことが重要です。

この領域は、時間が経つほど巻き返しが難しくなります。1年、2年、3年と積み上げられるかどうかで、結果は確実に変わってきます。

かつての多様性と、これからの収束

以前は、今よりもWebサイトの多様性がありました。2000年代前半、私自身も多くの制作に関わっていましたが、現在とは比べものにならないほど、さまざまなサイトが存在していました。

その多様性を支えていた要因の一つが、制作会社の存在だったと思っています。専門家が個別に最適化し、デザインや構成を調整することで、多様性が保たれてきた側面は確かにありました。

ただ、ビジネスにおけるWebサイトは、最終的には比較検討のための道具です。必要な情報が分かりやすく伝わる形に落ち着いていくのは、ある意味で自然な流れです。制作の民主化が進むほど、その収束はさらに強まっていくと考えています。

まとめ

Webサイト制作は、今後さらに民主化が進みます。その結果、サイトはよりシンプルに収束し、フォーマット化・データベース化が進んでいくでしょう。

だからこそ、見せ方の小手先に頼りすぎず、商品・サービスの競争力と周辺情報を着実に磨き続けることが重要になります。私自身も、お客さんと一緒にこうした取り組みに一定のリソースを割いていますが、商品やサービスが強いことは、企業にとって大きな安心であり、重要なアセットになります。

AIもあくまで手段です。制作会社側にとっては大変な側面もありますが、ツールとして冷静に受け止めつつ、会社を強くするための取り組みにリソースを配分していく。その姿勢が、これからの安定につながると私は見ています。

そうした体制を早めに整えたい、価値の置き方を見直したいと考えている会社さんがありましたら、お気軽にお問い合わせください。枠に限りはありますが、ご一緒できればと思っています。

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よくある質問

AIでWebサイトはすぐに十分なクオリティで作れるようになりますか?
現時点では発展途上で、企業が使う一般的なサイトはまだ難しい面があると私は見ています。ただ方向性としては、3年〜5年などのスパンで「必要十分なサイト」は非専門家でも作れる側に進む可能性が高いと思っています。
これからWebサイトは不要になりますか?
私は不要にはならないと思っています。情報発信や接点の起点として、Webサイトに代わるものが現時点では見当たらないからです。
どんな施策が「効きにくく」なっていきますか?
バナーの置き方や動きなどの小技、説得テクニックに寄せた作り方だけで勝つ発想は、相対的に効きにくくなると考えています。AIが全体の情報を取り、フラットに比較検討する流れが進むほど、その傾向は強まります。
今から強化すべきポイントは何ですか?
商品・サービスの競争力を磨くことが第一です。そのうえで、第三者の声などの周辺情報を厚くし、価値観の転換を早めてお客さんへの解像度を上げていくことが重要だと考えています。
制作の民主化が進むと、Webサイトの形はどう変わりますか?
非専門家が自分で作る流れが強まると、サイトはシンプルで分かりやすい形に寄っていくと思います。最終的には成分表やスペックシートのように、ある程度フォーマット化してデータベース的になっていく、というのが私の見立てです。

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