音声セミナーでも配信しています
新商品開発というのは、新しい価値を生み出していくためには重要です。しかし、特にネット上で販促を行う場合には注意が必要です。
それは、お客さんが知らないものや概念については、非常に露出や認知がさせづらいということです。
なぜなら、ウェブの世界はTVやラジオなどの受動的な情報収集ではなく、自分の興味関心に沿った能動的な情報収集がメインとなるからです。能動収集なので、自分の世界の外にある物には手が届かないのです。
新商品を開発したい、独自のサービスを世に出したい、それをウェブ上でうまく販促して軌道に乗せたいというご要望は常にあります。しかし結論から言えば、既存製品を売るより基本的に考えることが多く、難易度は高いと思って頂くことをオススメします。
何が問題かというと「新商品は基本的にネットには向いてない」からです。特に「今までに無かった商品やサービス」は売りづらいんです。なので、しっかり二人三脚で情報共有、足並みを揃えてプロジェクトを進めていきましょう。
なぜ「新商品販促は基本的にネットには向いてない」のか
なぜなら「それが何か、から分かってもらわないといけないから」です。一般的に知られている商品群であれば、そこの説明は不要で既存商品との差別化をすればいいのですが、その前段階があるわけですね。
従来のセールスにおいて「新しい物を分かってもらう」のに一番いいのは「実際に触ってもらう、サービスなら体験してもらう」ことでした。体験会、試食、出張でも…しかしネットだとそれができません。
五感をフルに使えないのもネットの弱点です。現時点では視覚と聴覚しか使えない状態で、目の前にいるという圧も使えないのがネットです。
あたかも、たくさんの人にリーチできるからネットは新製品や新サービスに向いていそうですが、きちんと考えずに行うと閑古鳥が鳴いてしまうのがネットです。
しかしもちろん、不可能では無くやり方次第でもあります。
じゃあどうするか?これが出発点です。
基本的には…売り方よりも「売れる商品を作る」です
身もふたもないことを言えば、ネット上で商品を販売する際には、最初からネットで売りやすい商品を開発することを基本とすることをお勧めします。ただし、これによって発想の幅が狭まる可能性があるため、あくまで「基本的には」というところでまずは頭の隅において下さい。
なぜ「売り方を考える」より「売りやすい物を作る」方が楽か。
それは、販売において非対面の交流が主となるためです。目の前に商品がない状態でセールスしなければいけないからです。これは対面販売に比べると、とても難しいことなんです。
だったら、非対面でも伝わる商品を作る方が「楽」というわけです。
商品をいじれないなら、売り方を研究する
EC、テレビショッピング、ラジオなど、どのメディアでも共通して力を入れているのがこの「目の前に物がないけれども、物を売らなければいけない」という課題の解決です。
テレビやラジオのショッピング番組では、売る商品自体の品質はもちろん重要ですが、それ以上に力を入れているのは、その商品の魅力を伝えるための努力です。様々なテクニックを開発し、工夫を繰り返し、テストを行っています。
テレビやラジオでは「非対面では売れないから、その商品は扱えません!」とは言えないですからね。広告費をもらいたいですから。
ラジオでは音声のみなので、どのような言葉を使うべきか、あるいは、どのように言うべきかをメインに考えています。短時間でインパクトのあるフレーズを何度もCM等で流します。
ではネットではどうしたらいいのか?
