第203回:成功事例を自社に活かす読み方|途中の判断で立ち止まって考える

ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

「売上が何%増えた」「この取り組みで成功した」。事例の記事には、タイトルから結果が分かるものが多いですよね。つい先を急いで読み、なるほど、この方法がよいのかと受け取ってしまいます。

ただ、自社の仕事へ活かすために読むなら、少し読み方を変えてみてください。結果をいったん脇に置き、その会社の中に自分がいたら、どう考え、何を決めただろうかと想像しながら読む方法をお勧めします。

結論を知っていても、途中の判断に立ち止まる

事例は、課題があり、施策を考え、実行して、結果が出るという流れで書かれていることが多いと思います。記事として読みやすく整っているので、実際の仕事もすらすら進んだように感じられます。

でも、その場にいた人は、最初から成功すると知っていたわけではありません。難しい判断や、うまくいくか分からない選択を重ねていたかもしれません。

次の展開を読む前に、「自分が担当者や経営者だったら、ここでどうするか」を考えてみてください。何が気になるか、どこに危険がありそうか、何を調べてから決めたいか。そうやって立ち止まると、結果だけ読んだときとは違うものが見えてきます。

一気に読むと、気持ちのよい成功の部分ばかりが残りがちです。途中をゆっくり読むことで、必要だった準備や、自社では簡単にできそうにないことにも気づけます。

環境が変わった場面で、自分なら何を選ぶか考える

例えば、カルピスの事例です。家で水に薄めて飲む商品がある一方で、コンビニや自動販売機が増え、外で買ってそのまま飲む習慣が広がっていく。そうした市場の変化の中で、カルピスウォーターが生まれました。

発売30周年!「カルピスウォーター」発売にまつわるお話。

今は結果を知っているので、それなら薄めずに飲める商品を出せばよいと思いやすいですよね。でも、その先を知らないつもりで考えると、選択肢は一つではありません。家で作って飲む時間の良さを、もっと伝えるという考え方もあるかもしれません。

ここで考えたいのは、実際の会社の判断を後から採点することではありません。自社が同じような変化に直面したら、そもそも変化に気づき、対応を話し合えるかということです。

お客さんの選び方が変わっていないか。今の商品とは別のものが、同じ必要を満たし始めていないか。普段からそういうことへ目を向けているでしょうか。事例を読むことを、自分たちの姿勢を確かめる時間にできます。

自社のお客さんに同じことを言われたら、と置き換えてみる

お客さんへ聞いてみたら、会社が思っていた価値と、相手が感じていた価値が違った。そんな場面が出てきたときも、自社ならどうするかを考えてみてください。

例えば、自分たちではいろいろな良さを伝えているつもりなのに、お客さんが来る理由は「近いから」だったとします。それを知ったとき、そのままでもよいのか、別の価値も知ってもらう必要があるのか。自分たちの状況に置き換えると、急に難しく感じるかもしれません。

事例の会社を外から眺めるだけでなく、自社へ同じ問いを向けてみましょう。経営者だけでなく、お客さんと接している方も、その変化や反応に気づけるようになっているか。社内で話すきっかけにもなります。

どの施策が当たったかだけを持ち帰るより、自分たちが見ていなかったことに気づくほうが、その後の仕事に役立つ場合があります。

方法をまねる前に、実行に必要な条件を探す

よい取り組みだと思っても、今の自社で実行できるとは限りません。必要な人材はいるのか、時間を取れるのか、情報を共有する機会はあるのか。外部のパートナーや、普段からの関係が必要だったのかもしれません。

ホームページでも、見た目だけ同じように作れば成果が出るわけではありません。情報を入れる仕組み、お客さんの声を集める仕組み、公開した後に反応を確かめる仕組みがあって、初めて動く場合があります。

その部分を飛ばして、サイトを作るところだけまねると、更新や改善が続かず、そのままになってしまうことがあります。

目に見える施策の後ろで、何がその実行を支えていたのかを読んでください。事例に書かれていることだけでは分からなければ、その条件はまだ確認できていないと考える必要があります。都合よく補って、自社でもすぐできると決めないことが大切です。

今はできないなら、見送るか、できる状態を作るか決める

読み進めて、自社では今できないと分かったとしても、無駄ではありません。そこで選べる道は二つあります。

一つは、自社には合わないので取り入れないことです。目の前の記事に載っているからといって、それをやらなければならないわけではありません。将来も必要なさそうなら、別のことへ時間を使えばよいと思います。

もう一つは、いずれできるようになりたいので、準備をすることです。一年後なのか、二年後なのか。自社の計画の中で時期を考え、そのために人や情報、協力体制などを整えていきます。

「できない」と分かったところから、見送る判断も、準備を始める判断もできます。無理に形だけまねて中途半端になるより、そのほうが自社の仕事につながります。

事例を読み終えたら、自社で考えることを残す

成功事例には、ブランドを知ってもらうため、支援した会社の仕事を伝えるためなど、さまざまな発表の意図があります。読んで参考になることはたくさんありますが、自社への助言として書かれているわけではありません。

だからこそ、何が成功したかだけで終わらず、自分たちなら判断できたか、何が足りないか、取り入れる必要があるかまで考えていただきたいと思います。

読み終わった後に、自社について考えることが一つでも残る読み方をしてみてください。途中の場面で立ち止まることに慣れてくると、結果の華やかさだけに引っ張られず、自分たちに役立つ情報を選びやすくなっていくと思います。

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情報を手に入れても役に立たなかったと感じるときは、Podcast 第531回:情報収集のゴールを行動のきっかけに変えるも参考にしてください。

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