例えば通販では、
- どのような写真、動画の撮り方が良いか
- 視覚と聴覚で伝えやすい、とっかかりのメリットはどこか
- どのような情報を伝えると顧客の持っている不審や不安が和らぐか
- どんな言葉を使うと、買い手の頭の中に響きやすいのか、概念と繋がる事ができるのか
- 味や匂いなどを、どうしたら視覚や聴覚だけで伝えることができるか
様々な観点から考えます。テストします。TVの通販番組はテクニックの宝庫です。
ネットの良い所は、安いコストで何度も改善のサイクルを回せることです。マス媒体では1回のコストも高いですので、そう何回もトライアンドエラーができません。ここの差が大きいわけです。
そこのメリットをとにかく使っていきましょう。
アクセス解析だけでは分からないことも多いですから、
- マウストラッキングやヒートマップなどの定性調査ツール
- A/Bテストによるキャッチコピーや画像の比較改善
- 購入後に積極的にアンケートを採って、行動だけでは無く脳内の情報も得る
など、お客さんを理解するためにできる事を徹底的にやっていきます。
これを繰り返していくことがネットの強みを活かした売り方です。ただ、どうやってもよくならないこともあります。また、やっているうちに段々「これはそもそも売れない商品なのかもしれない」と気づくこともあります。
その時は、いったん頭を切り替えて商品やサービスそのものを再考する方が良いこともあります。
失敗してもよいかなと思える価格で、お試し商品を作る
他の方向性として1つあるのは、フロントエンド商品を作る方向です。
伝えづらい物について、採算度外視の安い商品を作って少しでもその効果を感じてもらう方向です。もうけは出なくていい、赤字も販促費と思うくらいがよいです。
同じ考え方で短期間、小型、レンタル…いろいろ商品毎に一般的な「お試し」方法あると思いますのでその方向も有りですね。家電製品のレンタルサービスは需要が伸び続けているようです。
可能であればお金を払って頂いて繋がりを作った方が良いです。サポートもしやすいですし、お金を1度払ったという行動がお客さんの中にあると、その先の購買行動もスムーズに進みやすいからです。
新しい言葉やカテゴリーは難しいが「悩み」や「状況」をフックにすれば道が見える
状況や悩みをフックにして、そこを軸に製品やサービスを作って行くという方向性も有りです。
商品やサービスが未知の物でも、解決したい課題は既知の物が多いからです。
例えば「肩が凝る」「スマホの顔認証のたびにマスクをずらすのが面倒」「お風呂の栓が少し空いたままお湯を張ってしまった」など、メジャーな悩みはたくさんあります。
その悩みの解決方法、困っている状況からの打開策という位置づけで、その悩みキーワードを軸に商品を作っていくと、露出や認知がやりやすいです。
しかし、商品を作った後に「これって、どういう言葉で検索する人に合うかなぁ」と考えるのでは遅いです。そうではなく「ネットで検索されやすい」「良く検索されている悩み」をピックアップして、それにあった商品を作るという発想の方が、近道です。
技術の進化にも期待できるが、まだ先
インターネットの技術は日々進化しています。
将来、バーチャルリアリティの世界で、五感全てを遠隔で感じられるようになれば、新製品ももっと売りやすくなるかもしれませんが、まだまだそこに頼るのは早計。視覚聴覚が基本と考えるべきです。
※ニュースでモニターを舐めると同じ味がするといった技術が話題になりました。モニターを舐めたいかどうかは別として、このようなデバイスが実現可能かどうかは興味深いです。また、ヘッドフォンやイヤホンを通じて風や温度を感じることができるデバイスも開発が進行中。しかし、これらの技術の実用化はまだ遠いでしょう。
視覚的な伝達が難しい商品は、どれだけ良さをアピールしても「見てみないとなぁ」「触らないとなぁ」などで終わります。返品無料をつけるなど身銭を切る対策はありますが、できるだけ避けたい物です。
ネットで伝わりやすい特徴を軸に据えてみよう
また、ネット上で相手に価値が伝わりやすい物とそうではない物があります。
例えばビジュアル的な部分は伝わりやすいですね。画像で済みます。最近では音や動きも伝わりやすくなりました。動画を使うんですね。
しかし、臭いやさわり心地や味は伝えづらいです。なぜなら、ネット上で伝達できないからです(将来できるようになると良いですね)
そういったものはリアル店舗で触ってもらうか、たくさんのお客さまの声をもらうかしないと、売れません。売ることができないわけではありません。例えばさわり心地なんて、衣服だったりタオルやハンカチだったり、布系の物を中心にさまざまな所でネットでの販促が行われています。
ただ、それは「目の前にあって触って無くとも、良い物だと思ってもらえるテクニックや仕組み」があるからです。通販系の会社はとにかくそこが強いんです。一番強いのはジャパネット高田さんでしょうか。
そのノウハウが溜まっていないうちは、分かりやすい視覚・聴覚で魅力が伝わるような商品・サービスを作って行くことをお勧めします。
その中で固定客がついて、談話会や先行ユーザーレビュー会、共同商品開発などが行えるようになってきたら、難しい感覚的商品も可能になってくるでしょう。
商品ができてからどうやってネットで売ろうとかと初めて考えるのではなく、商品開発の段階でマーケティングやセールス込みで考えてみると、成功率が上がります。
ぜひその手順で考えてみて下さい。